パン、唐揚げ、ビール、ポテチ…専門医が証言「40代から"認知症の元凶"ため込む人の食卓に並んでいるもの」 元凶「アミロイドβ」がどんどん増える人・減っていく人

長寿はめでたいが、認知症にはなりたくない。どうすればいいのか。アルツハイマー病などの研究をしている医師の白澤卓二さんは「認知症は高齢者の病気と思っている人がほとんどだが、それは大きな間違い。40代からアミロイドβの沈着も、動脈硬化も特別なことではない。むしろ、現代の日本人の多くがこれらを促す生活を送っている」という――。

※本稿は、白澤卓二『Dr.白澤の実践メソッド 100寿をめざす認知症最新戦略』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。

認知症の大半を占めるアルツハイマー病

原因は「炎症」「栄養不足」「毒物」

認知症の原因はたくさんあります。なかには治療すれば治るものもありますが、大半を占めるのは、加齢とともに進行するアルツハイマー病です。

アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβ(※1)は、現在もまだ生理学的意義や、その蓄積がアルツハイマー病の原因なのか結果なのかなど、詳細は解明されていません。

※1 脳でつくられるタンパクの一種。健康な人の脳にも存在していて、通常は短期間で排出される。異常なアミロイドβができると排出されず脳に蓄積し、それが出す毒素によって神経細胞が死滅する。異常なアミロイドβが集まると老人斑と呼ばれる。

写真=iStock.com/mr.suphachai praserdumrongchai

※写真はイメージです

ブレデセン博士は、アミロイドβは「脳を守るための防御反応」であり悪者ではないと結論づけました。

脳はさまざまな要因でダメージを受けていて、それらから脳を守ろうとしてアミロイドβが発生しています。製薬会社はアミロイドβを除去する(たまらない)薬を開発しようとしていますが、問題はアミロイドβではありません。アミロイドβがたまる要因となる、脳の神経細胞にダメージを与える根本的な要因を防ぐ必要があるのです。

ブレデセン博士は36の要因があるとしていますが、それらは複雑で難しいため、私は大きく「炎症」「栄養不足」「毒物」としました。

ブレデセン博士は、アルツハイマー病を大きく「1型(炎症性)」「2型(萎縮性)」「1.5型(糖毒性・1型と2型の混合)」「3型(毒物性)」の4つに分けています。炎症は大きな要因ですし、萎縮や糖毒には栄養が関係しています。脳にダメージを与える毒物に対しては解毒が有効です。

脳で炎症が起こったり、栄養不足に陥ったり、毒物が蓄積したりすることで、神経細胞がダメージを受け、認知機能がどんどん低下していくのですから、それらをできるだけ避けることができれば、認知機能の低下防止につながると考えられます。「炎症」「栄養不足」「毒物」への対策は特別なものではありません。ふだんの生活習慣、特に食事に気をつけること、生活環境を整えることで予防できるものが多くあります。


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認知症は高齢者の病気と思っている人がほとんどでしょう。

これは大きな間違いで、実際には40代から認知症への道はスタートしています。アミロイドβの沈着も、動脈硬化も特別なことではありません。むしろ、現代の日本人の多くがこれらを促す生活を送っています。

朝食に甘いデニッシュパンを食べ、歯磨きせずに急いで家を出て、通勤ラッシュの電車はストレス満載、日中は車で営業しながらスマホをチェックし、ランチはハンバーガー、気分転換にタバコを吸い、仕事の休憩に甘い缶コーヒーを飲み、帰宅後は唐揚げやポテトチップスをつまみにビールや缶チューハイで晩酌して、スマホを見ながら就寝……。

写真=iStock.com/tella_db

※写真はイメージです

こんな生活を送っているとアミロイドβはどんどんたまっていきますし、動脈硬化も進行してしまいます。しかし、これにまったく当てはまらない人は少ないのではないでしょうか。日本人の認知症患者の増加はなるべくしてなった、そう言ってもいいでしょう。

もうひとつ大きな誤解があります。

現在の日本では、認知症の診断は「要介護であるかどうか」が基準となります。認知機能がかなり低下していても、日常生活に支障がなければ認知症ではなく「軽度認知障害(MCI)」と診断されます。

一般的には、MCI)は認知症とは違うものといわれていますが、実は「認知症の末期」を迎えていると考えたほうがいいのです。自覚症状が出ているときには、脳は甚大なダメージを受けていると考えられます。

さらに、加齢に伴って現れるもの忘れや記憶力の低下も、認知機能の低下を示すサインです。認知症とは違うと安心させるような説明がありますが、そのままの生活を続けていると、脳の機能は一気に衰えて、認知機能もどんどん低下してしまいます。

もの忘れが始まるのは、早ければ40代くらいからです。そこから20年30年かけて脳にダメージが蓄積していき、やがて、周囲の助けを借りないと生活できないくらい認知機能が落ち、さらには寝たきりになってしまいます。

そうならないためには、できるだけ早く、40代、50代から脳や血管を若々しく保つための生活を始めることが大切です。

もし、すでに認知機能の低下を感じ始めていたとしても、遅過ぎることはありません。食事や運動、睡眠を見直して実践すれば、認知機能の低下を防ぐことができますし、落ちてしまった認知機能がよくなるケースもあるのです。私は、本書(『Dr.白澤の実践メソッド 100寿をめざす認知症最新戦略』)で紹介していることを、館林の介護付き有料老人ホームで実践し、その効果を実感しています。

若くして発症する若年性認知症については、遺伝が関係しているため、日常生活の改善だけでは難しい側面もあります。ただ、サイトカインによる神経再生治療という選択肢があります。

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