『ガンダム』遅れてきた新型機「ゲルググ」の不幸 ベテランが避けた理由はあの装備?

『機動戦士ガンダム』の最終決戦で、ベテランのパイロットは新型機「ゲルググ」を避けたといいます。もらえる新型機を避けて、わざわざ旧型機を使い続けた理由はどこにあるのでしょうか?

投入が1か月早ければ戦局は変わったとされる名機。「ROBOT魂 〈SIDE MS〉MS-14A 量産型ゲルググ ver. A.N.I.M.E. ~ファーストタッチ3500~」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 TVアニメ『機動戦士ガンダム』の最終決戦、宇宙要塞「ア・バオア・クー」をめぐる戦いにおいて、ジオン公国軍のベテランパイロットは新型モビルスーツ(MS)「ゲルググ」を避け、使い慣れた「ザクII」を選んだという話が聞かれます。

 ゲルググは、連邦軍の強敵である「ガンダム」と同格の性能を持つとされる機体であり、ザクIIよりも生き残れる確率は高そうです。なぜ、ベテランはゲルググを避けたのでしょう?

 ゲルググはビーム兵器を装備しており、ベテランにしてみれば新兵器であるため、慣れないモノは使いたくないと見られた可能性など、理由は大小さまざまに考えられます。

 無論、「慣熟」の問題もあるでしょう。その観点から考えると、避けられた大きな理由のひとつとして、ジオンの量産機には珍しい「手持ちの盾」を装備している点が挙げられるかもしれません。

 改めてジオン公国軍のMSをよく見てみると、量産機で手持ちの盾を装備するのは、地上用の「グフ」くらいです。ザクIIの盾は右肩に取り付けられていますし、「ドム」には盾そのものがありません。

 盾がゲルググを避ける理由となる根拠としては、「AMBAC(アンバック)」への影響が挙げられます。

 AMBACとは、MSが宇宙において、四肢を振るなどして発生する反作用を利用し姿勢制御を行う技術のことです。スラスターなどと組み合わせ、高い機動力を得ることも可能といわれ、また推進剤(燃料)を使わずに姿勢制御が行えるメリットもあります。

 AMBACには、機体の重量バランスが重要になることは想像に難くありません。

 例えば、我々が右手に何も持たず、左手にカバンを持った状態で腕を振り回したとしたら、かかる力は左右で大きく変わります。人間でさえこれなのですから、全高19.2mのゲルググが、10mを超えそうな巨大な金属塊である盾を振り回せば、バランスには多大な影響が出るでしょう。AMBACにかかる力について「末端部分では100Gを超える」とする資料も存在しています。両手に同じ盾を持っているならともかく、ゲルググの盾は片手持ちなのです。

 連邦軍は最初からガンダムやジムといった盾持ちの機体で戦っており、途中から盾を取り入れたジオンとは事情が違います。おそらくジオンのパイロットのあいだでは、両手がフリーであることを前提としたAMBACのテクニックや、現場で改良された姿勢制御ソフトなども出回っていたことでしょう。これに慣れたベテランたちは、そうであるがゆえに乗り換えたがらなかったのではないでしょうか。

「シャア・アズナブル」や「ジョニー・ライデン」といったエースたちはゲルググに乗り換えていますが、これは専用機として細かく調整してくれるサポートがあってのことでしょう。専用機をもらえないベテランたちはそうもいかないのです。

 ゲルググといえば『機動戦士ガンダム』第40話など、盾を背中に固定した姿も印象的で、これなどもAMBACへの影響を最小限にしようとした工夫であるのかも知れません。

(箭本進一)


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