16後継機、タイフーンとラファールが売り込みを開始

ポルトガルはトランプ政権への不信感でF-16後継機にほぼ確定していたF-35A導入を白紙化し、この需要をF-35A、タイフーン、ラファールが争い始めているが、ここで重要なのは「F-35A、タイフーン、ラファールのどれが一番強い戦闘機なのか」ではなく「どこまで米国依存を引き下げるか」という政治的な課題だ。

参考:ENTREVISTA: Substituição dos caças F-16 decidida este ano na nova Lei de Programação Militar – CEMGFA 参考:Chefe das Forças Armadas diz que processo de investimentos na Defesa “está clarinho” 参考:Eurofighter Typhoon são a “solução ideal” para as missões da Força Aérea, diz diretor do consórcio 参考:Dassault Aviation signs a Cooperation Agreement with AED Cluster Portugal

トランプ政権は他国の主権を軽視するような発言や態度を連発し「米国は信頼できるパートナーなのか」という疑問が生じた結果、安全保障分野の後ろ盾を象徴する米国製システム=F-35への不信感が急速に広まり、ポルトガルでもF-16の後継機として確実視されていたF-35A導入が白紙化され、ヌーノ・メロ国防相は2025年3月「世界は変わってしまった」「我々の同盟国はあらゆるシナリオ下で戦闘機を運用するための要素(メンテナンス、スペアパーツ、アップグレードなど)に制限を課す可能性がある」と指摘した。

出典:Portuguese Air Force

メロ国防相はメディアの質問(例えばフランスの戦闘機で代替することは可能か)に「ここでそれを議論するつもりはない」と回答したが、欧州生産という観点から「検討すべき選択肢が幾つかある」とも付け加えており、Politicoも「ポルトガル空軍はF-35Aの導入を奨励しているものの、メロ国防相はトランプ政権の不確実性を考慮しなければならないと主張してF-35A導入を否定した」と報じ、ダッソーのトラピエ最高経営責任者も「ポルトガルにラファールを提供したい」と言及、サーブのヨハンソン最高経営責任者も「グリペン導入の可能性についてポルトガルと連絡をとっている」と認めている。

まだポルトガルのF-16後継機選定プロセスは正式に始まっていないのだが、ジョン・アリゴ駐ポルトガル米国大使はCNNポルトガルの取材に「ポルトガルは老朽化したF-16をF-35で置き換えるべきだと考えている」「ポルトガルにとってF-35は他の欧州諸国との間で相互運用性を確実に確保する唯一の道だ」「しかもF-35の25%は欧州製の部品で構成されている」「ポルトガルの国防支出を2035年までに総額5.0%(現在は約2.0%)へ引き上げることを支援したい」と言及。

出典:U.S. Air Force photo by William R. Lewis

CNNポルトガルは「アリゴ大使はポルトガルが国防支出を総額5.0%まで引き上げるのにF-35購入が有効な手段だと考えている」と、ロイターも「米国大使がポルトガルにF-35購入と相互運用性の確保を促した」と報じており、これはポルトガルに対するトランプ政権のF-35導入圧力と解釈するのが妥当だろう。

ロッキード・マーティンもポルトガル国営通信社=ルサ通信の記者をテキサス州フォートワースにあるF-35最終組み立てラインに招待して「(F-35計画への出資国でもない)ポルトガルにサプライチェーンへの参加と整備権限を与えることも可能だ」とアピールし、さらに米国製システムであることが欧州市場で不利に働くことについても「欧州域内でF-35を構成する25%の部品が製造されているため欧州のソリューションだ」「F-35は欧州防衛の戦略的自主性を支えるものだ」と反論したものの、コア部品の製造が欠けた25%程度の生産率で「欧州のソリューションだ」と主張すること自体が欧州でのF-35販売不振を際立たせている。

出典:Lockheed Martin

フォートワースに招待されたルサ通信の記者は当時「F-16の後継機選定プロセスは始まっていない」「この需要を巡る戦いにはF-35A、グリペン、タイフーンが参加している」「トランプ大統領がNATO脱退を繰り返し示唆しているためEU域内での軍事生産が強く求められている」「アントニオ・ジョゼ・セグーロ大統領も米国との同盟関係を維持しつつ、欧州防衛の戦略的自主性を確保すべきだと述べて米国への従属論理を否定した」と指摘していたが、遂にF-16後継機選定プロセスが動き出してポルトガル空軍の周囲が騒がしくなってきた。

ポルトガル軍のカルタショ・アウベス参謀総長はルサ通信の取材に「F-16後継機計画は最終準備段階にある」「この計画が盛り込まれた軍事計画法がまもなく議会へ提出される」と明かし、CNNポルトガルも9月24日「エアバス主導のタイフーン・コンソーシアムがポルトガルにタイフーンを売り込む予定だ」「F-35はステルス性を備えた戦闘爆撃機でロシアや中国と戦うために設計された航空機だが、その能力はポルトガル空軍にとって不可欠な能力ではない」「敵のレーダーから隠れるのではなく存在感を示す戦闘機が必要だ」「タイフーンは攻撃的ではなく防御的な役割を担っているためポルトガルにとって理想的な解決策だ」と報じている。

出典:U.S. Air Force photo Senior Airman Shelimar Rivera Rosado

CNNポルトガルが報じたタイフーン・コンソーシアムの主張はマーケティング上の後づけなので大した意味を持たないが、同じタイミングでフランスのダッソーも「ポルトガルの航空宇宙防衛産業協会=AEDクラスター・ポルトガルとF-16後継機計画に関連して協力の可能性を検討する覚書を締結した」「これは2026年7月にポルトガルへラファールが正式に提案されたことを受けてものだ」と発表しており、ポルトガル空軍のF-16後継機選定にタイフーンとラファールが名乗りを挙げた格好だ。

この戦いの本当の争点は「F-35A、タイフーン、ラファールのどれが一番強い戦闘機なのか」ではなく「安全保障分野の後ろ盾を象徴する米国製戦闘機を調達するのかどうか」「ポルトガルを含む欧州地域における米国依存を見直してどこまで引き下げるのか」という政治的課題で、欧州はトランプ政権の次にどんな政権が誕生しても以前のような関係には戻らない可能性が高い。

関連記事:欧州で行き詰まるF-35販売、ポルトガルに部品製造と整備権限を与えると提案 関連記事:スペイン、トルコ製第5世代戦闘機に関して予備的な政府間交渉を開始 関連記事:ロッキード・マーティンが期待していたF-35追加調達、ドイツ国防省が否定 関連記事:欧州で行き詰まるF-35販売、米国がポルトガルのF-35導入に圧力 関連記事:ベルギーのF-35A追加調達、可能な限り欧州で製造して経済的利益を確保 関連記事:スペインがF-35導入を凍結、AV-8Bを運用する海軍は通常型空母に移行か 関連記事:ポルトガルが第6世代機開発にオブザーバー参加を検討、国内の反応は冷ややか 関連記事:空白が生じた戦闘機需要、Saabもカナダやポルトガルへの接触を開始 関連記事:F-35からラファールへ、ダッソーがカナダやポルトガルへの戦闘機提供に言及 関連記事:デンマークがF-35A導入を後悔、米国製システムは安全保障上のリスクでしかない 関連記事:ポルトガル国防相、トランプ政権の不確実性を理由にF-35A導入を否定 関連記事:イタリアのF-35調達数は90機から115機に拡大、新型タイフーンも取得

※アイキャッチ画像の出典:Armée de l’Air et de l’Espace

関連記事: