《壮大で無謀な道路計画》540億円を投じて79kmを建設、それでも着工20年で計画は破綻…取り残された「未成道」の規模がすごすぎた(文春オンライン)

 日本最後の秘境ともいわれる標高2000m級の日高山脈は、北海道の中央南部を150kmに渡って東西に分断している。戦後の北海道の開発にとって沿岸部と内陸部を結ぶ道路整備は重要だった。まずは日高山脈を迂回する形で北側には標高1000mを通る日勝峠、南側は海岸線にトンネルとシェッドをふんだんに使った黄金道路の建設が進められた。  そして中央にあたる静内と中札内にも日高山脈の真ん中を通って結ぶ100kmの道路が計画された。それが日高横断道路こと、北海道道111号静内中札内線だ。  山間部は政府直轄の北海道開発局、市街地側は北海道が建設を分担した。しかし建設費よりも補修費用が上回るほど工事は難航した。着工から20年と540億円を投じて79kmを建設したが、再試算すると完成までさらに40年と約1000億円が必要となった。  積雪による通行止めは年間200日、急カーブが多く時速20km程度で急斜面も多く、現在の道路の基準を満たすには大掛かりな改修が必要になる。しかも起点の静内から終点の中札内に至るまで集落が存在しない。

 自然環境保護の問題や、同時期に着工した天馬街道(現国道236号)が南側に開通したこともあり、建設中止となった。そして北海道が担当した区間は未改良のまま通行困難箇所が多く残り、開発局が担当した山間部には高規格道路や大型の橋梁が取り残された。  一般的な未成道は、山奥ほど工事の進捗が遅く遺構が少ないのに対して、日高横断道路は逆である。現在は供用区間も通年通行止めとなっており、迂回するいくつかの林道も大崩落を起こしている。静内側の中間地点の高見には戦後開拓の集落があったが、ダム計画を待たずに離村。中札内側は「福大ワンゲル事件」などヒグマの生息地で足を運ぶ者は多くない。  このような日高横断道路が計画された時代は、戦後の高度成長とモータリゼーションの急成長、全国的な観光開発の勢いの最高潮ともいえる。これほど壮大で無謀な道路が計画される時代は再び来るのだろうか。  現在は日勝峠の北側に道東道が開通し、南側では天馬街道の両端を結ぶ帯広広尾自動車道と日高自動車道の建設が進められ、黄金道路も長大トンネル化による改良が進んでいる。それでもなお大自然に立ち向かう土木構造物の力強さと、土木技術を以てしても足元にも及ばない日高山脈の山々の気高さは道路マニアを惹きつけて止まない。

松村 真人/Webオリジナル(外部転載)

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