【日下部保雄の悠悠閑閑】ミシュランのオールシーズンタイヤ

須藤元(はじめ)日本ミシュランタイヤ社長とミシュランマン。クロスクライメート3シリーズの発表会

 ミシュランから2種類のオールシーズンタイヤが発表された。従来のクロスクライメート2の進化版であるクロスクライメート3、そして季節を問わずに走れるスポーツタイヤ、クロスクライメート3 スポーツである。

 温暖化の影響もあり、欧州ではオールシーズンタイヤがポピュラーになりつつあり、冬でも2~3割はオールシーズンタイヤを履くと言われる。

 ミシュランでは、この2種類のオールシーズンタイヤは凍結路以外の圧雪やシャーベットでの性能を向上させたとしており、欧州のニーズに合致している。日本では山岳路が近く、日本特有の降雪事情や凍結状況もあってスタッドレスの必要性は変わらないが、地域によっては注目度は高くなるだろう。

 ユーザー層は年間を通して雪が全く降らない都市や年に数回程度しか雪が降らない関東エリアなどを中心とした大都市圏を想定している。

 クロスクライメートシリーズは2015年に欧州で登場したのが最初。日本でも2019年に発売され、2021年にはクロスクライメート2とクロスクライメート2 SUVに切り替わった。初登場のクロスクライメート3 SPORTは新製品で、クロスクライメート3がクロスクライメート2のコンパウンドを継続しているのに対し、クロスクライメート3 SPORTは別コンパウンドが開発された。

 最近のユーザーニーズはタイヤに求められる性能の中でも快適性が積雪走行性能を上まわったとされており、低転がり抵抗性能も上位に来るなど要求項目の変化がうかがえる。

 製品コンセプトは「雪も走れる夏タイヤ」だ。クロスクライメート3では転がり抵抗AAを、クロスクライメート3 SPORTではAを獲得している。このほか静粛性、高い摩耗性なども夏タイヤ並みとしてスタッドレスの苦手なウェット制動もaとなっている。

 サイズは16インチ~20インチ、扁平率60%~35%まであり、スピードレンジはHからVまでサイズによって振り分けられている。

クロスクライメート3。トレッドは均一な接地圧分布が取れるマックスタッチ・コンストラクションを採用した

 クロスクライメート3 SPORTは高速安定性やハンドリング性能といったスポーツ性能を重視するユーザーが冬の道も安心して走れるコンセプトで開発された。こちらは「雪も走れるスポーツタイヤ」。凍結路は守備範囲外だが、雪性能を確保しながらウェットやオンロードでもスポーティなハンドリングが得られるという。

 技術的にパイロットスポーツの技術を応用し、幅広の225~255のサイズ、スピードレンジはYで扁平率は55%~35%と、高性能車をターゲットとしているのが分かる。

 コンパウンド技術は高性能車に合わせた耐久性やドライでの性能向上が主で、アイス性能はパターンやプロファイルでカバーしているようだ。

鋭いV字シェイプがクロスクライメート3 SPORT。センターに入ったストレートグルーブも特徴。V字シェイプはノイズが出そうだが、最新テクノロジーで夏タイヤレベルまで落とすことに成功したという。ブロック配置の妙か

 ミシュランはプレミアムブランドらしくサイドウォールの文字部分も黒いベルベットのようなデザインでくっきりとブランド名が浮き上がる。こういった細やかな配慮が嬉しい。

 オールシーズンタイヤで使われるV字パターンはさらに鋭角的になっており、デザインはかなり先鋭的になっている。

ある日の夕焼け。目黒線を渡る陸橋からは富士山が小さく見える。酷暑だった今年も9月になり夕方になると少し気温が下がる。この日は夕焼けが美しくしばし見とれてしまった

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