【日本市況】債券が急落、20年債入札不調-円もみ合い、日米協議警戒
20日の日本市場では超長期債が大幅下落。20年国債入札の低調な結果を受けて売りが強まり、30年国債と40年国債の利回りは過去最高を更新した。円相場は日米財務相協議に対する警戒感から1ドル=144円台前半に上昇。
財務省が20日に実施した20年債入札の結果によると、投資家需要の強弱を反映する応札倍率が2.5倍と2012年以来の低水準となった。最低落札価格は98円15銭と予想(99円80銭)を大きく下回り、大きいと不調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は1円14銭と1987年以来の水準に拡大した。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、20年国債入札について「想定した以上に悲観的な結果だった」と述べた。30年債と40年債は流動性の低さから売りたい時に売れない可能性があり、投資家が買えない状況だと指摘。超長期債の中でも比較的安定していた20年債に地合いの悪さが波及したと言う。
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日本市場の債券・為替・株式相場の動き- 長期国債先物6月物の終値は前日比10銭安の139円15銭
- 新発10年債利回りは3.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い1.515%
- 円相場は対ドルで前日のニューヨーク終値比0.4%高の144円35銭-午後4時9分時点
- 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比0.02%高の2738.83
- 日経平均株価は0.1%高の3万7529円49銭
債券
債券相場は超長期債利回りが前日から10bp以上上昇した。20年債入札の低調な結果を受けて28日の40年国債入札に対する警戒感が強まり、新発40年国債利回りは3.6%、30年国債利回りも3.14%とそれぞれ過去最高水準を更新した。
りそなアセットマネジメントの藤原貴志チーフファンドマネジャーは20年債入札について、日本銀行の国債買い入れオペで超長期ゾーンが統合される可能性が意識されており、そうなると「20年債よりも40年債の需給にプラスに働くとの見方から、生保などが様子見姿勢を強めたのではないか」と述べた。
20年債利回りは2.555%と2000年以来の水準に上昇。新発10年債利回りは一時1.525%と3月下旬以来の高水準を付けた。
みずほ証券の大森翔央輝チーフ・デスク・ストラテジストは、20年債入札が弱い結果となり、10年債や30年債への金利上昇圧力もかかるとし、「こうなってくると超長期債の需給懸念はさらに高まるだけ。国内投資家が買ってくれないというマインドは海外勢に伝染し、海外勢も超長期金利の上昇を止める主体にはなり得ない」とみる。
日銀は20日に銀行と証券会社、21日に機関投資家などの実務担当者との債券市場参加者会合を開催。6月の金融政策決定会合で行う国債買い入れ減額計画の中間評価に向け、市場の動向や機能度を含めて点検し、計画修正の是非や来年4月以降の方針を議論する。
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.725% 1.005% 1.515% 2.540% 3.120% 3.595% 前日比 +1.0bp +1.0bp +3.5bp +13.5bp +15.0bp +14.5bp為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=144円台前半に上昇。加藤勝信財務相が今週カナダで開かれる主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の場でベッセント米財務長官との2国間協議を調整していると改めて述べ、ドル売り・円買いが優勢となっている。
東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは、日米協議を前に為替相場はボラティリティーが上がっており、円高への警戒感からドルの上値は重いと語る。ドル・円相場のインプライド・ボラティリティー1カ月物は11%台と再び上昇基調にある。
柴田氏は、ムーディーズによる米国の格下げはある程度予想されていたとはいえ、外貨準備におけるドルの比率低下などドル離れがテーマになる中で「基軸通貨としてのドルの地位にボディーブローのように効いてくる可能性もある」と言う。
株式
東京株式相場は小幅反発。国債入札の不調で超長期を中心に金利の上昇基調が強まり、銀行株が上昇。米国の格下げを受けた昨日の米金融市場が落ち着きを取り戻したことも後押しし、リスク選好の流れから電機や自動車など輸出株、非鉄金属株も高い。
半面、電気・ガスや陸運、食料品株などディフェンシブセクター、小売株などは軟調。主要株価指数は午前の取引で上昇基調を強め、日経平均は一時400円以上上げる場面があったものの、為替の円高警戒や日米財務相協議の行方を見守りたいとの姿勢もあり、午後終盤は一時マイナスに転じるなど失速した。
みずほ証券エクイティ調査部の三浦豊シニアテクニカルアナリストは、「米株は結局ほぼ変わらなかったので、昨日下げた分は上がり、株価が押し戻されている」と述べた。半面、日米の財務相会談で為替が協議されるとの見方から円高になりやすいため、「慎重な動きが出てきている」とも指摘した。
個別では、トヨタ自動車などの買収提案を受け入れる方針と報道された豊田自動織機株が一時前日比9%高の1万8000円と最高値を更新。相場全体を下支える材料の一つとなった。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。