【日本市況】円反落、米国の対EU関税延期でリスク回避一服-株上昇
26日の日本市場では株式が上昇。トランプ米大統領による対欧州連合(EU)の関税発動期限の延長を受けて、貿易戦争激化への懸念が和らいだ。トランプ氏が日本製鉄とUSスチールの提携を発表したことも市場心理の改善を後押ししている。
円相場はリスク選好の売りが先行した後、全般的なドル売りにより一時4月末以来となる1ドル=142円台前半に上昇。その後は再び弱含みとなっている。債券は上昇(利回りは低下)。
トランプ氏は25日、欧州委員会のフォンデアライエン委員長との電話会談を受け、EUに対する50%の関税発動期限を7月9日まで延長すると表明した。7月9日は上乗せ関税の90日間猶予の終了日となる。
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インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、他の国に対する上乗せ関税も延期になるかもしれないという希望が出てきたと指摘。トランプ氏の日本製鉄を巡る発言を受けて「日米交渉にある程度期待しているところもある」と述べた。
26日は米国がメモリアルデー、英国がバンクホリデーのため休場となる。対EUの関税延期を受けて、アジア時間の米株価指数先物は上昇。ユーロ・ストックス50指数先物は1%を超える値上がりとなっている。
国内株式・為替・債券相場の動き-午後2時3分時点- 東証株価指数(TOPIX)の前営業日比0.5%高の2748.48
- 日経平均株価は0.8%高の3万7474円01銭
- 円は対ドルでニューヨーク終値比0.1%安の142円64銭
- 143円08銭まで下落後、一時142円23銭と4月30日以来の高値に上昇
- 長期国債先物6月物は前営業日比29銭高の139円03銭
- 新発10年債利回りは3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の1.515%
- 新発30年債利回りは5bp低い3.015%
株式
東京株式相場は上昇。トランプ大統領による対EU関税発動期限の延長や日本製鉄とUSスチールの提携発表が好感され、買いが優勢だ。
電機や機械といった輸出関連、情報・通信や陸運などの内需関連株が上昇。日本製鉄は一時7%以上値上がりする場面があった。
大和証券の坪井裕豪チーフストラテジストは、トランプ氏の日本製鉄に関する発言は「予想外」とした上で、市場は同社の「将来の成長像を評価していると考えられる」と述べた。
一方、TDK株が一時2.1%下落。トランプ大統領が23日に全ての携帯電話メーカーに対し、米国内で製造されていない製品に25%の関税を賦課すると警告したことが嫌気され、米アップルのサプライヤーである太陽誘電も軟調。
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=142円台半ばで推移。リスク選好の円売りと、全般的なドル売りが交錯する展開となっている。
ドルは円以外の主要通貨に対して下落。ブルームバーグ・ドルスポット指数は一時0.4%下げて2023年12月以来の低水準を更新した。
ドル売りについて、ANZバンキング・グループのアナリスト、フェリックス・ライアン氏は、オーストラリア・ドルなどの上昇が目立っており、対EU関税延期のニュースを受けて「市場のムードが回復しているようだ」と話す。米国と英国が休場であることを踏まえると、「短期的にドルへの圧力が続く可能性が高い」とみる。
一方、あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、ドル売りの底流には「米国の政治経済の不確実性を受けた信認低下」があると分析。円に関しては「日米関税交渉において円安是正の思惑が引き続き残っている」とも言い、トレンドは緩やかなドル安・円高方向にあると述べた。
SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長も「トランプ大統領はEUへの50%関税を突然表明して、それをまた突然取り消しただけ」だとし、「米国に対する信認は下がる一方で、米国の株式、債券、通貨のトリプル安に対する懸念は根強い」と話す。
債券
債券相場は上昇。前週末に米長期金利が低下したことを受けた買いに加え、超長期債が前週末に大きく買われた流れが続いている。
アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎シニア債券ストラテジストは、需給悪化により売られてきた超長期債が前週末に買われ、債券市場全体に落ち着きが出ていると語る。東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、流動性供給入札の結果も良かったようだと述べた。
今週の最大の注目は28日に行われる40年利付国債の入札。発行額が7000億円から5000億円に減額されてから初めての入札となる。20日に行われた20年債入札は記録的な不調となった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは「リスク許容度の低下により、強めの札を入れる投資家は少なそうで、やや厳しい」と語る。一方、東海東京証の佐野氏は、利回りの上昇や発行額の減額に加え、投資家に有利なダッチ方式で行われるため、「結構、良い入札になるのではないか」と予想している。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。