「じいちゃん、お金ちょうだい!」〈年金月18万円・貯蓄2,800万円〉69歳男性、孫のおねだりに「もう、お金はあげない」と決めた日|資産形成ゴールドオンライン

離婚した娘と孫を支えようと、温かい手を差し伸べる親世代。十分な蓄えがあっても、善意の支援が思わぬ落とし穴となり、家族の関係をいびつにしてしまうことがあります。ある家族の事例から、家族の自立を促し、お互いにとって心地よい距離感やルールをどう保つべきか、考えていきます。

※写真はイメージです/PIXTA

結婚30年を数える妻・尚子さん(65歳・仮名)と、2人暮らしをしていた佐藤和雄さん(69歳・仮名)。2年前から長女・美咲さん(40歳・仮名)と、小学生の孫2人と暮らしています。

美咲さんは離婚後、正社員として働きながら子育て。養育費は毎月受け取っているものの、家賃や教育費を考えると生活は楽とはいえませんでした。

「(実家に)戻れたら助かるんだけど……」

そう相談を受けたとき、和雄さんは迷いませんでした。

「困ったときはお互いさまだから」

尚子さんも同じ考えでした。収入は和雄さんの年金が月18万円、尚子さんが月10万円。手取りにすると夫婦で月24万円ほど。それに対して、生活費は月15万〜20万円ほどで、余った分を貯蓄に回せる余裕がありました。さらに預貯金も2,800万円ほどあり、家計に不安はありませんでした。

美咲さんは「生活を立て直すまでだから」と言い、当初、生活費として毎月5万円を入れてくれました。食費や光熱費は佐藤さん夫婦が払うものの、教育費などは美咲さんが払います。そのようななか、子どもの進学準備や物価上昇で美咲さんの家計は苦しくなります。「今月だけ待ってもらえる?」そんなお願いが何度か続き、自然と生活費を受け取らない月が増えていきました。和雄さんも、「仕事が軌道に乗れば落ち着くだろう」と深く考えませんでした。

同居生活も落ち着いていくと、佐藤さん夫婦は自然と美咲さんのお手伝いをするようになります。

学童の迎え。

病院への付き添い。

休日の公園では全力で鬼ごっこ。

退職してから減っていた予定が、一気に増えました。

「お父さんがいて助かる」

美咲さんにそう言われるたび、悪い気はしません。孫もよく懐いていました。スーパーでは「じいちゃん、このアイス食べたい」、書店では「この本、買っていい?」――親の離婚、孫は孫なりに思うところがあったでしょう。きちんと大人に甘えられるようになったことはよいことだと思っていました。

「ありがとう」と笑顔を見るたび、財布を開いていました。美咲さんは「本当に助かる。今月は余裕がなくて……」と申し訳なさそうに頭を下げますが、和雄さんは、「気にするな。孫のためだから」と答えていました。

厚生労働省『令和4年度 離婚に関する統計の概況』によると、令和2年の離婚総数19万3,253組のうち、親権を行う子がいる離婚は11万1,335組でした。そのうち、妻がすべての子どもの親権を行う離婚は9万4,291組と、子がいる離婚全体の約84.7%にのぼり、過半数の離婚で母親が親権を獲得しています。このように、母親が親権を持って一人で育児と仕事を担い、実家への身寄せなどを経て自立を模索する姿は、現代の離婚世帯における一般的な姿といえます。

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