やまゆり園事件10年:虐待する横を職員が素通り…障害者施設の「日常」とその改革
毎日新聞 2026/7/27 07:30(最終更新 7/27 07:30) 有料記事 1770文字
中井やまゆり園に6年半入所する直樹さん(仮名、左)は母親に近づき、離れない=神奈川県中井町で2026年7月10日午前10時ごろ、國枝すみれ撮影
神奈川県立の知的障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市)で利用者ら45人が殺傷された事件から10年。この間も県立施設では虐待が相次ぎ、入所施設が抱える問題の根深さが露呈し続けてきた。
県は4月、直営の「中井やまゆり園」(中井町)を地方独立行政法人による運営に変え、当事者目線を徹底する支援に乗り出した。
改革は実現できるのか。「虐待された」「恨んでいる」と話す利用者の親は今、何を思うのか。
2020年5月のこと。同県南足柄市の女性(62)のもとに、中井やまゆり園から電話があった。
半年前から園に預ける長男・直樹さん(34)=仮名=に対する不適切な行為があったという。
園から見せられた防犯カメラの映像には、職員に馬乗りで床に押さえつけられる直樹さんの姿があった。
「これは誰が見ても虐待だ」
ベテラン職員が実行する傍らを、他の職員が目に留めずに通り過ぎていた。驚きもしない様子に、強い違和感を覚えた。
「つまり、そういう行為は日常茶飯事だってことでしょ?」
20年7月には、飲料に塩を混入されたこともあった。
直樹さんの知的障害は最重度で、言葉を話せず、虐待があっても被害を語ることができない。母親は職員を信頼するしかなかったが、裏切られたと感じた。
母親は憤る。「中井やまゆり園の常識は、社会の非常識だ」
実際、園では翌21年以降、次々と虐待が明るみに出た。
肛門にナットをいれられる▽白内障を放置され視力を失う▽食事を食べない利用者が低栄養状態で放置される――。居室の外から鍵をかけて20時間以上閉じ込め続けたケースもあった。
改革で週1回の施錠はゼロに
「殺傷事件が起きたのは津久井やまゆり園だが、(県が問題視する)本丸は中井やまゆり園だった」。そう話すのは、…