「100均のらくがきちょう」がアイデアを生む。ベストセラー作家・岩田リョウコの仕事術

敏腕クリエイターやビジネスパーソンに仕事術を学ぶ「HOW I WORK」シリーズ。

今回お話を伺ったのは、文筆家の岩田リョウコさんです。2012年に立ち上げたコーヒーサイト「I LOVE COFFEE」が、月間150万ページビューのビッグサイトに成長。

2015年には『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』としてアメリカで書籍化され、米Amazonでベストセラーになりました。

帰国後はコーヒーだけでなく、サウナ、クラフトビール、英語と、異なるテーマを独自のイラストとともにアウトプットし続けています。創作の原動力や仕事のこだわりについてお話を伺いました。

岩田リョウコさんの一問一答

居住地: 東京都

職場: 自宅

現在のコンピュータ:MacBook Air 13インチ

現在のノート:らくがきちょう

仕事に欠かせない相棒は?: カップウォーマー(コーヒーは1年中HOT。使い始めたのは2009年から)

読者の興味のドアを開けるために、自分がハマったテーマで書く

ーー本が生まれるきっかけは、いつもどこからはじまるのですか?

実は本を書くために何か題材を探しているわけではありません。これまでに書いてきたコーヒーやサウナ、クラフトビールといったテーマはまず最初に私が興味を持ってハマってきたジャンルなんです。

突然やってくる恋みたいなものですね。

実は、子どもの頃に麦茶と間違えてコーヒーを飲んでしまい苦手意識があって、30歳になるまでコーヒーを飲めませんでした。

サウナもたまたまアメリカから一時帰国した時に入ったことがきっかけで興味が出てきて、そのまま日本に住んでしまうくらいハマってしまったんです。

読者の皆さんにも、私が遅れて目覚めたおいしさや楽しさを少しでも早く知ってもらい、「毎日が少しでも軽やかに明るくなってほしい」との思いで書いていますね。

ーーハマったテーマを実際に本へ落とし込む際には、どんなことを意識していますか?

何も知らなかった人の興味のドアを開けるために、講座を開いているイメージで本を作っています。

気になって手に取ってくれた人が「もっと調べたい」「もっと知りたい」と思えるように、簡単な内容からだんだん難しくなるように構成を考えています。英語の文法の参考書みたいですね。

というのも、私自身が、順序立てて教えてもらわないとうまく飲み込めないんです。英語学習についても、「I am〜のamって何?」と中3くらいまでずっと引っかかっていて。でも、順序立てて向き合えばすっきり理解できたんです。

アメリカで教育の分野に進もうと思ったのも、興味がないのに「こうだよ」と教えられて授業に置いていかれるのではなく、「順序立ててわかってほしい」と思ったからです。

その経験が本作りに生かされている気がしますね。

ベストセラー作家が愛用するのは「100均のらくがきちょう」

ーー岩田さんの本はイラストが印象的ですが、文章とイラストの構成はどのように考えているのでしょうか?

言いたいことが先にあって、わかりやすく伝えるためにイラストを描いているイメージです。ページのレイアウトも最初は全て自分で考えていますね。

まずは漫画家さんのように手書きでラフを作ります。

100円ショップで売っている小学生が使うような「らくがきちょう」に、後から消せるフリックペンで勢いで描いていきます。

1枚ずつ切り離せるので、描いている途中で違和感を覚えたらページごと破って次の紙に書き直せるところが気に入っています。

一通り完成したら、ラフでメモした文字数を基準にGoogleドキュメントで各ページに載せるテキストを打ち込んでいきます。

Photo:岩田リョウコ

ーー仕事環境へのこだわりはありますか?

基本的にいつも自宅で仕事をしています。自宅の仕事用の机じゃないと書けないんです。

スマートフォンで作業をするのが苦手で、パソコンを使わないと文章を書けないんですね。調べ物ですらスマートフォンだと画面が小さくて、「もういや!」となります。旅行中でもPCがないと不安になるくらい、PCがないと生きていけないですね。

Photo:岩田リョウコ

ーー仕事のリズムを整えるうえで、サウナはどんな存在ですか?

フリーランスになってからは仕事のオンとオフの境界はゼロで生きています。

サウナは気持ちを切り替える場所というよりはもっと集中して新しい視点や考え方を閃かせてもらいに行く場所ですね。

部屋で行き詰まって書けなくなったら「とりあえずサウナ行こう」とパソコンを閉じます。

サウナに限らず地下鉄の移動中など、場所を変えると急にアイデアが思い浮かんだり、上手く書けなくて悩んでいた箇所の解決法がひらめいたりします。

ーー創作の工程で生成AIは活用していますか?

2025年に出版した最新刊・『週末海外サ旅 ゆるっと海の向こうへ』(大和書房)では、私が書いた文章をChatGPTに読み込ませて、他の言い方ができないか表現の仕方を探ってみました。

自分の文章がどうしてもパターン化してしまうので、表現の幅を広げることができたと思います。

イラストは……全然うまくいかないですね(笑)。

「私のイラスト描いてくれたら嬉しい」と期待していたんですけど、「このイラストのように描いて」と伝えても全然違うテイストで出力されるので諦めました。

実は、最近までずっとマウスでイラストを描いていたんですが、2021年に出版した『HAVE A GOOD SAUNA! 休日ふらりとサウナ旅』(いろは出版)の執筆からiPad Airを購入して、タブレットでのデザインに挑戦。

肩がガチガチに凝ってしまい、鍼に1年くらい通うようになりました。「マウスなら3秒で終わるのに」と思いながら30分かけてペンで描いていましたね。

Photo:岩田リョウコ

AIに任せる線引きを大切にしたほうがいい

ーーでは、生成AIがさらに進化したら将来的にはイラストを任せてみたい?

正直なところ、AIが描いてくれたらとても楽になるし使いたいところではあるのですが、私らしさが失われるような気もしています。

AIが描いた絵って味気ないというか完璧すぎる感じもあって、やっぱり自分で描いたほうがいいのかなと思っています。

ーー人間がやることとAIに任せることの線引きはどこにあるのでしょうか?

人間にしかできないことは、気づいたり感じたりしたことを膨らませることではないでしょうか。

たとえば、誰かと一緒に綺麗な夕陽を見に行ったとします。「夕陽を見た」という事実や行為は同じでも、思ったり考えたりすることは人それぞれ違いますよね。

私たち書き手ができることは、人間ならではの気づきや感じたことを自分の中に落とし込んでどう昇華させて表現するかだと思うので、その部分は守っていきたいです。

自分の経験に重ね合わせて書くことは人間にしかできないことなので。もしそこもAIが作り上げてしまうようになったら悲しさを覚えます。

ポジティブ心理学を学びたい

ーー創作の軸がAI時代にも揺らがないと感じました。そんな中で、これから探求していきたいテーマはありますか?

ポジティブ心理学を学ぼうと思っています。

ポジティブ心理学は、落ち込んだ気持ちをどう克服するかというよりも、「人がより満ち足りて、意味のある毎日を送るにはどうしたらいいのか」を科学的に考える学問です。

伝統的な心理学が「問題の解決」に目を向けてきたのに対して、ポジティブ心理学は 「良い生活(ウェルビーイング)」 を構成する感情や習慣、人との関係性などのプロセスを扱います。

今までコーヒーやサウナ、フィンランドなどさまざまなテーマを書いてきたのですが、根底には「毎日の生活が少しでも楽しく、明るくなりますように」との思いがずっとありました。

ポジティブ心理学に出会った時に、「あ、私が今まで本を通して伝えたかったのはこれだ」と強く感じ、大学院で一から体系的に勉強したくなったんです。

具体的な形になるまでには、時間がかかるかもしれません。それでも、今まで読者のみなさんにお伝えしてきたエッセンスをいつか本にしてお届けしたいと考えています。

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文筆家。アメリカ在住中に出版したコーヒー本『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』が全米ベストセラーになり、世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ愛好家で国内外のサウナをめぐっている。アウフグース日本選手権の審査員も務める。

著書に『週末フィンランド ちょっと疲れたら一番近いヨーロッパへ』(大和書房)、『エンジョイ! クラフトビール 人生最高の一杯を求めて』(KADOKAWA)、『コーヒーがないと生きていけない! 毎日がちょっとだけ変わる楽しみ方』(大和書房)、『HAVE A GOOD SAUNA! 休日ふらりとサウナ旅』、『ちょっとサウナ行ってきます こうあるべきあるべきを脱ぎ捨てて、明日がもっと軽くなる』(いろは出版)、『直訳やめたら英語が一気にできるようになった私の話』(大和書房)がある。公式サイト

Source: I LOVE COFFEE

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