「できが悪い」裕福な家庭で言われ続けた36歳の長男が「行方不明」となった理由
「親子関係に問題を抱えている人は、母の日に複雑な思いをするようです。親御さんの中には、自分への母の日のプレゼントとして、お子さんの調査を依頼する人もいます」
そう語るのはリッツ横浜探偵社の山村佳子さん。浮気調査を専門とする山村さんのもとには、浮気でなくとも様々な「家族の相談」がもちかけられる。
「親からの依頼」で「行方不明の子どもを探したい、安否を確認したい」という依頼も実は少なくないという。虐待の可能性もあるため、場所を知らせることはなく「場所を探す」「現状を伝える」だけの依頼を受けることもあるのだとか。
その中でも印象的だった「子ども探し」の事例を教えてもらった。
今回の依頼者は63歳の専業主婦、朋子さん。会社経営をする65歳の夫との間に、36歳の長男と、30歳の次男がいる。長男は朋子さん曰くすべての受験に「失敗」し、できが悪いというが、十分大きな大学を卒業し、大企業に勤務している。次男は難関大学から大手商社に入り、3年前に社内恋愛で結婚。2歳の娘もいる。
「できが悪い子ほど可愛い」という言葉通り、朋子さんは、受験にも就職にも朋子さんの思い通りの成績を残せなかった長男を「愛する」がゆえに徹底的に管理をしてきたという。25歳で一度一人暮らしをしたときも、すきをみて合い鍵を作り、その家に通うようになって30歳の時には実家に帰させた。そんな長男が行方不明になったのは、次男が結婚した3年前。朋子さんの依頼は「長男の居場所を探して、元気な姿を確認したいだけなのです」ということだった。
Photo by iStockしかし実は朋子さんがカウンセリングルームから帰ったあと、朋子さんの夫から電話があった。実は夫は長男の居場所を分かっていた。子育てを任せきっていた夫は、長男の苦しみを理解していたのだ。そこで住所も聞いたうえでの「元気な姿の確認」をする調査をすることになった。
では長男はどのように暮らしているのだろうか。そこから明らかになったことは。
4~5歳の子どもが…
朋子さんの夫から伝えられた住所は、都内の自宅からは行きにくく、1時間近くかかる都内でした。長男が母親から離れたいという意志を感じました。
古い集合住宅で、家賃は11万円程度。オートロックもありません。朝7時から張っていると、8時に長男が慌ただしく出てきました。4~5歳くらいの男の子を連れています。てっきり独身だと思っていたら、結婚しているのでしょうか。長男と男の子は親しそうです。長男は自転車に男の子を乗せると、駅の近くの保育園に預けると自転車で駅まで行き、電車に乗って都心のオフィスに出勤していました。
Photo by iStockランチは後輩と思しき男性と出てきて、近くの定食店へ。長男は色白で穏やか。とても優しそうです。服もシンプルなスマートカジュアルです。白のシャツに紺のジャケット、チノパンが体に馴染んでいます。
浮気調査で男性をみることが多いため、長男のような誠実そうな人を見ると、心が癒される感じがしました。
長男と男性は社内政治について楽しそうに話していました。男性が「ゴルフをやりませんか?」と誘うと、「俺はいいよ〜」と笑った笑顔が朋子さんに似ていました。
長男は18時に出てきて、2駅ほど地下鉄に乗り家の方向へと向かいます。車内は空いており、座ってはうとうととしていました。疲れているごく普通の勤め人といった雰囲気。スーパーで醤油とキャベツを購入し、エコバッグがないからでしょう、手で持って帰宅。エコバッグを忘れても軽々しく袋をもらわないのは、誠実な人なんだなと感じました。その後の動きはありませんでした。