トランプ大統領、EU・メキシコに30%関税通告-書簡で再び揺さぶり

トランプ大統領は、メキシコと欧州連合(EU)に対し30%の関税を課すと表明した。自身の貿易アジェンダで同盟国を翻弄(ほんろう)し、世界の金融市場に不確実性をもたらし続けている。

  トランプ氏は12日、新たな税率を通告する2通の書簡をソーシャルメディア上で公開。交渉で条件が改善されなければ8月1日から適用すると伝えた。

  トランプ氏は今週、各国に書簡を送り、4月に提案していた関税水準を微調整しつつ、さらなる交渉を呼びかけていた。

  EUは関税回避のため米国と暫定合意することを期待していたが、今回の書簡は、主要貿易相手国・地域との土壇場の合意に向けた楽観に水を差した。

  ただ、大統領は「これまで閉ざしてきた貿易市場を米国に開放し、関税および非関税の政策・貿易障壁を撤廃する意向があるのであれば、われわれはおそらく、この書簡への調整を検討することになるだろう」とも述べ、追加の調整余地を残した。

  トランプ大統領は4月初めの「解放の日」イベントで貿易相手国・地域に対する関税を発表した際、EUに対しては20%の関税を課すとしたが、その後、交渉のための90日間の猶予期間を設け、この期間中は一律10%の基本税率にとどめている。

  しかしEUとの交渉が進まないことにいら立ったトランプ氏は5月23日、EUに50%関税を課すと警告した。

  欧州委員会のフォンデアライエン委員長が6日にトランプ大統領と協議したことを受け、欧州委は今週に入り、貿易合意の枠組みがまとまりつつあるとの見方も示していた。

米国・EU双方に打撃と警告

  フォンデアライエン氏は、トランプ氏からEUへの書簡に「留意する」と述べ、こうした措置は米国・EU双方の経済に打撃を与えると警告した。EU大使らは13日、通商について協議する予定だ。

  同氏は声明で「われわれは8月1日までの合意を目指し、引き続き協議を続ける用意がある」と言明したうえで、「同時にEUの利益を守るべく、必要なら適切な対抗措置を含め、あらゆる手段を講じていく」とも強調した。

  また、オランダのスホーフ首相はXへの投稿で、「米国と相互に有益な結果を追求するために、(EUは)団結と決意を堅持しなければならない」と述べた。

  今回通知された関税率は幅広く適用されるが、自動車や鉄鋼などに対するセクター別関税とは別になる。発効すれば、既にトランプ政権と合意した英国との比較で、EUは対米輸出で競争上不利な立場に置かれる可能性がある。

フェンタニル問題

  トランプ大統領はメキシコのシェインバウム大統領宛ての書簡で、「国境の安全確保に協力してくれている」としながらも、取り組みは「不十分だ」とも指摘した。

  さらに、「メキシコが麻薬カルテルの取り締まりと合成麻薬フェンタニルの流入阻止を成功させれば」、米国は関税の見直しを検討すると説明。

  「これらの関税は、メキシコとの関係に応じて引き上げることも、引き下げることもあり得る」と続けた。

  書簡では、これまで25%の関税が適用除外となっている米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)準拠の貿易品目の扱いについては言及がなかった。ただ、米政権はこれまで、カナダに対しては免除を維持する方針を示している。

  メキシコのエブラルド経済相は、Xへの投稿で今回の関税措置を「不当だ」と批判。安全保障・移民・経済問題に対応するために、米国との新たな作業部会を11日に設置したばかりだったことを明らかにした。

  エブラルド氏は「恒久的な米・メキシコ間の作業部会における最初の主要な任務は、期限までに両国の企業や雇用を守る代替策を策定することだ」とした上で、「メキシコはすでに交渉を行っている」と述べた。

  トランプ氏が上乗せ関税の当初猶予期限としていた7月9日の時点で関税引き上げの対象ではなかった国で書簡を受け取ったのは、ブラジル、カナダに続きメキシコで3カ国目となる。

  トランプ氏がここ数日に関税引き上げの対象として名指しした国には、日本、韓国、南アフリカ、インドネシア、タイ、カンボジアのほか、アルジェリア、リビア、イラク、スリランカが含まれる。

原題:Trump Says US to Impose 30% Tariffs on EU, Mexico Next Month (4)

(抜粋)

(欧州委員長、オランダ首相、メキシコ経済相の発言を加えます)

関連記事: