FOMC議事要旨、慎重姿勢が適切と判断-関税起因の不確実性で
米連邦準備制度理事会(FRB)が28日公表した5月6-7日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、当局者らは経済を巡る不確実性が高まっていることから、政策金利の調整を行う上では慎重なアプローチが正当化されるとの認識で一致した。
当局者らは関税が及ぼし得る影響を主因として、3月会合以降に失業増加とインフレ加速のリスクがいずれも高まったと判断した。そうしたシナリオ下では、物価安定と最大雇用というFRBの2大責務が相反する状況に陥る恐れがある。
議事要旨は「経済成長と労働市場はなお堅調で、現在の金融政策がやや引き締め的であることを踏まえると、委員会としてはインフレと経済活動の見通しがより明確になるのを待つ状況が整っているとの認識で参加者は一致した」と記述。
「経済見通しに対する不確実性は一段と強まっており、一連の政府政策変更による最終的な経済への影響がより明瞭になるまで、慎重なアプローチを取るのが適切だとの見解で参加者は一致した」とも記された。
今回の議事要旨で、政府の政策変更で経済見通しが不透明になる中、FOMC当局者が当面は政策金利を据え置く考えを示していることが浮き彫りとなった。FOMCは5月会合でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25-4.5%で維持。据え置きは3会合連続。
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議事要旨によると、FRBスタッフは発表された通商政策を反映し、2025年および26年の経済成長見通しを下方修正した。
「経済がリセッション(景気後退)に陥る可能性は、基本の予測シナリオとほぼ同程度にあるとスタッフはみている」と指摘した。
またスタッフは労働市場が「大幅に」軟化すると予測し、失業率は年内に自然失業率を上回り、2027年まで高水準が続くと見込んでいる。さらに今年については、関税がインフレを「顕著に」押し上げると予想した。
インフレ期待
議事要旨ではまた、当局者らが関税に伴う物価上昇が持続的なインフレにつながる可能性を警戒し、米国民の長期的なインフレ期待を一段と注視していることが示された。
議事要旨では、「ほぼ全ての」参加者がインフレが予想より根強く続くリスクを指摘したと記された。
ミシガン大学の調査によれば、消費者の5-10年先インフレ期待は今年に入り大幅に上昇しており、関税が主因とされている。ただ当局者らはこの状況を重大視しておらず、市場ベースの指標を根拠にインフレは引き続きしっかり抑制されていると主張している。
議事要旨では「インフレがより根強いことが判明する一方で、成長と雇用の見通しが弱まる場合、委員会は困難なトレードオフに直面する可能性がある」と指摘。「政府政策変更の最終的な度合いやそれらが経済に与える影響は極めて不確実だ」と付け加えた。
枠組みの見直し
政策当局者らは金融政策運営の指針となる枠組みについて、定期的な見直しの議論を引き続き行った。
平均インフレ目標や雇用目標の「未達」に関しては、当局者らは現在の表現を見直すのが適切だと考えていると、パウエルFRB議長は説明している。
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2020年に完了した前回の見直しを受けて、FRBは新たな枠組みを採用した。インフレ率が2%を持続的に下回った後は、「一定期間」2%をやや上回る水準のインフレ率を目指すというアプローチで、柔軟な平均インフレ目標(FAIT)として知られる。
今回の議事要旨ではFAITとは若干異なり、柔軟なインフレ目標と呼ばれるアプローチへの支持が示唆された。このアプローチでは、過去に見られた目標からのかい離を反対の動きで相殺するのではなく、インフレ率を単に2%の目標水準に戻すことを目指す。
原題:Fed Well Positioned to Wait for Clarity on Outlook, Minutes Say(抜粋)