中東情勢緊迫化で原油価格に急騰の気配-米国がイラン核施設を攻撃

米軍がイランの主要な核施設3カ所を攻撃したことで、原油市場では価格急騰の気配が強まっている。

  イスラエルがイランへの攻撃を開始して以来、過去1週間、ブレント先物価格は上下を繰り返しながら11%上昇した。米国はナタンズとフォルドゥ、イスファハンにある3施設を攻撃。世界の原油生産の3分の1を占める中東地域で一気に緊張が高まった。23日は再度の上昇が予想される。

  今週はオプション市場から軽油価格、船舶運賃、原油先物のフォワードカーブまで、価格変動がさらに活発になりそうだ。

  MSTマーキーのエネルギーアナリスト、サウル・カボニック氏は「今後数時間から数日間のイランの対応によるが、過去の警告通りに動けば、原油価格は100ドルに向かう可能性もある」と指摘。イランがペルシャ湾岸にある関連インフラなど米国の石油権益を標的にしたり、ホルムズ海峡の通航を妨害したりする行動に出れば「紛争が拡大する可能性もある」とみている。

  ホルムズ海峡はイランだけでなくサウジアラビアやイラク、クウェートなど石油輸出国機構(OPEC)加盟国の原油輸出にとって重要な航路となっており、世界で流通する原油の約5分の1がこの海域を経由している。

  元トレーダーでラボバンクのエネルギーストラテジストのジョー・デローラ氏は「今回の一件は米国が中東の紛争に本格的に首を突っ込んだことを明確にした」と分析。その上で「米海軍がホルムズ海峡の通航を確保する任務を負うことになる」と述べ、原油価格は1バレル=80-90ドルのレンジに上昇すると予想している。

  ただ、現時点では原油供給に目立った支障は出ていないもようだ。PVMオイル・アソシエーツのタマス・ヴァルガ氏は「仮に米国がイスラエルを軍事的に支援し、イラン政権を打倒する構えを見せれば、原油価格は一時的に急騰するだろう」としつつも、「原油そのものが紛争の対象になることはない」とみている。

  原油価格は燃料価格やインフレ率に直結する。トランプ米大統領は選挙戦で「インフレを抑える」と主張していたが、極端な価格変動時に石油不足が発生すれば、景気後退を引き起こしかねない。

原題:Trump’s Airstrikes on Iran Leave Oil Market Poised for Surge (2) (抜粋)

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