アメリカ製作でない映画に100%の関税とトランプ大統領、他国の優遇措置を批判

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アメリカのドナルド・トランプ大統領は4日、外国で製作された映画に対して100%の関税を課す方針を明らかにした。世界各国との貿易摩擦をさらに激化させる構えを見せている。

トランプ大統領は、アメリカの映画産業が「とても急速に死につつある」と述べ、その対策として、米通商代表部(USTR)に関税導入の手続きを開始するよう指示したと語った。

また、こうした背景には、他国が「まとまった取り組み」として映画製作者やスタジオを誘致するため各種の優遇措置を提供していると主張。これは「国家安全保障上の脅威」だと位置づけた。

トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「これは、他のすべてに加えて、メッセージ発信で、プロパガンダでもある」と投稿。「アメリカで映画を作る時代を、再び取り戻す!」と述べた。

ハワード・ラトニック商務長官は、「対応している」と反応した。

ただし、この措置が何を意味するのか、詳細は不明。アメリカ国外で映画を作るアメリカの製作会社がどういう対応を受けるのか、トランプ氏は説明していない。

アメリカの映画製作会社がアメリカ以外で撮影した大ヒット映画には、近年では「デッドプール&ウルヴァリン」、「ウィキッド」、「グラディエーターII」などがある。

ネットフリックスなどの配信サービスが提供する映画や、映画館で上映される映画に、トランプ氏の言う関税が適用されるのかどうか、適用される場合は税率がどう計算されるのかなども不明。

トランプ氏は今年1月にホワイトハウスへ復帰して以来、各国に対する関税を次々と導入している。

トランプ氏は、関税政策がアメリカの製造業を活性化させ、雇用を守ると主張しているが、その影響で世界経済は混乱に陥っており、各国で物価の上昇が懸念されている。

就任前には、俳優のジョン・ヴォイト氏、メル・ギブソン氏、シルヴェスター・スタローン氏の3人を特別親善大使に任命。ハリウッドにおけるビジネス機会の促進を担わせた。また、ハリウッドは「偉大だが非常に問題を抱えた場所」だと語った。

トランプ氏は当時、「この4年間で多くのビジネスを外国に奪われたハリウッドを、かつてないほど大きく、より良く、より強く復活させるために、彼らを自分の特使として任命する」と述べていた。

映画業界の調査会社ProdProによると、課題は多いものの、アメリカは依然として世界有数の映画製作拠点になっている。昨年の国内の映画製作支出は145億4000万ドル(約2兆1000億円)だった。ただし、2022年から26%減少したという。

一方で、同期間に映画製作支出が増加した国としては、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、イギリスが挙げられている。

アメリカの映画業界は、今回の発表以前からすでに、トランプ政権の貿易政策の影響を受けていた。

4月には、中国がアメリカ映画の輸入枠を削減すると発表。中国の国家電影局は、「アメリカ政府による対中関税の乱用は、中国国内の観客によるアメリカ映画への好感度をさらに下げることになる」とし、「市場原則と観客の選択を尊重し、アメリカ映画の輸入本数を適度に削減する」と述べている。

トランプ政権は、関税攻勢の中で中国に最も厳しい措置を取っており、現在、中国からの輸入品に対し最大145%の関税を課ししている。

また、新たな関税が既存の関税に上乗せされることで、一部の中国製品への課税率が245%に達する可能性があると示唆した。

これに対し中国政府は、アメリカからの輸入品に125%の関税を課して報復した。

アメリカはその他の国に対しても「相互関税」をかけており、猶予期間が終了する7月までは一律10%となっている。

トランプ氏は4日、大統領専用機「エアフォース・ワン」内で記者団に対し、中国を含む多くの国々と貿易協定について協議を行っていると述べた。

ただし、今週に中国の習近平国家主席と会談する予定はないと述べた。米メディアは先に、ホワイトハウスが貿易協議について中国に打診したと報じていた。

今週中に何らかの貿易合意が発表されるかとの質問に、トランプ大統領は、「その可能性は十分にある」と述べたが、詳細には言及しなかった。

これに先立ち、トランプ氏は中国に対する関税を引き下げる用意があることを示唆していた。

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