「現在進行形の日朝交渉の闇」小泉訪朝直前の記録欠落に保守党島田氏、田中均氏「聴取を」
日本保守党の島田洋一衆院議員は6日、平成14年9月の小泉純一郎首相(当時)の初の北朝鮮訪問を前に行われた2回分の対北交渉記録が欠落している問題について、「現在進行形の日朝交渉の闇だ。徹底追及する」と語った。その上で岩屋毅外相に対し、交渉の当事者だった外務省の田中均アジア大洋州局長(当時)を聴取すべきと強調した。6日配信のユーチューブ番組「sayaの銀座で5時!!」で明らかにした。
「日朝議連の講師に呼んだのに」
島田氏は「小泉訪朝直前の極めて重要な交渉の記録を残していない。外交の常識に反する行為だ。なんらかの裏合意を行ったと思われても仕方がない」と問題視した。
インタビューに応じる岩屋毅外相田中氏について「記録を取るなと部下にいったにしろ、破棄したにしろ、持ち帰ったにしろ、公務員としてあってはならない」と述べ、「外相は監督責任がある。職務規律を保つ抑止力を利かせるためにも、田中氏を呼んで『どうなんだ』と聴取しないといけない」と強調した。
一方、岩屋氏は4日の記者会見で田中氏について「聴取も含めて改めて、確認することは考えていない」と述べるにとどめている。
ただ、田中氏は岩屋氏が所属する日朝国交正常化推進議連に講師に招かれた経緯がある。そこで石破茂首相が掲げる東京と平壌に連絡事務所を置いて拉致被害者について調査するというアイデアを披露したといわれており、島田氏は「講師として呼べるのに、なぜ記録がどうなったのかが聴取できないのか」と疑問視した。
「記録欠落は交渉力損なう」
講演する山上信吾氏外務省を退官した山上信吾前駐豪大使も番組に出演し、文書が欠落した背景について、当時交わされた「日朝平壌宣言」で「拉致」の文言が抜け落ちた経緯や、国交正常化後の北朝鮮に対するODA(政府開発援助)の額が話し合われたのではないかなどと指摘されていた、と振り返った。
その上で、交渉文書の欠落について「外務省の常識から考えられない。国家間の交渉について記録を残すのは、外交官のイロハのイだ」と語った。
山上氏は「きちんと歴史の検証にさらしてほしい。それが国民に対する責任の果たし方だ」と訴え、「記録を残すのは交渉力を損なわないためでもある。相手は当然記録を取っている。20年、30年経っても、向こうはそこから出発する。こちらは『知らない』だと交渉にならない」と述べ、外務省や国会は聴取すべきとした。
担当幹部に「勇気をもって決断」
石破内閣は2月4日、この問題の事実関係を尋ねた島田氏の質問主意書に対し「外務省としてお答えすることは差し控えたい」とする政府答弁書を閣議決定した一方、3月4日の閣議では一転、2回分の交渉記録が存在しないことを認める答弁書を決定している。
島田氏は、答弁書の作成に関わった外務省の担当幹部と旧知の仲といい、2月の回答後、島田氏は「『はっきり認めた方がいい』といったら、彼はどのレベルで相談したか知らないが、勇気をもって決断してくれた」と振り返った。
記録欠落は安倍晋三元首相が初めて問題視し、安倍、菅義偉、岸田文雄の3代の首相は国会答弁などでそれぞれ認めていた。(奥原慎平)