インデックス型投信 成長の50年…株価に連動 低費用、リスク分散
株価指数に連動することを目指す「インデックス型」の投資信託が8月、米国で個人向けに発売開始されて50年を迎えます。資産形成の中心的な商品となっているインデックス型投信がどのように広がってきたのかを紹介します。(津田知子)
個人向け販売 米で開始
インデックス型投信は、資産運用会社が米国のS&P500や日本の読売株価指数(読売 333(さんさんさん) )、日経平均株価などの株価指数に連動するように運用している。株価指数に沿って値動きするため、初心者でもわかりやすい商品だ。
インデックス型を上回るリターンを目指して銘柄や経済情勢を分析して運用する「アクティブ型」の投信と比べてコストが低く、一つの商品で株価指数を構成する数百銘柄に分散投資する形になるため、「市場の平均的な成長を取り込める」(大手資産運用会社)。
海外と比べて普及が遅れた日本でも、2018年に旧NISA(少額投資非課税制度)のつみたてNISAが始まると資産運用会社が商品を続々と投入。24年に始まった新NISA「つみたて投資枠」でも人気となった。
投資調査会社モーニングスター・ジャパンによると、米国のインデックス型の純資産総額の合計は21年にアクティブ型を上回り、6月時点で18兆ドル超(約2900兆円)とアクティブ型の約10兆ドルを大きく上回る。日本でもインデックス型が5割弱となり、「インデックス型がアクティブ型を抜くのは時間の問題」(モーニングスター・ジャパンの元利大輔氏)だ。
批判の的
個人向けのインデックス型投信が誕生したのは1976年8月31日のことだ。
米大手資産運用会社バンガードが、S&P500に連動する商品(現在のバンガード 500 インデックスファンド)を発売。創業者ジョン・ボーグル氏は「株式市場に打ち勝つよりも低コストで株式市場全体を保有する方が有益だ」という理念を掲げていた。
ただ、当初は批判の的となった。「有望な株を厳選すれば高い成果が見込める」といった期待が根強く、「平均点を目標にするなんて非合理的で、アメリカ的ではない」などと批判が集中。5000万~1億5000万ドルの目標に対し、集まった資金は1100万ドル程度にとどまり、「ボーグルの愚行」とも呼ばれた。
それでもインデックス型投信は80年から運用が始まった米国の企業型確定拠出年金「401k」の運用商品として徐々に広がった。手数料が圧倒的に安く、リスクも低いことから、安定的な運用を目指す年金の運用と相性が良く、90年代に景気拡大と株価上昇が続いた米国ではリターンも好調で資金が集まっていった。
バフェットの賭け
「バフェットの賭け」と呼ばれるエピソードもインデックス型のファンを増やした。
2007年、「投資の神様」とも呼ばれる米国の投資家ウォーレン・バフェット氏が「長期でみれば、米国市場に連動する投信を上回るヘッジファンドはない」などと主張。有力な投資会社が100万ドルを賭けて、五つのアクティブ型の商品を選び、商品を入れ替えながら10年間運用したが、S&P500の連動商品の資産が2倍以上になったのに対し、投資会社のリターンは4割弱にとどまり、賭けはバフェット氏の圧勝だった。
実際、市場に逆風が吹く時期も含めて、アクティブ型で長期にわたり、インデックス型を超える運用成果を実現できる商品は一握りだ。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、10年以上の長期運用で米国ではアクティブ型の85~90%がS&P500のリターンを下回り、日本でも約75%がインデックス型を下回っている。
バンガード社が50年前に発売した商品の残高は約1・7兆ドル(約270兆円)に上る。同社は50周年を伝えるサイトで「インデックス投資の魅力は明らかだ。わかりやすく、費用対効果が高く、分散投資で市場の成長に対して安定した運用成績をもたらしてくれる」としている。
読み継がれる投資「バイブル」 翻訳者「トップクラスの成果も」
インデックス投資の「バイブル」と呼ばれるのが、米国の経済学者で米プリンストン大学名誉教授バートン・マルキール氏による著書「ウォール街のランダム・ウォーカー」だ。1973年の発刊以来、第13版まで改訂を重ねてきた本の翻訳者、青山学院大大学院国際マネジメント研究科元教授の井手正介さんに話を聞いた。
92年、大阪大学の客員教授時代に国際セミナーを開いてマルキール氏を招いた際、「翻訳させてほしい」と申し出たのがきっかけだった。投資の指南書というより、日本でも教養として読んでほしいとの思いだった。
米国では高齢者でも株式を持ち、企業が生み出す価値を受け取るという発想がある。日本では預金などで安全にという考え方が強いが、いかに株式投資が重要かという視点を知ってほしかった。
市場の平均点を目指すインデックス型の投信は、長期ではトップクラスの成果を得られることもある。そこが面白いところで、だからこそ、半世紀たっても本が読み継がれているのだろう。
大きくもうけようと考えず、平均的な成果を積み上げることで、投資以外のことに貴重な時間を使いたいという人などには、いい選択肢になると考えている。
井手さん、31日に講演
井手さんが基調講演を行うイベント「インデックスファンド今昔物語」が31日、青山学院大・青山キャンパス(東京都渋谷区)で開かれる。個人向けインデックス型投信の誕生50年を祝い、歴史や未来像などがテーマとなる。
討論会では人気投信「オルカン」の「生みの親」として知られる代田秀雄さんや「NISAの父」と呼ばれる元金融庁の今井利友さん、投信ブロガーの水瀬ケンイチさんらが登壇する。
イベントは午後6時半開会で参加費は無料。定員300人の事前申込制で、特設サイトで27日まで受け付けている。