Steamタイムアクションローグライト『アセンドトゥゼロ』は“メリハリ”がハンパない。ローグライク、ハクスラ、育成、自動戦闘を巧みに融合させる緩急の工夫

KRAFTON傘下のクリエイティブスタジオFlyway Gamesは『アセンドトゥゼロ』を開発中だ。対応プラットフォームはPC(Steam)で、日本語表示および、日本語キャラクターボイスが実装される。現在デモ版が配信中だ。

Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/2697940/_/?l=japaneseデモ版Steamストアページhttps://store.steampowered.com/app/3279910/_Demo/

『アセンドトゥゼロ』は時間を制御するローグライクアクションゲームだ。舞台となるのは、人類が機械型のエイリアンによって大打撃をうけた2225年の世界。主人公は人類最後の生き残りとして、タイムマシンを使い過去へと飛び、滅亡の未来を回避するために戦う。

本作においてプレイヤーは、限られた時間内に戦闘を通じてキャラクターを成長させ、ミッションを達成することでゲームを進めていく。制限時間は短く、初期状態ではたった30秒しかない。そのため主人公がもつ特殊能力の「時間停止」をうまく活用し、余計な時間を消費しないようなマネジメントが求められる。

筆者は発売前に本作をプレイする機会を得たが、この「時間停止」と後述する「ハイスピードアクション」のように、相反する要素のメリハリこそが本作の面白さの源泉であると感じた。本稿では『アセンドトゥゼロ』のメリハリに着目して、本作をプレイした感想をお届けする。

なお今回プレイしたのは開発中のバージョンであり、製品版とは内容が異なる場合があるのでご留意いただきたい。

本作の戦闘は『Vampire Survivors』などに代表されるような自動戦闘となっている。プレイヤーは最大で6つの武器を装備可能で、装備された武器はプレイヤーの周囲の敵を自動的に攻撃する。『Vampire Survivors』系のゲームと比べると、本作はゲームスピードが速い部類であり、敵の攻撃も苛烈だ。物量でプレイヤーを追い詰めることが多い『Vampire Survivors』系ゲームよりも、アクションに比重を置いているといえる。

そこで重要になってくるのが「時間停止」だ。時間停止中は基本的に完全無敵で、敵が放った弾に接触してもダメージを受けない。そのため危ないと思ったらすぐに「時間停止」で逃げることが基本のテクニックとなる。だが、時間停止中は武器による自動攻撃も停止してしまうため、どこかで「時間停止」を解除しなければ敵は倒せない。敵の攻撃位置や配置から、「時間停止」をどの立ち位置で解除するかを考える戦術的な要素は、単調になりがちな自動戦闘のいいアクセントになっている。

「時間停止」に制限時間はなく、解除はプレイヤーの任意のタイミングで行える。時間が動いている間はハイスピードな弾幕アクションのような動的なゲーム展開で、時間を止めると、さながら戦略シミュレーションのような静的なゲーム展開となる。このハイテンポなゲーム展開の変化は、本作ならではの魅力だろう。

本作に登場する武器種は剣、槍といったオーソドックスなものから、グレネードランチャー、ドローンなどの変わり種まで多岐にわたる。全体的にプレイヤーの攻撃はド派手で、派手さにたがわぬ高火力に設定されており、雑魚敵を鎧袖一触なぎ倒していく無双系ゲームのようなおもしろさも感じられた。

同時に、敵の攻撃力も非常に高く設定されている。ボスクラスの敵の攻撃は、なにが当たっても即死、と考えていいだろう。全体的に、倒される前に倒す、攻撃は避けることを前提としたバランス調整に思えた。

これだけ聞くと難易度が高いように思われるかもしれないが、本作では死亡時のペナルティを「制限時間の減少」に限定することで、難しくなりすぎないようにしている。また、HPが0になると同時に「時間停止」が発動するので、連続して倒されるような理不尽な展開になりにくい点も好印象だ。

制限時間というリソースが、ある程度延長できる方法が用意されているとはいえ、有限のリソースである以上、プレイヤーに何度も周回させることは避けられない。プレイヤーも敵もすぐに倒されやすいゲームバランスであることは、1周のあたりの重要性を軽くし、プレイヤーに気楽にトライアンドエラーを楽しんでもらうための調整のように感じた。これもまた『アセンドトゥゼロ』なりのメリハリであるのかもしれない。

公式サイトなどで本作は「ローグライクゲーム」と紹介されていることが多いが、もう少し緩い表現の「ローグライトゲーム」と表現されるのがあっているかもしれない。

というのも、本作にはゲームオーバー時に消滅しない、恒久的な成長要素が豊富に用意されているのだ。たとえば、敵を倒したときにドロップする装備品には、非永久アイテムと永久アイテムのふたつがあるが、永久アイテムは文字通り、どれだけ使用してもなくならず、自由に付け替えたり、強化することが可能だ。

また、探索中に入手するゼロコイン/ゼロセル/ゼロキーという3種類のリソースを消費することで、基礎ステータスの強化、特性の強化、キャラクターやスキルの開放/強化が行える。基本的には、プレイすればするだけ強くなれると考えていいだろう。

もちろんローグライク的な、ランダム性の面白さも本作は兼ね備えている。過去世界の探索中に手に入る「技術チップ」は、その周回の間のみ有効な一時的なバフをプレイヤーに与えるもので、「ダメージを〇%上昇させる」といった単純強化を与える効果だけでなく、「時間停止が、時間の進みをスローダウンさせる効果に置き換わる」のような、プレイフィールを大きく変化させるものも多い。

本作は同じマップを何度も周回しながら、ミッションを達成することでシナリオを進める構造のため、恒久的な成長要素によって、プレイ時間が直接的にキャラクターの強さに反映されることは、ゲームの停滞感を軽減するためにも重要だ。それと同時に、クセの強い効果の「技術チップ」で周回がマンネリ化しないようになっているのは、実にいい調整だと感じた。

先述した「技術チップ」はダイナミックな変化をプレイヤーにもたらすが、提示された強化が気に入らない場合は、入手をスキップすることも可能だ。また、マップの構造や敵の出現分布は固定、ランダムイベントなども少ない。ローグライクにありがちなプレイヤーにとって不利な、あるいはピーキーなランダム要素によって、予測不能な展開になるといった、ある種のカオスな面白さは本作には感じられなかった。

かわりに、ゲーム開始時に持ち込む装備、スキル、アバターと呼ばれるキャラクターの職業など、プレイヤーが選択できる変化は豊富に用意されている。お気に入りのアバターを極めるのも、武器やスキルに合わせてアバターを選択するもありだ。ひとつ面白いのが、ゲーム開始時にスキルやアバターに、経験値や通貨の入手量が増えるといったボーナス効果がランダムで付くことだ。これらの効果は、攻略においてはそこまで大きな差を生まないものの、あるとちょっと嬉しい。あたらしいアバターやスキルを試す、ひとつのきっかけにはなりえるだろう。

このように本作は、ランダムイベントによる半強制的な方法で展開の多様性を生み出すのではなく、ちょっとしたボーナスを提示することで、プレイヤーが自発的にさまざまな戦略を試すような仕組みになっている。何十回と周回を繰り返すゲームなだけに、ビルドや戦術の多様性はプレイヤーを飽きさせないために重要だが、プレイヤーに対する無理なストレスは課さない。このあたりの心理的なメリハリも、筆者にとっては非常に好印象だった。

以上が『アセンドトゥゼロ』をプレイした感想である。ハイスピードな自動戦闘に「技術チップ」を取捨選択するローグライク要素、マップを周回して武器を集めキャラクターを強化するハック&スラッシュ要素など、異なるジャンルを組み合わせた特徴の多いゲームでありながら、各要素にプレイヤーを集中させるタイミングがしっかりと用意されている。これがメリハリの利いたゲームだと感じた大きな要因だ。

本当に多くの要素が組み込まれたゲームであるため、ひとことでこのゲームがどんなゲームであるか、どんな人にむいているゲームなのかを表すのは非常に難しい。幅広い層がハマれる要素を兼ね備えた、非常にポテンシャルの高いゲームなので、本稿を読んで気になった方には、ぜひ一度ご自身の手で本作をあそんでみてほしい。

『Ascend to ZERO』はPC(Steam)向けに配信予定。PC(Steam)向けの無料デモ版が配信中だ。Steamストアページでは、声優の鬼頭明里さんのボイスも聞けるトレイラーが視聴できるので、そちらもチェックしてほしい。

Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/2697940/_/?l=japanese

デモ版Steamストアページhttps://store.steampowered.com/app/3279910/_Demo/

(出典:Flyway Games公式X(旧ツイッター)アカウント)

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