Nintendo Switch 2の初期設定時に音声読み上げを利用できないことに関して任天堂に送られた要望の全文が公開される
2025年6月5日に登場した任天堂の家庭用ゲーム機・Nintendo Switch 2の初期設定時に音声読み上げ機能を利用できないことについて、視覚障害を抱えたユーザーが任天堂に送った要望の全文を公開しました。
Switch 2 の初期設定時に音声読み上げを利用できないことに関して任天堂に送った要望の全文 | 猫の前足
Switch 2 の初回セットアップで、電源投入直後に画面読み上げを有効にする方法が現時点で存在するのかどうか任天堂に問い合わせした
— 猫 (@nyanchan2013) July 1, 2025
公開したのは、視覚障害を持つプログラマーの野澤幸男さんです。野澤さんはこれまで視覚障害者でも遊べるゲーム体験会を開催したり、音で構築されるゲームを遊べる「オーディオゲームセンター」プロジェクトに携わったりと、視覚に関係なくサービスを享受できる「アクセシビリティ」に関する活動を行ってきています。 目が見えない人がコンピューターやゲーム機を操作する際、視覚に頼るGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)ではなく、音声読み上げなどで画面に表示されている情報を聴覚から得られるようにする機能がアクセシビリティという考え方から強く求められます。
例えば、Windowsには「アクセシビリティ」機能が搭載されており、文字を読み上げたり、表示する文字を大きくしたり、色のコントラストを変更したりすることが可能。このアクセシビリティ機能はセットアップ時でも利用することが可能です。さらにChromeやFirefox、Edgeなどのウェブブラウザには音声読み上げ機能が標準搭載されています。
また、ゲーム機では、PlayStation 5では初期設定時に一定時間操作がない場合、音声読み上げ機能が自動的に有効化されます。Xboxの場合はキーボードのショートカットでナレーターを起動することが可能です。特にソニーはアクセシビリティに力を入れており、体にハンディキャップを抱えた人でもゲームを遊べるように設計されたAccessコントローラーをリリースしています。
ゲーム本編でも、目が見えない人でも遊べるように工夫されているタイトルは多くあります。例えば、かつてセガサターンとドリームキャストで発売された「リアルサウンド 〜風のリグレット〜」は、映像が一切なく選択肢を自分で選べるラジオドラマのようなゲームとなっています。これは視覚障害者でもプレイできることを想定したタイトルで、希望者には点字の取扱説明書も送付されました。
また、Nintendo Switch 2でも配信されている「ストリートファイター6」では視覚障害のあるプレイヤーのためのサウンドアクセシビリティ機能が充実しており、技の効果音を性質によって変えたり、相手との距離を音で表現したりという工夫が取られています。実際、「ストリートファイター6」では全盲のプレイヤーが世界大会に出場して見事勝利を飾ったことも話題となりました。
[NHKスペシャル] 世界大会で勝利!全盲格ゲーマー強さのウラには… | ゲーム×人類 変貌する人間と社会 | NHK - YouTube
このように昨今のIT・ゲーム業界ではアクセシビリティの充実が重要な課題の1つとなっているわけですが、Nintendo Switch 2の初期設定時に読み上げ機能を有効にすることができなかったことから、野澤さんは任天堂の公式サポートに問い合わせをしたとのこと。そして、任天堂からの回答によって、読み上げ機能を使って初期設定を行えないことが確定したので、抗議文を送ったと述べています。
任天堂からの回答によって、読み上げ機能を使って初期設定を行えないことが確定したので、抗議文を送りました。その全文を掲載します。「自分はなんとかなったからいいや」ではなくて、持っている人はぜひこの流れに乗ってほしい。リリースされたばかりの、いまのうちに。https://t.co/FKjdwKSY3e
— 猫 (@nyanchan2013) July 2, 2025
野澤さんは「(Nintendo Switch 2の)読み上げ機能の品質が高いという評判は私も耳にしており、その実装に多くの労力が注がれたであろうことは承知しています。それに対して当然感謝もしております。ついに Switch 2 にもアクセスできる手段ができたのだと、私の周りにいる多くのゲーマーはそのニュースに沸いていました。だからこそ、真にその恩恵を必要とするユーザーが、自力でその機能にアクセスできないという現状は、極めて矛盾しており、本末転倒とさえ言えます」と述べています。 ちなみにNintendo Switch 2の読み上げ機能については、以下のムービーをみるとその性能がよくわかります。
なお、任天堂のアクセシビリティ対策は遅れているのではないかという指摘は過去にもされていました。2024年における任天堂の株主総会では、「任天堂は視覚障害者対応が遅れているのではないか」という質問があったと報告されています。
任天堂とアクセシビリティ | N-Styles
https://n-styles.com/main/archives/2024/07/10-224500.phpQ1 ゲームを遊びたいと思っている視覚障がいを持つ人も、世の中にはいると思う。任天堂がこうした方に向けて取り組んでいることがあれば説明してほしい。 A1 代表取締役社長 古川俊太郎: 当社では、世界中の多くの方々に当社のゲームを遊んでいただきたいと考えています。この場で具体的な取り組みを申し上げることは控えさせていただきますが、視覚障がいのある方だけでなく、ゲームをするのに不自由な思いをされている方に当社のゲームを遊んでいただけるよう、さまざまな努力をしていきたいと考えています。
任天堂ファンサイトのN-Stylesは「1つ目の質問でいきなり任天堂が十分に問題に取り組めていないことを指摘する強烈な内容で、会場全体の空気が引き締まったように感じた。質疑応答で質問者の指摘が事実に反する場合はきちんと否定する。ちゃんと対応しているなら『サイトに掲載している』『他社から遅れているとは思わない』と言えば良い。だが、今回は指摘事項に具体的な言及を避けており、対応の遅れを事実上認めた回答となっている」と論じています。
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