10は2030年までに完全退役、戦闘捜索救助任務はF
10年以上に及ぶ米空軍と議会のA-10退役を巡る戦いは予算審議の風物詩だが、米陸軍や米海兵隊はA-10運用継続をとくに求めておらず、議員の一部が「A-10の必要性」を過度に主張するのも選挙区への影響を懸念しているだけで、A-10退役を巡る戦いの本質は雇用問題だ。
参考:Air Force chief: F-35s and F-15s may take over A-10’s combat search and rescue role
10年以上に及ぶ米空軍と議会のA-10退役を巡る戦いは予算審議の風物詩だが、米陸軍や米海兵隊はA-10の運用継続をとくに求めておらず、議会も近接航空支援において「30mmガトリング砲の威力やA-10の頑丈さが失われる」と本気で危惧しているのではなく、A-10運用・維持に関わるサプライヤーや配備されている基地周辺の雇用に影響が出ることを恐れる当該選挙区の議員が「A-10伝説」を過度に吹聴しているだけで、A-10退役を巡る戦いの本質は雇用問題だ。
出典:U.S. Air Force photo by Mark Herlihy
議会はA-10退役を拒否しても運用・維持のための資金を別途割り当てたりしないため、米空軍はA-10維持のため主翼の交換やアビオニクスの更新など大掛かりなアップグレードに資金を奪われ続けており、2023会計年度で初めて21機の退役(281機→260機)が認められ、当時のブラウン参謀総長は「A-10は本当に素晴らしい機体だ。競合が存在しない環境では本当に素晴らしい機体だ。A-10はシングルミッション=近接航空支援にしか対応していないため我々が求める航空機ではない」と述べ、ウクライナ戦争を引き合いに出して「近代的な防空システムが従来型の航空機を無価値に変えた」と指摘。
2024会計年度でも42機、2025会計年度でも56機の退役が承認され、2026会計年度予算でも残りの162機全ての退役が提案されたが、議会は国防権限法に「2026会計年度(2025年10月~2026年9月)中にA-10の在庫を103機未満にしてはならない」という条項を盛り込んだため、2026会計年度に退役が承認されたのは59機となり、2026会計年度予算でも69機の退役が提案されている。
出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Jessica Smith
米空軍は残りのA-10について「2029会計年度まで3個飛行隊(計54機)を維持する」「2030会計年度まで2個飛行隊(計36機)を維持する」と説明し、この措置はA-10の完全退役を少しだけ先延ばしにするものだが、その真意は戦闘捜索救助任務をA-10からF-15/F-35に移行させるための猶予措置であり、ケネス・ウィルスバッハ大将も下院軍事委員会の公聴会で「A-10が退役するに伴って戦闘捜索救助任務の近接航空支援は他のプラットフォームに引き継がれる」「その任務のための能力がF-15やF-35にある」と説明。
下院軍事委員会のオースティン・スコット議員は「A-10のパイロットは戦闘捜索救助のため特別に訓練されている」「F-35や他の航空機のパイロットにも戦闘捜索救助のため特別な訓練をするつもりなのか?」と質問すると「そうせざるを得ない」「それが我々の使命だ」と回答し、 必ずしもF-15やF-35がA-10の完全な後継機ではないことを滲ませたが、それを理由にA-10退役を拒否するなら「A-10の運用・維持にかかる資金を空軍予算とは別に割り当ててくれ」と言ったところだろう。
出典:PHOTO BY: Staff Sgt. Gregory Nash
A-10の機体維持にかかる費用のみであれば少額かもしれないが、どんな機体を装備している飛行隊でも人件費は同じで、現在の米空軍にシングルミッションにしか対応しない飛行隊を維持できるほど余裕はなく、どれだけA-10がF-15/F-35では実現できない能力や価値を提供したとしても、航空機は導入から15年目以降にスペアパーツの入手性が悪化し始め「毎年3%~7%ずつメンテナンスコストが上昇していく」と米空軍は主張しており、どれだけA-10が優れたプラットフォームだとしても賞味期限が切れているため「F-15ではあれができない」「F-35ではこれができない」と騒ぐのではなく、現実的なトレードオフを受け入れるべきだ。
ちなみに、ウクライナ空軍のイグナト報道官はA-10のウクライナ取得の可能性が浮上した際「西側製戦闘機の受け入れに関する優先順位はF-16だ」「この機体は空や地上の目標に対して作戦を実行できるマルチロール機だが、A-10が対応できる作戦は地上部隊への火力支援(シングルミッション)のみで維持費もF-16より高価だ」「空軍のリソースが不足しているためA-10の受け入れは負担が大きすぎる」と述べたことがある。
出典:U.S. Air National Guard photo by Staff Sgt. Mercedee Wilds
2024年の下院軍事委員会の公聴会で「NATO加盟国や友好国と退役するA-10取得について協議を行っているのか」と質問された際、ケンドール空軍長官は「少なくとも1ヶ国が(退役するA-10に)関心を示しているものの、現在まで活発な議論が行われたかどうかは把握していない。空軍の在庫からA-10が外れれば同機を維持するための基盤が失われるため、これを取得して運用する国は非常に困難な状況に陥るだろう」と回答しており、痛快なA-10伝説は多くのマニアの間で人気があっても「欲しいか?」と尋ねられれば「いらない」と断られるのが現実だ。
議会もA-10退役に伴う戦闘捜索救助任務中の近接航空支援ギャップを心配しても「A-10の後継機を開発したらどうか?」とは言わないため、結局のところそういうことなのだろう。
出典:U.S. Navy photo by Photographer’s Mate 3rd Class Shannon R. Smith
ロマンで見ていくのは嫌いではないものの、予算から見ていくと大抵のロマン溢れる話は「作り話」で、飛行機の墓場と呼ばれるアリゾナの砂漠=デビスモンサン空軍基地に保管される航空機についても「いくらでも保管されてるんだからすぐに復帰できる」と思われがちだが、航空機の保管状態は4つに分類され、非常に高い確率で現役復帰が予想される航空機は「Type1000」の指定を受けて飛行可能状態を維持しながら保管されるが、Type2000に指定されると現役復帰の可能性を残すため解体されることはないものの「同型機の維持に必要な部品取り」が認められている。
Type3000は飛行可能状態を維持して一時的な保管を行う場合のみ指定され、墓場送りになる大半の航空機が指定されるType4000はスクラップとして業者に売却される運命が待っており、Type1000は保管に費用がかかるため指定されること事態が稀(全体の10%程度)で、Type2000も部品が抜き取られるため飛行可能な状態に戻してデビスモンサン空軍基地から移動させるだけで数ヶ月~1年の作業時間が必要になり、そこから現役復帰させるにはさらなる作業が必要なため「いくらでも保管されてるんだからすぐに復帰できる」という話は幻想に近い。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Courtney Sebast