日本人の平均寿命、30年で+5.8歳 沖縄が陥落、トップは滋賀
日本人の寿命はこの30年で5.8歳延び、男女を合わせて平均85.2歳になりました。都道府県別では、滋賀県がプラス6.9歳で順位を大きく上げ、かつて長寿ランキング首位だった沖縄県を抜いてトップに躍り出ました。どんな取り組みが功を奏したのでしょうか。
滋賀県の東西を結ぶ琵琶湖大橋を、約170人が軽快な足取りで渡っていく。
1周約250キロの琵琶湖を1年かけて歩く「琵琶湖一周健康ウオーキング」(NPO法人滋賀県ウオーキング協会)の参加者たちだ。
今年度2回目の開催となった5月18日は、大津市のJR堅田駅前から近江八幡市のJR近江八幡駅前まで約23キロを歩いた。
大津市に住む松本周雄さん(86)は8回目の参加。働いていたころは1日に40~50本吸うヘビースモーカーだったが、退職を機に禁煙し、そのあと大きくなってしまった胴回りをどうにかしようと山登りを始め、今はウォーキングを楽しむ。
「体重も血圧も問題ない。90歳まで元気に歩き続けるのが目標です」
一緒に歩いていた大津市の小島達雄さん(85)は、ウォーキングだけでなく、毎朝、自宅近くの公園でラジオ体操にも励んでいる。「ウォーキングも体操も仲間と一緒にやることで、より元気になれます」と笑顔を見せた。
小道を歩く、琵琶湖一周健康ウオーキング2025の参加者たち=5月18日、滋賀県守山市、田辺拓也撮影慶応大グローバルリサーチインスティテュートの野村周平特任教授らによる国際研究グループの調べでは、2021年の日本人の平均寿命は、1990年と比べて男性で6.0歳、女性で5.8歳、全体で5.8歳延びた。
最も延び幅が大きかった滋賀県は、男性で7.1歳、女性で6.9歳、全体で6.9歳延び、90年の21位からトップに躍り出た。
原動力になったのが、喫煙率の低下だ。
2000年には男性の56.2%が習慣的にたばこを吸い、全国平均の47.4%を大きく上回っていたが、22年には19.3%まで減り、全国の24.8%よりかなり低くなった。
女性の喫煙率も10.0%から4.2%になった(全国は11.5%から6.2%)。
「喫煙率半減」の目標 たばこ業界反発 国と滋賀とで分かれた対応
きっかけは、01年に県が策定した「健康しが推進プラン」だ。男性の喫煙率について「10年後までに半減するのが望ましい」とする数値目標を掲げた。
禁煙や完全分煙にしている飲食店を「受動喫煙ゼロのお店」として公表するなど、国に先んじて禁煙対策を進めてきた。
プランの検討委員長を務めた滋賀医科大名誉教授の上島弘嗣さんによると、当時、計画に禁煙目標を盛り込むのは至難のことだったという。
上島さんは、その前年の00年に厚生省(現・厚生労働省)が策定した計画「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)」の検討会の委員でもあった。
委員たちは、国の計画でも「喫煙率半減」を盛り込もうとした。しかし、案の段階では入っていた数値目標は、最終的には撤回された。朝日新聞の社説は当時、「たばこ業界や議員から強い反発があった」と書いた。
「健康のためには禁煙促進が重点項目となるのは明らかだった。国はどっちを向いて仕事をしているのか。国民の健康を考えているのか」
憤りと無念さを背景に、上島さんは県の計画には数値目標を残すことにこだわった。教壇に立っていた滋賀医科大では、学生が実習の一環で小中学校に行き、禁煙の大切さを教える取り組みもした。
それでも、策定後に県内で開…
この記事を書いた人
- 松浦祐子
- デジタル企画報道部|データジャーナリズム
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- 介護、医療、地域包括ケアシステム、認知症
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- ハンセン病、写真