日本を投資先として有望視、トランプ政策が分散投資促す-ピムコ

米国発の貿易戦争が米資産への投資を見直す動きを引き起こす中、日本が世界の投資家にとって注目すべき投資先として浮上している。債券投資大手のパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)がこのような見方を示した。

  ピムコの日本共同代表、ベン・ファーガソン氏はインタビューで、日本の株式市場では「一世一代の構造改革」が進行しており、債券市場も長年の金融緩和を経て金利上昇局面に入ったと指摘。こうした変化を受け、海外投資家の資金が日本に流入しているという。

  ファーガソン氏はさらに、トランプ米大統領による政策発表は市場に「混乱」をもたらしており、直近の関税措置は「少なくとも分散投資を検討する必要性を浮き彫りにしている」と指摘した。

  「日本はこれまで、世界の投資家にとって注目される投資先ではなかったが、現在は過去30年近くで最もダイナミックな局面にある」とファーガソン氏は語った。今や日本はグローバルな資産配分担当者にとって、最優先で検討すべき投資先になっていると述べた。

  トランプ氏による貿易戦争への世界的な反発が、米資産に代わる投資先を探る動きを加速させ、大規模な債券・株式市場を持つ日本が有望視されるようになった。

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  日本の公式統計によれば、グローバルファンドは4月に日本の株式・債券を過去最高となる計9兆1600億円相当買い越し、その後も日本資産買いが続いている。

  日本経済についてはリスクもある。米国は日本からの輸入品に対して25%の関税を課す方針で、発効は8月1日を予定。また、自動車・同部品と鉄鋼・アルミニウムがセクター別関税の対象となっている。

  ファーガソン氏は、地政学的に見て、日本との関係は米国にとって最重要なものの一つだ」と述べ、米軍が日本に大規模な駐留を続けている点を指摘。「双方にとって、この貿易問題が解決に至るよう努力するインセンティブがある」と語った。

投資機会

  ピムコは、世界第3位規模の日本の債券市場に今後さらに資金が流入すると見込んでいる。ファーガソン氏は日本国債について、「米国債への大きな配分からの分散投資先として魅力的だ」と指摘。特に為替スワップを通じてドル建てにした場合、その投資妙味がさらに増すと語った。

  日本銀行による国債買い入れの縮小を受けて一時的に不安定化していた日本の債券市場では、財務省が超長期債の発行額を抑制したことである程度の落ち着きが戻った。10日に行われた20年国債入札は無難な結果となった。

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  ファーガソン氏は、「過去数カ月の相場の動きは恐らく、市場ボラティリティーのレンジ上限だ」との見方を示し、日本国債の「レラティブバリューは、特に長期ゾーンで、魅力的に見える」と語った。

  また、資産運用業界の観点から、日本の家計が積み上げている巨額の国内貯蓄を投資に回す機会を後押ししたいとの考えを示した。

  こうした資金が経済に再投資されなければ、企業の新たな投資余力を損ない、生産性の低下や、日本が目指す持続的な物価上昇の実現にも影響を及ぼしかねない。

   「国の資源という観点で見れば、サウジアラビアには石油があり、日本には貯蓄がある」と述べた上で、「だが、いくら貯蓄が豊富でも、それが経済活動や成長に活用されなければ、他国に対して相対的に貧しくなってしまう。それは経済にとって逆風だ」と警鐘を鳴らした。

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原題:Pimco Sees Japan Wooing Capital as Tariffs Spur Diversification(抜粋)

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