「1日3、4回おやつと一緒にいただきます」93歳の心療内科医がインフルエンザとうつ病予防に飲んでいるもの カテキンだけでなく、ビタミンCも豊富
老後を生き生きと過ごすためには、どんなことが必要なのか。93歳になってもなお心療内科医として働く藤井英子さんは「気持ちが落ち込み気味の患者さんに勧めている飲み物がある。脳波のアルファ波を増加させリラックスさせる効果があり、うつ病のリスクを下げる作用がある」という――。
※本稿は、藤井英子『ほどよく孤独に生きてみる』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/Hanafujikan
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「自分で判断しない」ことも大切
私のクリニックを訪ねて来られる方の中に時折、「自分はうつ病のようで」とおっしゃる方がいらっしゃるのですが、それが、思い込みであることもあります。
うつ状態というのは、一時的に気分が落ち込んだり、憂うつな気持ちになったりすることですが、それだけでうつ病とはいえません。うつ状態が2週間以上続いて日常生活に支障が出るという場合には、総合的に判断して「うつ病」の診断をします。
一時的に抑うつ症状があって鬱々うつうつとした気持ちが続くときは、不安神経症の診断をすることもあります。
不安やストレスがかかって心が苦しいことは、誰にでもあることです。このような、病気ではないけれど調子が悪い「未病」の状態に漢方薬が役立つことがあります。
「漢方を飲んでいけば、徐々に気分は晴れていきますよ。そんな深刻に考える必要はありませんし、即効性を求めて西洋薬で急いで治す必要もありませんから、漢方薬を飲んでみてください」、そうお伝えすると、ホッとした表情になられます。
他にも、更年期障害ではないかとご心配されて受診された50代の男性が、高血圧症でしんどさや焦燥感を感じていたということもあります。血圧が下がってしんどさが軽減されて、ホッとされていました。
心の不調、体調不良のときは、自分のことを客観視してきちんと判断するのは難しいように思いますが、ご自身で判断しないことも大事です。
筋肉は何歳になっても増やせる
以前は歩きとバスでクリニックに通勤していましたが、最近、少しひざが痛い日があり、同居する次女が車でクリニックまで送ってくれるようになりました。
とてもありがたいことで、大荷物を抱えて、雨の日も風の日もバスを待つこともなくなりましたが、それでは足腰が弱って困ります。私は、なんとかしたいと、脚の筋肉を鍛えるために、座ったままで誰でも簡単に下半身の筋肉を鍛えられるというバウンドクッションを購入して、午前と午後の診療の間の休憩時間に活用しています。
筋肉は何歳になっても増やせると言われています。
理想は、ウォーキングなどの有酸素運動と、適度な筋トレを行って、近年問題視されている、加齢による筋肉量の減少(サルコペニア)やそれに伴う身体機能の低下を予防することが望ましいですね。
厚生労働省では、高齢者に対して週に2、3日程度の筋トレを行うことを推奨していますが、70歳以上で筋トレを行っている人は11%に留まります。
からだを動かすことは、病気の予防であり、心の健康につながりますから、まずは、ラジオ体操など気軽にできることからはじめてみてください。
また、筋力の低下を防ぐためには、肉や魚、卵、豆腐などアミノ酸を豊富に含んだ食材を摂取することです。
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最近は、とくに、気持ちが落ち込み気味の患者さんに煎茶をおすすめしています。
煎茶は日本の伝統的なお茶で、カテキンやテアニン、ビタミンCなどが豊富に含まれています。中でも、うま味成分であるテアニンには、脳波のアルファ波を増加させリラックスさせる効果があり、うつ病のリスクを下げる作用があります。
帝京大学医学部精神神経科講座教授の功刀くぬぎ浩先生の研究に、東北地方に住む、70歳以上を対象にした調査があります。それによると、緑茶を1日4杯以上飲んだ人たちは、1杯以下の人たちに比べて、うつになるリスクが半分程度でした。
藤井英子『ほどよく孤独に生きてみる』(サンマーク出版)
カテキンには、抗酸化作用や殺菌作用、抗がん作用、高血圧低下作用、血糖値の上昇抑制作用などが知られていますし、ビタミンCには肌のハリを維持したり、免疫力を高めたりする効果もありますから、インフルエンザなどの予防にもおすすめです。
また、今はペットボトルでお茶を飲む時代だからこそ、急須で淹いれるお茶はいかがでしょう。自分の好きな緑茶を探してみたり、自分のためにお茶を淹れる時間を持ったりすること自体が、目の前にある心配ごとから自分を少し離し、ほっとする時間をつくることにつながります。
私も1日に3、4度緑茶をいただいています。診療の休憩時間に、事務長と一緒に「お三時」の時間をとります。羊羹をいただきながら煎茶をいただくと心がゆるみ、午後のお仕事が頑張れるのです。
- 1931年京都市生まれ。京都府立医科大学卒業後、同大学院4年修了。産婦人科医として勤めはじめる。結婚後、5人目の出産を機に医師を辞め専業主婦に。育児に専念する傍ら、通信課程で女子栄養大学の栄養学、また慶應義塾大学文学部の心理学を学ぶ。計7人の子どもを育てながら、1983年51歳のときに一念発起しふたたび医師の道へ。医療法人三幸会第二北山病院で精神科医として勤務後、医療法人三幸会うずまさクリニックの院長に。89歳でクリニックを退職後、「漢方心療内科藤井医院」を開院。現在も週6で勤務する93歳の現役医師で、精神科医、漢方専門医。初めての著書『ほどよく忘れて生きていく』(サンマーク出版)は世代を超えて大反響を呼び、ベストセラーとなる。