米最高裁、ヴェネズエラ人約35万人の一時保護資格はく奪を容認 トランプ政権の訴え支持

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画像説明, ヴェネズエラ国旗を持つ女性

米連邦最高裁判所は19日、アメリカ国内に住む約35万人のヴェネズエラ人から「一時保護資格(TPS)」を取り上げるというトランプ政権の方針を認める判断を下した。

カリフォルニア州の連邦地方裁判所は先に、先月に失効するはずだったヴェネズエラ人のTPSはく奪措置を一時停止するよう命じていた。この日の最高裁判断は、この一時差し止め命令を解除するもの。

TPSは、自国内が武力紛争や自然災害、「通常と異なる、一時的な」事情などで危険な状況にあると認定された特定の国の人たちを保護する制度。アメリカで合法的に生活し、働くことが認められる。

今回の決定は、移民政策の決定実施に最高裁を繰り返し利用しようとしてきたドナルド・トランプ大統領にとって勝利と言える。

アメリカ国内に住むヴェネズエラ人には、2021年に初めてTPSが付与された。

当時のアレハンドロ・マヨルカス米国土安全保障長官は、「ヴェネズエラで通常と異なる一時的な状況が起きており、その国民が安全に帰国できない」として、バイデン政権(当時)がTPSの付与を決定したと述べていた。

マヨルカス氏は、南米ヴェネズエラは「広範な飢餓と栄養失調、非国家的な武装集団の影響力と存在感の強まり、弾圧、崩壊しつつあるインフラが示す、複雑な人道危機」に苦しんでいるとしていた。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2014年に危機的状況に陥って以来、約800万人のヴェネズエラ人が国を離れている。その大半はラテンアメリカやカリブ海諸国で暮らしているが、数十万人はアメリカに渡った。

TPSを与えられた移民の保護と労働許可は、2026年10月に終了する予定だが、トランプ政権はこれを1年以上前倒しして、2025年4月に終了させようとしていた。

米政府側の弁護士は、今年4月に移民の一時保護・就労資格を終了させるという政府の動きを、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所が阻止したことで、「移民と外交に関する行政府固有の権限」が損なわれたと主張した。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)法科大学院の教授で、この訴訟でTPS保持者の代理人を務めるアヒラン・アルラナンタム弁護士はBBCに対し、これは「非アメリカ市民から移民資格をはく奪する単一の動きとしては、アメリカの現代史上最大規模」だという見方を示した。

「最高裁が何の理由づけもなく、2段落の長さの命令文の中でこの措置の実行を認めたことは、本当に衝撃的だ」と、アルラナンタム弁護士は述べた。「最高裁の決定による人道的・経済的影響は直ちに感じられるだろう。そして、その影響は何世代にも続くだろう」。

政府側は最高裁に緊急上告したため、判事たちは今回の決定に至った理由を示さなかった。

命令文に記載された反対意見は、ジョー・バイデン前大統領が指名したリベラル派のケタンジ・ブラウン・ジャクソン最高裁判事によるもののみだった。

トランプ政権は8月にも、米国内に住む数十万人のハイチ人からTPSを取り上げるとみられる

トランプ政権はこのところ、移民政策に関する一連の決定について、最高裁にゆだねている。19日の決定は、そうした訴えに対する最新の動き。

トランプ政権は先週、最高裁に対し、キューバ、ハイチ、ニカラグア、ヴェネズエラからの数十万人の移民に対する人道的一時保護の打ち切りを求めた。

最高裁はトランプ政権の移民政策をめぐる訴えの一部を認める一方で、政権への打撃となる決定も出している。16日には、トランプ政権が1798年の戦時法「敵性外国人法」を根拠にテキサス州北部の移民を国外退去させようとする動きに対して、最高裁は阻止する判断を下した。

トランプ氏は何世紀も前の法律を使い、何千人もの移民を速やかに国外退去させようとしているが、最高裁判事は、トランプ氏の行動が合法かどうか疑問を呈した。

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