元側近ボルトン氏 トランプ政権のイラン攻撃は「熟考の産物ではない」
トランプ米大統領の第2次政権発足後、米国は1月にベネズエラ、2月にイランと、立て続けに電撃的な軍事作戦を展開している。米国にはどのような壮大な戦略があるのか。あるいは、戦略など存在しないのか。長年にわたりイランの政権交代(レジームチェンジ)を提唱してきた強硬派の重鎮で、第1次トランプ政権では大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたジョン・ボルトン氏が、日経ビジネスの単独インタビューに答えた。トランプ政権の真の狙い、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席へのけん制、エネルギー市場への影響、そして不確実な時代を生き抜くために日本企業が取るべき道筋について、同氏の見解を聞いた。 【関連画像】ジョン・ボルトン(John Bolton)氏。元米大統領補佐官(国家安全保障担当)。レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュ、トランプの歴代共和党政権で、国務次官(軍備管理・国際安全保障担当)や国連大使など外交・安全保障の要職を歴任。米国の国益と安全を最優先する強硬派(タカ派)として知られ、イランや北朝鮮に対する強硬姿勢や体制転換(レジームチェンジ)を長年主唱。著書に『ジョン・ボルトン回顧録 トランプ大統領との453日』(朝日新聞出版)など。 米・イスラエルによるイラン攻撃について、日本では中国への原油供給を断ち、米国の新兵器を誇示することで、数週間後に予定されている中国の習国家主席との会談に向けて有利な立場に立つことが真の狙いではないかと疑う声があります。 ジョン・ボルトン氏(以下、ボルトン氏):私の答えは「ノー」です。もちろん、それらすべてが事実である可能性はありますが……。 ホルムズ海峡の通航は基本的に不可能になりましたし、最初の数日間で、米軍はその能力のすさまじさを示すことができました。もしこのまま軍事作戦が続けば、3月末から4月上旬にトランプ氏が習氏を訪問する際、習氏は非常に注意深く事態を受け止めることになるでしょう。 しかし、トランプ氏は壮大な戦略的観点から物事を熟考しているわけではなく、目の前にあることについて考えているだけだと思います。イランは核兵器を放棄することに今まで一度も真剣にならなかった。交渉は成功しないだろうし、制裁も機能していない。最終的な唯一の答えは政権交代(レジームチェンジ)だ、という主張が(側近から)彼に伝えられ、それが決定の基礎になったのだと私は見ています。 中国とは麻薬鎮痛剤オピオイドの問題やレアアース問題など、解決しなければならない課題が数多くあります。今回のイランへの攻撃と対中国の思惑は関係していないのでしょうか。 ボルトン氏:彼の中国との関係は少し複雑なのです。(表向きには米中の対立が激化している中で)彼は自分と習氏が「良き友人」だと信じています。彼は1期目にも、知的財産の侵害や不公正な貿易慣行を放棄させるため、中国と「歴史上最大の貿易協定を結べる」と思っていましたが、うまくいきませんでした。 トランプ氏は今回の訪中で「歴史上最大の貿易協定を結んだ」と発表できるようにしたいはずです。それが彼の主な動機なのですから。 ところが彼は今、非常に難しい事態に直面しています。中国は自国が持つレアアースの重要性を知っていて、過去にはその出荷停止を脅しに使ってトランプ氏による初期の関税の取り組みを打ち破りました。現在、トランプ氏は米連邦最高裁で敗北して最初の関税が無効となり、(関税措置が)5カ月しか続かない通商法第122条という別の法律の条項を試していますが、これにも異議が申し立てられるでしょう。これらすべてが、残り1カ月を切った中国訪問の大きな焦点になることは間違いありません。 ●台湾巡る危惧と、同盟国への「事前相談なし」という失態 1月にはベネズエラのマドゥロ大統領を拘束し、今回はイラン指導部に壊滅的打撃を与えました。習氏や北朝鮮の金正恩総書記はどう反応するでしょうか。台湾有事への影響は。 ボルトン氏:米国と敵対する権威主義国家は皆、これ(トランプ氏による軍事作戦)を心配しなければなりません。マドゥロ氏を捕らえた非常に大胆で成功裏に終わった作戦は、中国と北朝鮮を大いに心配させていることでしょう。 台湾については誰もが危惧すべきです。台湾島内では、トランプ氏の中国訪問が近づき、「歴史上最大の貿易協定」を結びたいという彼の欲求から、「台湾の独立に反対する」と言うなどして、台湾に関して譲歩するのではないかとの懸念が強まっています。トランプ氏にとっては重要とは思えず、あるいはその重要性を十分に理解していないと考えられるからです。戦略的曖昧さを取り除き、「外部からの侵略に対して台湾を防衛する」とトランプ氏が明言した方がいいのですが、トランプ氏はそれを理解していないかもしれません。台湾が米中首脳会談の主要なテーマの一つになることは間違いありません。 今回のイラン攻撃は非常に迅速でした。トランプ氏の決定をどう評価しますか。 ボルトン氏:これまでのところうまくいっていますが、米国民に(あらかじめ十分な情報を与えて)準備させず、自国の議会にも相談しなかったのは間違いでした。同盟国にも相談しなかったため、誰もが驚いてしまったのです。現在協議を始めていますが、日本のような重要な同盟国とは、戦争が始まる「後」ではなく「前」に相談すべきだったと思います。 さらに重要なミスは、イランの反体制派に十分に事前相談しなかったことです。最終的にイランの権力は彼らの手に渡るのですから、彼らのゲームプランや内部状況の評価を知る必要がありました。現在、イラクにおける2人の重要なクルド人指導者である(クルド人自治政府首相の)バルザニ氏と(クルド愛国同盟議長の)タラバニ氏と話すなど、対話は始まっていますが、攻撃前に行うべきでした。