韓国大統領選挙、保守陣営は厳しい戦い…「反李在明」で結束できず

 【ソウル=小池和樹、依田和彩】韓国大統領選(6月3日投開票)は12日、22日間の選挙戦に突入した。支持率で独走する左派系最大野党「共に民主党」の 李在明(イジェミョン) 前代表(60)に対し、「反李在明」を掲げる保守陣営の候補は結束して追い上げる姿を示せず、厳しい戦いとなっている。

選挙集会で演説する李在明氏(12日、韓国・ソウルで)=ロイター

 李在明氏は12日、ソウル市中心部の広場で「内乱の首謀者を裁判へ送り、大統領職を 剥奪(はくだつ) したが憲法を無視する政党の第2、第3の内乱は続いている」と声を張り上げ、 尹錫悦(ユンソンニョル) 前大統領を支えた保守系与党「国民の力」を批判した。

【図解】韓国大統領選の構図

 李在明氏は、党代表やソウル近郊・ 京畿道(キョンギド) 知事など豊富な政治経験が武器。2022年の前回大統領選では党内を固めきれずに尹錫悦前大統領に0・73ポイント差で惜敗した。今回は盤石な党内基盤に加え、尹氏弾劾の勢いに乗って中道・無党派層に手を伸ばしている。

 被告人として5件の刑事裁判を抱える李在明氏は、司法リスクが懸念材料だった。とりわけ、公職選挙法違反事件の差し戻し審は、判決が確定すれば被選挙権を剥奪される恐れがあった。しかし、ソウル高裁での初公判を5月15日から大統領選後に延期するよう求める申請が7日に受け入れられ、有利な状況が整いつつある。

 「国民の力」の 金文洙(キムムンス) 前雇用労働相(73)は12日朝、ソウル市内の市場で「政治は算数ではなく、非常にダイナミックだ。必ず勝つ」と巻き返しへの決意を述べた。

 金氏は戒厳令を宣布した尹氏の 弾劾(だんがい) に反対の立場を貫き、保守層から熱烈な支持を受ける一方、尹氏への反感が強い中道層の取り込みは難しいとみられている。尹氏と距離を置く 韓東勲(ハンドンフン) 前党代表(52)らも金氏の姿勢を批判している。

 党執行部は、左右両政権で首相や駐米大使を歴任した経済通の 韓悳洙(ハンドクス) 前首相(75)への公認候補差し替えにより中道層を取り込む勝利シナリオを描いたが、金文洙氏と衝突して失敗した。韓悳洙氏に期待した穏健保守層に失望感が広がるだけでなく、党内分裂が深刻化し、苦しい滑り出しとなった。

 しかも、金文洙氏は、保守系野党「改革新党」から立候補して若者や中道層からの支持を伸ばす 李俊錫(イジュンソク) 議員(40)と保守票を食い合う構図だ。金氏の勝利には候補一本化が不可欠だが、李俊錫氏は12日、「私は彼ら(国民の力)とは違う。一本化のショーではなく、正面突破の勝負をする」と突き放した。

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