タカが道路の信号を利用して狩りをしていたことが判明
by Peter Miller
テネシー大学の動物行動学者であるウラジーミル・ディネッツ氏が、北アメリカ原産の中型猛禽類であるクーパーハイタカ(Accipiter cooperii)が都市部で越冬する際に、道路の信号や歩行者用の音響信号を利用して狩りを行っていた様子を観察したと報告しています。
Frontiers | Street smarts: a remarkable adaptation in a city-wintering raptor
https://www.frontiersin.org/journals/ethology/articles/10.3389/fetho.2025.1539103/fullStreet smarts: how a hawk learned to use traffic signals to hunt more successfully
https://www.frontiersin.org/news/2025/05/23/street-smarts-hawk-use-traffic-signals-hunting この観察は2021年11月から2022年3月の平日朝、計12時間にわたってアメリカ合衆国ニュージャージー州ウェストオレンジの特定の交差点で行われ、6回の攻撃試行が記録されました。 その結果、ディネッツ氏は、クーパーハイタカの幼鳥が、交差点の赤信号で停止する車の列を隠れ蓑として利用し、民家の前に集まるイエスズメやナゲキバトなどの小鳥の群れに接近して狩りを行っていたと報告しています。by Rhododendrites 特筆すべきは、タカが歩行者用信号機の音響信号を学習していた点です。この音響信号が鳴るときは赤信号の時間が通常よりも60秒長くなるため、結果として車の列もより長く伸びやすくなります。タカは、この音響信号を聞くと狩りの準備を始め、車の列が特定の長さに達するのを待ってから攻撃を仕掛けていました。 この行動は、タカが獲物の位置を直接視認できない状況でも狩りを成功させるために、周辺地域の正確なメンタルマップを持っていること、そして信号音と交通パターンの変化という複雑な関連性を理解していることを示唆しているとディネッツ氏は論じ、このタカが都市部に来てまだ間もない若い個体であった可能性が高いことから、この適応能力は非常に注目に値すると述べています。 2022年の冬には、同じ場所で成鳥のクーパーハイタカが同様の狩りを行うのも観察されていますが、これが同じ個体であるかは断定されていません。その後、信号機の音響信号が故障し、餌場となっていた家の住人も引っ越したため、この行動は観察されなくなりました。
鳥類が車両を利用する例は他にもあり、例えばカラスがクルミなどを道路に落として車に割らせる行動、腐肉食性の鳥が車にひかれた動物を食べる行動、小鳥が猛禽類から逃れるために走行中の車を盾として利用する行動などが知られています。また、ウクライナでは、ハイタカ属のタカが移動する車や路面電車を隠れ蓑にして狩りをすることが報告されています。 ディネッツ氏はクーパーハイタカの例について、「このような高度な状況理解と人間の交通パターンの利用は、野生動物においてはこれまで報告されたことのないレベルである」と指摘しています。
by Don Owens
なお、ソーシャルニュースサイトのHacker Newsでは、「小型飛行機を駐機場に向かわせると無線で連絡すると、まるでその無線を聞いていたかのように動線上にいた鳥が一斉に飛び去ったことがある。おそらく飛行機の動きをよく見ていて学習していたのかもしれない」「渡り鳥は道路や鉄道、送電線などのインフラをルートマーカーとして利用することが多いらしい」といったエピソードも紹介されています。
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