プリツカー賞を受賞した山本理顕は「建築家に傲慢さは不要と教えてくれる」

Photo: AP/Aflo

Text by COURRiRER Japon

1 山本理顕(建築家) 2024年、「建築界のノーベル賞」と称されるプリツカー賞の受賞者に山本理顕が選ばれ、米「ニューヨーク・タイムズ」紙が山本の作品が愛される理由に迫った。同賞の審査員は、山本をこう称えている。 「個人住宅であれ、公共インフラであれ、学校、消防署、市庁舎、美術館であれ、彼の設計には常に公共的で友好的な側面がある。コミュニティに対する彼の絶え間なく、慎重かつ実質的な配慮は、人々がさまざまな方法で集うきっかけとなる公共のインターワーキング(相互作用)スペースのシステムを生み出した」 屋根があるだけで壁がないオープンエアの別荘、透明な建物9棟がテラスでつながり、教室から別の教室までが見渡せる大学──こうした不思議な空間を手掛ける山本は「パブリックとプライベートの領域の境界をなくしたい」と語る。そんな彼はまさに「透明性、機能性、利便性を融合する」とニューヨーク・タイムズは賞賛した。また同紙は、山本の作品だけでなく彼の生い立ちについても触れた。
1945年に中国で生まれ、日本で育った山本は、5歳のときにエンジニアだった父を亡くした。その後父のキャリアを模範にし、建築の道を進んだという。17歳のときに奈良の興福寺を訪れた彼は、地・水・火・風・空の要素を象徴する五重塔に魅了された。山本は同紙にこう話している。 「とても暗かったのですが、月の光に照らされた木造の塔を見ることができました。それが私の建築の原体験でした」 こうして山本は1968年に日本大学を卒業し、3年後に東京芸術大学で建築学の修士号を取得。1973年に事務所を設立した。その後、戸建て住宅から公営住宅の建設に軸足を移していったという。 さらにニューヨーク・タイムズは、建築家グレアム・マッケイの言葉を引用し、こう評価した。

「どういうわけか私たちは、建築家は善良で傲慢でなければならないと教えられ、傲慢さが善良さの条件であると誤って信じている。私は、山本理顕と彼のキャリアから、それが真実ではないことを説きたい」

2 奈良美智(画家・彫刻家) スペイン・ビルバオにあるグッゲンハイム美術館で、奈良美智の展覧会が企画された。その後、ドイツのフリーダー・ブルダ美術館とロンドンのヘイワード・ギャラリーを巡回する。欧州では初となる奈良の展覧会に、スペイン「エル・パイス」紙が注目。「世界で最も模倣されるアーティスト」として紹介した。 3 渡辺敬子(フラメンコ衣装デザイナー) いまから50年前、フラメンコ衣装デザイナーを目指すため、日本に家族を置いて単身でスペインへと渡った渡辺敬子。現在85歳となった彼女が「最後の日本への一時帰国」をするということで、スペイン「エル・パイス」紙が注目。彼女の日本滞在に同行した。 4 IKENOBOYS(華道家) 華道家元池坊の華道を学び、いけばなの魅力を伝える19名のイケメン男子グループIKENOBOYSにオーストラリアのメディア「ABCニュース」が注目した。現在、いけばな人口は女性が大部分を占めているが、500年前までは男性中心の産業だったと説明する。

5 アバンギャルディ(ダンスチーム)

「制服を着た謎の集団アバンギャルディ」が9月に来韓し、韓国紙「朝鮮日報」が公演の様子とインタビューを掲載。「同じ服装で同じ髪型、一寸の誤差もない統一された振付で踊る彼女たちに、観客らは視線を離せなかった。そろったダンスだけでなく、独特の表情も魅力だ」と絶賛した。

6 オノ・ヨーコ(前衛芸術家)

ロンドンの「テート・モダン」で展覧会を開催。仏「リベラシオン」紙は、「ビートルズのメンバーである夫の陰に隠され、誤解されてきたパフォーマンスアートの先駆者の作品に、ようやくスポットが当てられた」と評価した。
7 隈研吾(建築家) ルースト・グルベンキアン財団がポルトガル・リスボンに構える文化複合施設を拡張した。その近現代美術館「Centro de Arte Moderna(モダンアートセンター)」を手掛けた隈研吾が完成記念で現地を訪れ、スペイン「エル・パイス」紙がインタビュー。同紙は、この建築によって、隈が「現代において最も影響力がある建築家の一人であることを再び証明した」と称賛した。

8 片山真里(現代芸術家)

「義足のアーティスト」として知られる片山真里が、スペイン・マドリードでおこなった展示会にスペイン「エル・パイス」紙が注目。「自分の障がいには興味がない」と断言する片山のインタビューを掲載した。 9 関口格(オルガン職人) 火災から5年の月日を経て、パリのノートルダム大聖堂の一般公開が始まり、再び人々を受け入れはじめた。そのパイプオルガンの修復を手掛ける職人の一人が、関口格(いたる)だ。10歳の頃に聞いたノートルダムのオルガンの音色が忘れられず、20代でフランスに渡り、オルガン職人への道を歩みはじめた。関口の並々ならぬ熱意を、仏誌「レクスプレス」が紹介した。

10 阿部千登勢(ファッションデザイナー)

米「ワシントン・ポスト」紙が、日本のファッションブランド「sacai(サカイ)」の創業者でデザイナーの阿部千登勢を「あなたの知らない最もパワフルなデザイナー」として紹介。「高級ファッションを現代女性の生活様式に合わせる能力という点で、彼女はココ・シャネルに通じるものがある」と評価した。

\新春「年割」キャンペーン中/

関連記事: