「簗農水相、直ちに更迭すべきだ」 高市内閣・党役員人事の評価―山崎拓氏に聞く

 高市早苗首相(自民党総裁)の内閣改造・党役員人事をどう評価するか。簗和生農林水産相の「予算カット」発言に対し、高市首相は任命権者としてどう対処すべきか。元自民党副総裁の山崎拓氏はこのほど、内閣改造人事などについて、時事通信のインタビューに応じた。「予算カット」発言を報じられた簗農水相については、「直ちに更迭すべきだ」と述べた。主な発言は次の通り。(一部敬称略、時事通信解説委員 村田純一)

(山崎氏へのインタビューは10月1日、都内の事務所で行われた。簗農水相の「予算カット」発言(※)については、インタビュー後の5日に電話で追加質問した。以下はそのやり取り)

―簗氏の「予算カット」発言を受け、高市首相はどうすべきか。農水相は辞任すべきか。

 直ちに更迭すべきだ。国会で追及される前に、今のうちに更迭しなければ、国会審議が円滑に進まない。

―簗氏は5日午後、国会内で記者団に対し、予算カット発言を撤回し、陳謝した。高市首相から「職責を全うするよう」指示されたとして、続投の意向を示しているが。

 要は国会運営がどうなるかだ。野党の出方次第でもある。どうせ野党は簗氏を追及し、農水相辞任を迫るだろう。それに対し、首相がどう判断するかだ。

(※予算カット発言=簗氏は、衆院選で自身を支援しなかった首長がいる地元・栃木県の自治体の道路予算を「大幅にカットした」との発言を認めた上で、発言を撤回し、陳謝したが、辞任は否定した)

以下、10月1日インタビューでの主な発言

◆総裁選向けライバル封じ込め

―第2次高市改造内閣と自民党新役員の顔触れをどう見たか。

 特に何も驚かない。中核はほとんど留任だから。

 反旗を翻した形になったのは林芳正(前総務相)だけで、あとは皆、高市に従順だったから(留任)。今回の人事は来年の総裁選の布石だ。内閣改造によって、茂木敏充(外相)、小泉進次郎(防衛相)、小林鷹之(政調会長)の3人のライバルを封じ込めたということだ。

 本当に封じ込めたのかどうかは分からない。彼らは総裁選に出ようと思ったら出るだろう。小林、茂木は総裁選に多分出ないと思うけど、小泉は分からない。オヤジ(小泉純一郎元首相)は止めると思うけど、オヤジの言うことは聞かないと思うから、出るかもしれない。だが、閣僚を続けることは彼とってはマイナスになるかもしれない。

◆小泉防衛相は「はまり役」

―防衛相留任は喜んでいるように見えるが。

 進次郎には「はまり役」ですよ。ああいうタイプの人物を自衛隊員は好む。きりっとしているから。自衛隊員は男らしい男の大臣を好む。いざという時は命懸けだから。進次郎は、はっきりと言うことは言うし、姿勢がきちんとしている。男らしさを全面に出すから、自衛隊向きの大臣だ。

 加藤紘一(元幹事長)は私の盟友で、同期で一人だけ第1次中曽根内閣の防衛庁長官として入閣した。第2次中曽根内閣で防衛庁長官の加藤を留任させた時、「われわれ同期の中でなぜ加藤だけを優遇するのか」と聞いたら、中曽根さんは「『加藤の憲法思想を改造しなければいけないから、留任させてくれ』と、大平正芳(元首相)に頼まれた」と言っていた。

 「いつまでも、憲法9条を守らなければいかんとか言って、非武装中立的な考えを持っていたので、それを改めてもらわないと、将来総理にはなれない」と、大平が中曽根に言った。加藤は防衛庁長官を1年間やったが、リベラル的な考えが全然変わらなかった。中曽根が「宏池会(大平派)から誰を閣僚に入れるか」と相談した時に、加藤の留任を頼まれたんだ。

 これに対し、小泉進次郎は全くリベラルじゃないということを体現している。勇ましいことを何度も発言している。

―小泉さんは目立つことが好きなようにも見える。

 勇ましいことを言うと目立つから、はまり役ではある。だから喜んで留任している。だけど、自分で自分の足を引っ張っている面もある。彼は外相になるべきだ。彼は自民党三役も重要閣僚も経験したことがない。総裁候補として経歴から言うと有資格者じゃない。

 田中角栄(元首相)は、党三役(幹事長、総務会長、政調会長)のうち二つと、大蔵相(現財務相)、外相のうちどれか一つを経験しなければ、総理大臣にはなれないと言ったことがある。その基準から言うと、小泉は全く当てはまらない。むしろ茂木の方が当てはまる。彼は幹事長も外相も経験した。

 高市は政調会長をやり、総務相もやったことがあるが、経歴で言えば総理・総裁候補としてはまだ不十分だった。小泉はもっと不十分だ。

◆林前総務相は閣外で「正解」

―林芳正を総務相から閣外に出した人事をどう見るか。

 林が閣外に出たことは正解だったと思うが、本人の本当の気持ちは分からない。逡巡(しゅんじゅん)したと思う。

―林さんは優柔不断なところがあると見られている。

 確かに優柔不断なところがある。

―参院議員から衆院議員にくら替えしたが、その前にいろいろ決断は遅れたという。今も総裁選で戦う姿勢は見せていないが。

 「お坊ちゃん」(二世議員)だから。今の政治家はおおむね、お坊ちゃんばかりだけど。

―いろんな閣僚(防衛相、外相、農水相、官房長官など)をこなし、政策に詳しく、能力は高いが、「パッション(情熱)、闘争心、意欲」がなかなか見えないと指摘される。

 昔、大平の娘婿だった元衆院議員の森田一から林芳正に会ってくれと頼まれたことがある。参院議員だった林と森田と3人で赤坂の料亭で会った際、私から「参院から衆院に変わりなさい。無所属でもいいから衆院選に出て、(旧山口4区で)安倍晋三と戦いなさい」と言ったことがある。「そうしなきゃ、あなたの将来はない。(無所属で当選して)自民党に復帰し、総理総裁の座を狙いなさい」と言った。

 「参院議員から総理大臣が出たことはないから、衆院選に出る覚悟がなければ総理大臣は無理だ」という話をしたことがある。林は黙って聞いていたが、私の助言は結局、無視された。

 だいぶ前のことだ。その後、事情が変わって、林は他の選挙区(旧山口3区=当時、河村建夫元官房長官の地元)から出たが、林は当初(旧山口4区の)下関にこだわっていた。

◆国会対策を懸念

 ―自民党の参院幹事長・石井準一を更迭し、衆院の国対委員長を梶山弘志から村井英樹に代えた人事をどう見るか。

 梶山は三役の総務会長になったが、梶山にとっては悪い人事じゃない。いつまでも国対委員長のままだと将来性がない。不幸中の幸いだ。

 問題は村井を国対委員長にしたことだが、財務省出身の村井は政策面では役立つが、国会対策(国対)では役に立たないだろう。国対委員長の仕事というのは、私もやったことがあるが、「ポリティシャン(politician)の仕事」であって、「ステーツマン(statesman)の仕事」じゃない。村井はよく言えば、ステーツマンだ。彼には会ったことも話したこともないが、イメージから見ると、ポリティシャンのタイプじゃない。

―ポリティシャンとは、根回しや調整にたけた、泥仕事の似合うタイプの政治家か。

 そう。政治的な駆け引きができるタイプかどうかだ。国対は与野党の人脈を駆使した政治的な駆け引きの世界であって、政策論を戦わせる世界ではない。指揮官は幹事長だ。国対委員長は幹事長の隷下にある。

 だけど、幹事長は鈴木善幸(元首相)の息子、俊一だ。国会運営を指揮・監督できるような人材ではない。村井が役に立つか、果たして高市の期待に応えられるかどうか、そのうち分かる。

―国会で与野党調整がなくなりかねないと危惧する声もある。野党の声を聞かず、与党側だけで審議日程も採決も決めてしまうのではないか。衆院では、野党欠席のまま審議することもあり得るのではないか。

 そんなことしたら、国会がストップする。国会で法案の審議ができなくなり、衆院で強行採決すればマスコミをにぎわして、内閣支持率は暴落する。

―少数与党の参院では、審議日程の調整も法案成立の見通しも不透明となるが。

 参院でも法案は通らない。それで衆院に戻して、(出席議員3分の2以上の)強行採決で再可決しようという無理をやっていると、国対委員長の責任になり、高市首相の責任問題にも「飛び火」する。野党の声を無視して、どんどん審議を進めればいいと思っているようだと、国会運営は失敗する。国対委員長は、財務省出身のエリートにはできない仕事だ。ペーパー試験の問題を解く話とは異なる。

【外交問題】

◆日本は外交孤立?

―日米首脳会談(9月22日)、米中首脳会談(同24日)をどう見たか。米中首脳が接近し、日本は今後、孤立感を深めることになるとの見方もあるが。

 高市首相は日中対話の必要性を強調するが、現状では、日中首脳会談はできないということ。

―11月に中国でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、12月に米フロリダ州で20カ国・地域首脳会議(G20)が開かれ、その場で米中首脳が会談する見通しだが、日中首脳会談を模索しても無理か。

 できないと思う。岩屋毅前外相がせっかく訪中して、王毅(共産党政治局員兼外相)らに会ったけど、別に高市首相のために会いに行ったわけではない。王毅は習近平国家主席の意を体しているが、習近平に日本のことについて助言する立場ではない。習近平と王毅の立場は断崖絶壁のように違う。王毅が登って、習近平の下にはせ参じて助言できる関係じゃない。王毅は、(習近平に)びくびくして、今の地位をどう保全するかに懸命だろう。王毅は日本をかばうようなことは決して言わない。

 APECにおいても、G20においても、高市と習近平との会談はないと思う。立ち話もないと思う。

◆米中は第2次大戦中の「同盟国」発言

―米中が第2次大戦中の「同盟国」として戦った歴史を両首脳が語り、振り返っていたこと、ホワイトハウスの発表文書にも書かれていたことをどう受け止めるか。

 トランプの認識不足だ。蒋介石の中華民国と毛沢東の中華人民共和国は違う。米中が共に戦ったのは蒋介石政権だ。蒋介石は毛沢東と戦い、その後もそれぞれ政権の対立関係は続いている。中華人民共和国と米国が同盟関係になったことは一度もない。トランプは、中華民国と1949年に誕生した中華人民共和国の区別がついていないと思う。

―(中国国民党と中国共産党が協力した)「国共合作」があったから、米中同盟が過去にあったと、中国としては言いたいと指摘する声もある。

 米中が一緒になって戦ったという当時の中国は蒋介石政権で、日本も蒋介石政権と戦った。毛沢東政権とは戦ってはいないということだ。

◆高市政権で日中関係は改善せず

―高市首相は台湾有事発言後、中国との関係改善に向け何も行動しようとしていないが。

 高市首相が一番気にしているのは、国民の支持率だ。国民の反中意識が非常に高いので、今の高市発言を「よし」としている。高市首相には、日中関係を改善しようという気持ちがない。中国にもない。双方にないから、日中関係の改善は、高市が代わらない限り、ない。

 王毅は岩屋に、高市の台湾有事発言を「是正」するよう言った。岩屋はそれを高市には伝えていない。報道で伝わっているだけだ。大使館の通訳が会談に入っているから、外務省には当然報告が上がっている。外務省は高市に報告しているはずだ。

 高市は、自分の発言を撤回も修正もしない。修正すれば、国民の支持を失うと考えている。高市政権で日中関係の改善は望むべくもない。

【山崎拓氏略歴】

山崎 拓(やまさき・たく) 1936年、中国・大連市生まれ。早大第一商学部卒。福岡県議を経て、72年に衆院初当選、以後当選12回。防衛庁長官、建設相、自民党国対委員長、政調会長、幹事長、副総裁を歴任。2012年に政界引退を表明し、近未来政治研究会(山崎派)の会長を辞任した。引退後も石破茂前首相を支援するなど政治活動を続けている。

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