高市発言で日中関係悪化も、上海に行って分かった「中国が強気の態度」を取る理由(ダイヤモンド・オンライン)
高市早苗首相の国会答弁以降、日中関係が悪化する中で偶然にも上海に滞在しました。中国の景気低迷、独自のネット社会、EVの多さに絶句する一方で、なぜ中国が強気の態度を取るのかが垣間見えました。実体験を報告します。(トライズ 三木雄信) 【この記事の画像を見る】 ● 日中関係悪化の中、上海に滞在 11月12日から20日まで中国・上海に滞在していました。日中関係が日に日に悪化していたので、念のため「日本人だとバレないように」「できるだけ日本語をしゃべらずにいよう」と思いながら過ごしました。 周知のように悪化のきっかけは、11月7日に国会で高市早苗首相が「台湾有事」について「存立危機事態」になり得ると答弁したことです。これに対し、中国の薛剣在大阪総領事が「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」などと過激な内容をSNSに投稿しました。 中国政府は、高市首相の答弁について「内政干渉だ」と強く抗議。薛剣氏を擁護しました。さらに、中国国民に「日本への渡航を自粛せよ」と呼びかける事態になっています。 筆者は、海外の「エグゼクティブMBA」というプログラムで学び直しをしている最中で、上海での授業日程は1年前から決まっていました。約100人いる受講生の中で、日本人は4人のみ。ずらすわけにも休むわけにもいかず覚悟を決めて渡航し、無事に帰国しました。 そこで『三木雄信の快刀乱麻を断つ』連載の今回は、日中関係が悪化する中で感じた中国の景気低迷、独特なネット環境の不便さ、EV(電気自動車)はどれだけ普及しているのかなどについて実体験をリポートします。
● 渡航前から思い知らされた「デジタル鎖国」 実は、行く前の準備から大変でした。筆者は欧米を中心に海外には何度も渡航していますが、中国は20年ぶり。中国のインターネット環境がいかに特殊か、思い知ることになりました。 まず、大学から「授業で使う教材は全てパソコンにダウンロードしておくように」と言われました。通常、教材はオンラインに上がっていて、ネットにつないで必要なところを読めばいいだけです。それが、そもそもできません。なぜなら日米欧では当たり前のウェブサービスが、中国内では使えないものが多いからです。 そこで、VPN(Virtual Private Network、仮想専用通信問)の設定も済ませておきました。公共Wi-Fi利用時の情報漏えい防止や、安全な接続に役立ちます。このVPNを使えば、中国国内で使えないウェブサービスを使うことができます。 例えば、中国のホテルでWi-Fiに接続すると、Yahoo!Japanのトップ画面は見ることができても検索はできません。Goggle検索もできません。今や日常生活に欠かせないLINEや、X(旧Twitter)、Facebook、Instagramも使うことができません。私は最近、調べ物にはもっぱらClaude.aiというAI(人工知能)サービスを使っているのですが、それも使えませんでした。 スマホには、VPN付きのe-SIMを購入して設定していきました。e-SIMなら、物理的なSIMカードを差し替えなくても、通信キャリアの契約情報を端末内で書き換えて利用できます。これで中国内でも、今使っているサービスを使えると思って飛行機に乗りました。 ところが着いてから合流したクラスメイトに「中国で生活するなら中国のアプリをスマホに入れないと」と進言されます。中国でライドシェアのアプリを使うにはUberではなくDiDi(滴滴出行)が主流。PayPayは使えずWechatPayかAlipayを入れる必要がありました。 上海ではGoogleマップも不正確です。どのような仕掛けでそうなっているのか不明ですが、常に数十メートルから100メートルぐらいズレています。中国製のマップアプリでないと目的地にたどり着けません。