マールアラーゴ周辺の豪邸、トランプ政権が高額な賃料で借り上げ
トランプ米大統領のフロリダ州の私邸「マールアラーゴ」近くで、連邦政府が3軒の住宅を1330万ドル(約19億円)で借りている。同じパームビーチ地区で5年前に支払っていた賃料と比べると、大幅に値上がりしている。
米一般調達局(GSA)は2月、3軒の住宅についてリース契約を結んだ。同局の記録によれば、このうち2軒は4年間、残る1軒は5年契約で、いずれもマールアラーゴから2ブロック以内に位置している。
政権関係者は、この物件がどのように使用されるのかについては明らかにせず、賃貸契約に関する質問にも回答しなかった。
パームビーチという裕福なエリアとはいえ、賃料は際立って高額だ。
住宅市場に精通する開発・不動産の専門家によると、周辺の商業用不動産よりもはるかに高い賃料で賃貸されている。1平方フィート(約929平方センチメートル)当たりの賃料では、連邦政府が賃貸する不動産の中で最も高額な物件の一つだ。
また、トランプ氏の1期目の任期中、政府が借りていたパームビーチの2軒の住宅と比較しても、家賃は大幅に上昇している。
3軒のうち1軒は、2028年までの年間賃貸料が144万ドルだ。トランプ氏の1期目の最後の年に GSAが同じ物件を借りた際の年間賃貸料27万9821ドルの5倍以上となる。
GSAの元賃貸契約担当官ロン・ケンドール氏は、契約情報を見て、「この賃貸料は高過ぎるように思える。年間約150万ドル支払うなら、なぜ建物を購入しないのか」と疑問を口にした。
GSAで賃貸契約を担当したこともあるケーリー・フェルド米連邦捜査局(FBI)不動産専門官によると、連邦職員は政府高官の住居近くに物件を借りる必要があり、賃貸の選択肢は限られるという。それでもフェルド氏は、競争入札を経るべきだと主張。
「私がGSAのために締結した全ての賃貸契約では、市場調査が義務付けられていた。競争なしに手続きを進めるべきではない」と述べた。
詳細は明かさず
賃貸契約は、トランプ氏が政府全体の「無駄、肥大化、閉鎖性」を排除するための大統領令に署名した時期に結ばれた。その後、政権は少なくとも数万人の連邦政府職員を削減し、数十億ドル規模のプログラムを凍結または廃止した。
政権が借りたパームビーチの住宅は、トランプ大統領が現在主要な居住地としている高級住宅街にふさわしい設えだ。4700平方フィートの住宅には寝室5部屋、バスルーム6室、トイレ1室を備え、専用ビーチにつながっている。
2軒目には寝室5部屋、プールを備え、車2台を収容するガレージ近くには「スタッフ用アパートメント」もある。3軒目は、約15メートルのプール、2つの暖炉、高級キッチンが備わっている。
この3軒のうちの1軒を所有するベスナ・オルスナー氏は、以前も行政に別の住宅を貸していた。同氏はブルームバーグ・ガバメントに対し、値上がり後の賃料は地域にふさわしいと述べた。機密保持契約に署名したとして、賃貸契約の詳細についてのコメントは控えた。
他の物件の所有者は、コメントの求めに応じなかった。
GSA元職員のケンドール氏は、「年間家賃が物件の市場価値の7%に相当するのであれば、所有者にとっては公平な取引だ」と述べた。だが、現在パームビーチで政府に物件を貸している家主たちは「本来受け取るべき額の2倍を受け取っている」と同氏は指摘する。
ゴルフ場周辺でも
このパームビーチの3軒の住宅にかかる賃料は、年間で計330万ドルに達する。
2020年9月時点の記録によると、トランプ氏の1期目には、連邦政府がパームビーチにある2軒の住宅を年間計54万6783ドルでリース契約していた。バイデン前大統領の任期中には、同様にデラウェア州リホボスビーチにある4軒の住宅を年間計74万1275ドルで借りていた。
そして現在、納税者の負担はさらに拡大している。フロリダ州ジュピターにもトランプ氏所有のゴルフ場があることから、2軒の住宅が政権の賃貸対象となっている。
GSAの記録によれば、そのうちの1軒はトランプ・ナショナル・ゴルフクラブ内のタウンハウスで、賃料が年30万ドルが支払われている。地元の郡当局はこの物件の評価額を公表していないが、不動産情報サイトのレッドフィンによると、199万ドルで売り出されている。
もう1軒はジュピター・カントリークラブにあり、年間30万6000ドルでリースされている。この住宅は24年2月に約210万ドルで売却され、評価額は180万ドルだったという。
さらに、政権はニュージャージー州のトランプ・ナショナル・ゴルフクラブ・ベドミンスター近郊にある5ベッドルームの住宅もリース中で、その年間賃料は21万5000ドルに上る。
原題:Mar-a-Lago Bump: US Pays $13 Million in Rent to Trump Neighbors(抜粋)