停滞生きる若者に届いた高市氏の「言い切り」 政治学者が見た衆院選

解剖・高市現象

毎日新聞 2026/2/23 07:00(最終更新 2/23 07:08) 有料記事 2941文字
記者会見する高市早苗首相=首相官邸で2026年2月18日午後10時14分、尾籠章裕撮影

 先の衆院選で自民党は単独で316議席を獲得した。政党別の支持率ではそこまで高くない自民党が、歴史的な圧勝を果たしたのはなぜなのか。

 若者の投票行動に着目した駒沢大学の逢坂巌教授は、自民党への忌避感を高市早苗首相(党総裁)が「無力化」したと見る。

 高市氏の何が若者を引きつけたのだろうか。政治コミュニケーションが専門の逢坂教授に分析してもらった。

  <主な内容> ・小泉さん+田中さん ・「失われた30年」を生きる若者が見たもの ・高市氏の勝因は「言い切り」。では、野党の敗因は?

 ・政治学者が合法化を訴えるもの

党への忌避感 高市氏が「無力化」

 ――自民党が単独316議席という、歴史的な圧勝となりました。

 ◆予想を超えた地滑り的勝利と言っていいでしょう。ただ、その中身は過去の自民党の勝利とは質が異なります。

 石破茂政権末期の自民党支持率は過去最低水準にあり、党への不信感は極まっていました。通常なら、看板を掛け替えた程度では回復不能です。しかし、高市氏個人のキャラクターが、党への忌避感を「無力化」する現象が起きました。有権者は「自民党」に投票したのではなく、「高市早苗が何かをやってくれそう」と、地元の自民候補の名前を書いたのです。

 高市氏が首相に就任した2025年10月の段階から、すでにその兆候はありました。石破政権末期には自民党支持層、特に若年層の離反が顕著でしたが、高市氏に「表紙」が変わった瞬間、若者の支持が急激に跳ね上がりました。

 今回の選挙戦で彼女が演じたのは、かつての小泉純一郎元首相が持っていた「旧体制をぶっ壊す破壊力」と、田中真紀子元外相の「大衆に届く発信力」を併せ持つ、いわばハイブリッド型のキャラクターです。

 ――田中真紀子氏との共通点とは。

 ◆単なる発信力だけではありません。「女性の社会進出」という文脈です。

 かつて田中氏が女性層から強い支持を受けたように、高市氏もまた、男社会の自民党内で「ガラスの天井」を破ったロールモデルとして映りました。

 選択的夫婦別姓への反対姿勢などでリベラル層から、男性の基準に合わせて振る舞うことで男性社会のなかで地位を得る女性を称する「名誉男性」といった批判こそありますが、想像を絶する苦労をおくびにも出さず、笑顔で戦う姿が、閉塞(へいそく)感漂う日本で「新しいヒーロー」を求めていた層に刺さったのです。

若者の「乾いたリアリズム」

 ――特に若年層からの支持が際立ちました。現場で何が起きていたのでしょうか。

 ◆投票日直前の2月4~5日、学生にアンケートを実施し、71人から回答を得ました。そこから見えてきたのは、単なる熱狂とは少し違う、「乾いたリアリズム」です…

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