【米国市況】株が反落、中東情勢の緊張で原油急伸-ドル144円近辺

13日の米株式相場は反落。イスラエルによるイラン核施設への攻撃に対して、イランが報復措置に出たと伝わり、紛争激化への懸念が高まった。原油が急伸し、金は最高値付近で推移した。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5976.97 -68.29 -1.13% ダウ工業株30種平均 42197.79 -769.83 -1.79% ナスダック総合指数 19406.83 -255.65 -1.30%

  S&P500種株価指数の下げは1%を超え、今週の上昇分を全て失った。航空株と旅行関連銘柄が急落した一方、エネルギー銘柄と防衛関連株は上昇。

  イスラエルによる軍事施設と核関連施設への攻撃の報復として、イランは数百発のミサイルを発射した。中東地域全体を巻き込む可能性があり、世界市場を混乱させる恐れがある。イスラエルの13日未明の空爆では、イランの革命防衛隊の幹部らが殺害され、重要な軍事施設が深刻な損害を受けた。

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  ナベリアー&アソシエーツのルイス・ナベリアー最高投資責任者(CIO)は「長期的な影響は原油価格に及ぶ可能性がある」と指摘。「早期に改善しない場合、インフレ統計に悪影響を及ぼすことは間違いない」と述べた。

  プランテ・モラン・フィナンシャル・アドバイザーズのジム・ベアード氏は「原油がワイルドカードだ。特に現在の不確実な状況下で原油価格が持続的に上昇すれば、経済が克服すべき新たな障害となる可能性がある」と述べた。「過去24時間の出来事はそのリスクを高めているが、原油価格の持続的な上昇は依然として基本シナリオのようには見えない」と指摘した。

  さらに、イスラエルとイランの衝突が今後数日間で大幅に悪化せず、中東全般に拡大しなければ、原油相場は下落する可能性があると述べた。一方、紛争が拡大し、原油価格の持続的な上昇リスクが高まれば、既に減速傾向にある世界経済に一段と顕著な影響が生じる可能性があると分析した。

米国債

  米国債相場は反落。中東での紛争に伴う原油価格の急伸でインフレ懸念が再燃し、売り優勢に転じた。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.90% 5.7 1.17% 米10年債利回り 4.40% 4.3 1.00% 米2年債利回り 3.95% 4.0 1.02%     米東部時間 16時55分

  イスラエルのイラン空爆を受けて、深夜から早朝にかけては安全資産として逃避マネーの受け皿となっていたが、ニューヨークの取引時間帯になってその流れが反転。原油先物が急伸し、インフレ再燃により米金融当局が利下げに慎重な姿勢を維持するとの思惑が再び強まった。

  ウェルズ・ファーゴのウェルス・アンド・インベストメントのダレル・クロンク最高投資責任者(CIO)は「原油はインフレ抑制の追い風となっていたが、一転して逆風に変わった」とブルームバーグテレビジョンで述べた。

  コロンビア・スレッドニードルの金利ストラテジスト、エド・アルフセイニ氏は、今週の米インフレ指標と30年物入札を受けた「相場上昇と利回り曲線のフラット化で、金利水準の魅力が薄れている」と指摘した。

  国債への需要を占う上で次の試金石は16日の20年債(規模130億ドル)入札だ。先月の入札は財政懸念から不調に終わり、30年債利回りが5.15%に上昇した。17日に実施される5年物インフレ連動債(TIPS)入札への注目度も高い。

  地政学的な緊張が一段と高まる前は、利下げ観測が強まり、一時は年内2回の0.25ポイント利下げが完全に織り込まれていた。

  連邦公開市場委員会(FOMC)は来週の定例会合で、政策金利を据え置くと広く予想されているが、四半期ごとの経済予測とドットプロット(金利予測分布図)を公表する予定だ。前回3月の予測では、年内2回の利下げを予想していた。

  バークレーのストラテジストは金融当局者が2025年のインフレ予測を引き上げ、予想利下げ回数を現在の織り込みより少なくすると予想。来週は「タカ派サプライズ」に備えてポジションを構築するよう顧客に推奨した。

外為

  外国為替市場ではドルが上昇。イスラエルによるイラン空爆で原油価格が急伸し、中東地域での戦争拡大の懸念が高まったことを受けて買いが入った。

  円は対ドルで朝方に1ドル=144円48銭まで下げた。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1202.49 2.47 0.21% ドル/円 ¥144.04 ¥0.56 0.39% ユーロ/ドル $1.1541 -$0.0043 -0.37%     米東部時間 16時56分

  スチュアート・ジェンキンス氏らゴールドマン・サックスのストラテジストは「ブレント原油価格の上昇は、貿易面で明確な影響を与えている」と指摘。より広範なリスク回避の動きがあることも示唆されていると述べた。

  BMOグローバル・アセット・マネジメントのマネジングディレクター、ビパン・ライ氏は「ドルには短期的に上昇余地がある」と指摘。「既に大規模なショートポジションが構築されていたことが主因だ。状況が一段と悪化すれば、ドルのショートスクーズが起こる可能性がある」と記述した。

  さらに「事態がエスカレートした場合、原油価格が100ドルに達するとの見通しもあるが、その見方に異議は唱えない。貿易戦争の結果としての成長鈍化と物価上昇の流れを悪化させるだろう。これがまさに、広範な関税が市場に悪影響を及ぼす理由だ。なぜなら、このような予期せぬ潜在的ショックを増幅させるからだ」と記した。

原油

  原油先物相場は急伸し、約3年ぶりの大幅高となった。イスラエルによるイラン空爆を受けて、世界の原油生産の3分の1を担う中東地域で戦争が拡大するとの懸念が高まった。

  ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は7%余り値上がりし、2022年3月以来最大の上げを記録した。

  トランプ米大統領はトゥルース・ソーシャルで、「手遅れになる前に」合意するようイランに強く求めた。既に計画されている次の攻撃は「さらに過酷なものになる」と訴えた。

  今回の攻撃は、約20カ月にわたり原油市場の背後でくすぶっていた紛争が劇的にエスカレートしたことを意味する。これまでは著しい原油供給の減少には至っていなかったが、中東全般に衝突が拡大すれば、イランからの輸出減少の可能性に加え、ホルムズ海峡を通じた供給の制約で世界の原油流通ルートが大きく変わる恐れがあある。JPモルガン・チェースはその影響について、日量210万バレル超に及ぶ可能性があると試算している。

  CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は、「現時点では不確定要素の方が多いが、1つだけはっきりしているのは、これがイスラエルによる最後の行動ではないということだ」と指摘。「ボラティリティープレミアムをあまりに早期に売ることには慎重にならざるを得ない。紛争が長期化する可能性がある中ではなおさらだ」と述べた。

  コロンビア大学グローバル・エネルギー政策センターの上級研究員、カレン・ヤング氏は「イスラエルとイランの間の直接的な攻撃について、多くのアナリストは短期的な価格リスクと引き続きみている」と指摘。「しかしそれは全て、イランの対応次第」であり、この紛争の新たな局面がどれほど続くかに左右されると語った。

 ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前日比4.94ドル(7.3%)高い1バレル=72.98ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は4.87ドル(7%)高の74.23ドルで引けた。 

  金相場は大幅上昇。イスラエルとイランの衝突を受けて、両国の対立が中東地域での紛争拡大に発展するとの懸念が高まった。

  投資家の安全資産への需要により、金スポット価格は一時1.8%高。その後は上昇幅を縮小した。イスラエルのネタニヤフ首相は、「脅威」が排除されるまで作戦を継続するとしている。

  イスラエルはこの日もイランの核施設や軍指導部を標的に空爆を継続。一方、同国の国防軍によると、イランはイスラエル領に向けて相次ぎミサイルを発射し、反撃しているもようだ。

  サクソ・キャピタル・マーケッツのストラテジスト、チャル・チャナナ氏は「米軍基地が標的となる可能性も含め、イランによる報復のリスクは不確実性を高め、安全資産への資金流入を後押しする」と指摘。「市場がすでに緊張感に包まれ、リスクセンチメントが悪化する中、金は引き続き買い支えられる可能性が高い。紛争リスクに対するヘッジとしてだけでなく、インフレや市場のボラティリティーへの波及リスクに備える手段としても選好されそうだ」と述べた。

  UBSのグローバルアセットアロケーション共同責任者、マーク・ アンダーセン氏は「昨年半ばに金をポートフォリオに加えたことが恐らく最高の成果を生んでいる」とブルームバーグテレビジョンで指摘。「きょうのように中東情勢の緊張が高まる局面では支えとなり、債務不安やインフレ懸念といったリスクに対してもヘッジの役割を果たしている」と話した。

  スポット価格はニューヨーク時間午後2時49分現在、前日比51.69ドル(1.5%)上昇し、1オンス=3437.61ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は50.40ドル(1.5%)高の3452.80ドルで引けた。

原題:Stocks Sink, Oil Jumps as Mideast Tensions Build: Markets Wrap(抜粋)

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