【米国市況】S&P500は反落、30年債利回り5%台-ドル一時149円台
15日の米株式市場ではS&P500種株価指数が反落。米消費者物価指数(CPI)が比較的穏やかな内容となり、当初は買いが先行、S&P500種は節目の6300を上回る場面もあった。しかし、CPIは関税の影響に対する懸念を弱めるには至らず、下げに転じた。
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一方、ハイテク株は堅調。半導体大手のエヌビディアとアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、人工知能(AI)向け半導体の一部について対中輸出を再開する方針だ。
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株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6243.76 -24.80 -0.40% ダウ工業株30種平均 44023.29 -436.36 -0.98% ナスダック総合指数 20677.80 37.47 0.18%ウェルズ・ファーゴは下落。純金利収入の見通しを引き下げたことが嫌気された。JPモルガン・チェースは、投資銀行業務からの手数料収入が予想に反して増加したにもかかわらず下落した。一方、自社株買い計画を発表したシティグループは、2008年以来の高値を付けた。
6月のCPIは、食品とエネルギーを除くコア指数が5カ月連続で市場予想を下回った。ただ細部を見ると、企業が関税に伴うコストの一部を消費者に一段と転嫁し始めている状況がうかがえる。短期金融市場では年内の利下げ観測がやや弱まった。9月利下げ確率は現在、50%をわずかに上回る程度になっている。
リーガン・キャピタルのスカイラー・ウィナンド氏は「インフレ見通しにおける最大の問題は関税だ。関税の影響がデータに反映されるのに時間がかかっているが、関税主導のインフレ再燃が迫っている可能性は極めて高い」と指摘。「連邦準備制度理事会(FRB)は金利政策の判断を下す前に、今後数回分の物価・雇用指標を注視するだろう」と述べた。
ベッセント米財務長官は、パウエルFRB議長が2026年5月の議長任期満了時に理事からも退任すべきだとの考えを示唆。ベッセント氏自身が次期FRB議長就任の打診をトランプ氏から受けたことはなかったか尋ねられると、「自分は決定プロセスに関与している」と明らかにし、「これはトランプ大統領の判断であり、大統領のペースで動くだろう」と続けた。
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モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのエレン・ゼントナー氏は「関税がインフレに影響を及ぼしている最初の兆候が見られた。サービス分野のインフレは緩和が続いている一方、関税の影響を受けやすい財の価格上昇が加速しており、それは今後顕在化するもっと大幅な価格圧力の第1弾に過ぎない。連邦公開市場委員会(FOMC)はさらなるデータを待ち、政策金利を据え置く考えだろう」と述べた。
プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏は「関税の影響がインフレ指標に反映されるまでには通常数カ月かかる。また輸入の前倒しが非常に大きかったことから、実際に関税が適用された財はまだ少なかった可能性がある。関税によるインフレ押し上げは一時的なものにとどまるとみられるものの、新たな関税引き上げが発表されている現状を踏まえると、FRBとしては少なくともあと数カ月は様子見を続けるのが賢明だろう」と語った。
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米国債
米国債相場は下落(利回りは上昇)。CPIが比較的穏やかな内容となったため、当初は買いが入ったが、関税の影響に対する懸念を和らげるには至らず、当面は金利が据え置かれるとの見方から売りが優勢になった。
短期債主導で下落したが、長期債も下げ、30年債利回りは節目の5%を上回った。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 5.02% 4.4 0.88% 米10年債利回り 4.49% 5.4 1.22% 米2年債利回り 3.95% 4.8 1.24% 米東部時間 16時52分ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのケイ・ヘイグ氏は、基調的なインフレ率は依然として抑制されているものの、物価圧力は夏にかけて強まる見込みで、7月と8月のCPIが重要な節目になると指摘。「FRBは当面、様子見姿勢を維持するだろう。ただ、基調的なインフレ率が引き続き穏やかな水準を維持する場合、金融緩和再開の道は秋に開かれる可能性がある」と述べた。
TDセキュリティーズのオスカー・ムニョス、ジェナディー・ゴールドバーグ両氏は、最近の通商政策の動向を踏まえ、FRBはインフレの影響が徐々に顕在化する中、当面は忍耐強い姿勢を維持する見込みだと指摘。「この日のCPIでは、関税の転嫁がコア物価上昇率に反映し始めたことが示された。労働市場が引き続き堅調な限り、FRBは夏場にかけてインフレとインフレ期待の動向を見守る余裕がある。当社は引き続き10月のFOMC会合での緩和開始を見込んでいる」と述べた。
外為
外国為替市場では、ブルームバーグ・ドル・スポット指数が4日続伸。一時は6月23日以来の高値水準を付けた。CPIが早期利下げの根拠を示さなかったため、ドル買いが膨らんだ。
円は対ドルで一時、1ドル=149円02銭と、4月3日以来の安値を付けた。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1207.45 4.95 0.41% ドル/円 ¥148.86 ¥1.14 0.77% ユーロ/ドル $1.1601 -$0.0063 -0.54% 米東部時間 16時53分バークレイズの通貨ストラテジスト、スカイラー・モンゴメリー・コーニング氏は「この日のインフレ指標は、関税がコアの財価格に影響していることを示しており、その影響は今後さらに拡大する可能性が高い。利下げ余地を制限し、ドルを押し上げるだろう」と述べた。
マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は「これはハト派が望んでいたような弱い数字ではない」と語った。
ウェルズ・ファーゴのストラテジスト、アループ・チャタジー氏は、通商政策に関する混乱が続く中、FRBが「少なくとも9月まで」様子見に回れば、ドルにとって支援材料になると話した。
原油
ニューヨーク原油は続落。ドル相場の上昇が嫌気された。トランプ米大統領がロシアへの圧力を強めたものの、ロシアの輸出に歯止めをかける効果はないとトレーダーらはみている。
トランプ氏はこの日、インドネシアとの合意を匂わせていたが、記者団に対し同国からの輸入品に19%の関税を賦課すると述べた。ドルは上昇し、ドル建てで取引されるコモディティーの投資妙味が低下した。
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ナターシャ・カネバ氏らJPモルガン・チェースのアナリストは「ウクライナでの戦争が始まってから明らかになったのは、ロシアの商社や船舶会社、決済仲介業者を標的にした制裁では、ロシア産原油の流通を止められないということだ」とリポートで指摘した。
原油価格は一時的に上昇する場面も見られた。米エネルギー省のライト長官はこの日、戦略石油備蓄(SPR)の補充方法を工夫する方向で検討していると述べた。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物の最終取引を控えたプロンプトスプレッドのポジションが手じまわれたことも、相場を圧迫した。期先2限月の価格差である同スプレッドは、1バレル当たり約1.16ドルの逆ざやでこの日は安定している。逆ざやは依然強気パターンだが、14日のピークだった1.49ドルから有意に縮小した。
市場の関心は供給に戻りつつある。国際エネルギー機関(IEA)のリポートでは、サウジアラビアが6月に大幅増産したとしていたが、石油輸出国機構(OPEC)はこれに一部異論を唱えた。OPECのデータでは、サウジの産油量は規定の枠内に収まっている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物8月限は、前日比46セント(0.7%)安い1バレル=66.52ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント9月限は50セント(0.7%)下げて68.71ドル。
金
ニューヨーク金相場は続落。米CPIの発表後、FOMCは当面金利を据え置くとの見方が市場で広がった。ドルが上昇し、ドル建てで取引される金は米国外の投資家からみた魅力が低下した。
トレーダーは最新の貿易動向にも注意を払っている。トランプ米大統領は欧州連合(EU)を含め、貿易相手国との交渉を進めることにオープンな姿勢を示した。
金は年初から25%余り上昇し、4月には1オンス=3500ドルを超えて過去最高値を記録した。トランプ政権による攻撃的で予測不能な貿易政策に対し、トレーダーがヘッジを求めたことが背景にある。この上昇は3カ月前ほどから失速。高値圏での購入がちゅうちょされており、市場は新たに形成される貿易体制について不透明感の解消を待っている。
シティー・インデックスのマーケットアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は「貿易交渉が8月前にとん挫すれば、金は容易にこれまでの高値を試す、あるいは更新する可能性がある」と予測。「当面の市場はじっと様子を見守る姿勢のようだ。金価格の予想は慎重ながら強気に傾いている」と述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時27分現在、前日比17.12ドル(0.5%)安い1オンス=3326.39ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は22.40ドル(0.7%)下げて3336.70ドルで引けた。
原題:S&P 500 Wipes Out Rally as September Fed Bets Wane: Markets Wrap(抜粋)
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