不起訴の理由は「明かさない」 最高検が反省?広報ペーパーの波紋
地検は不起訴の理由を明らかにしていない――。新聞やテレビでよく見聞きするフレーズだ。実際に取材現場では、記者の質問に木で鼻をくくったような対応をする検事も少なくない。
最高検が12月、「不起訴処分広報の具体的運用について」と題したペーパーを報道機関に配布した。検察なりにこれまでの広報に思うところがあるようだ。
何かを変えようとしているのか。真意を探った。
芸能人と「裏金」で分かれる
10月、人気音楽グループの男性メンバーが不起訴となった。タクシー運転手を脅迫、暴行した容疑で書類送検されていた。
報道対応をする東京地検刑事部の幹部を取材したが、不起訴の理由を明らかにしなかった。
不起訴には主に3種類ある。
①罪の立証は可能だが検察が裁量で起訴を見送る「起訴猶予」
②罪を立証する証拠が足りず起訴すれば無罪の恐れがある「容疑不十分」
③罪の成立が認められない「容疑なし」
検察はどれに該当するかを必ず裁定する。そのため裁定主文と呼ばれる。
タクシー運転手の代理人弁護士は8月に記者会見を開き、男性メンバーとの間で示談が成立したことを公表していた。行為の有無は争いにならず、起訴猶予となる公算が大きかった。
しかし、刑事部幹部は取材に「諸般の事情を考慮した」と述べるだけ。
この結果、毎日新聞は「地検は不起訴の理由を明らかにしていない」と報じた。
検察が裁定主文を明らかにしていないことを伝える意図があった。
対照的に裁定主文を公表したケースもある。
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件だ。
東京地検特捜部の副部長は2024年1月、焦点となっていた清和政策研究会(旧安倍派)の幹部議員ら8人の処分について、「容疑なし」の不起訴にしたと答え、「共謀が認められなかった」と詳しい理由にも触れた。
国民の関心が高いから――。後に検察幹部は積極広報した理由を明かした。
最高検の「お達し」
不起訴理由(裁定主文)を言うのか、言わないのか。そこに明確な基準はない。
検察は公益性の軽重や関係者のプライバシーなどの要素を考慮し、あくまで裁量で決めてきた。
ただし、裁定主文を明らかにするほうが圧倒的に少なかった。
これに対して、報道機関側は、公訴権を有する検察はその行使の結果や理由について説明する責任があり、「知る権利」の観点から積極広報するよう毎年、申し入れてきた。しかし、検察から踏み込んだ回答はなかった。
変化が起きたのは25年11月だ。
最高検や法務省の幹部が集まる場に、全国の地検がオンラインでつながれた。そして、最高検幹部が危機感をあらわにした。
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