尾美としのり 10年ぶり「鬼平」の世界へ 故火野正平の後任で密偵・彦十役 固辞したけど…

10年ぶりの「鬼平」の世界。「気負わず溶け込めたら」と話す尾美としのり=東京都千代田区(石井健撮影)

尾美としのり(60)が、亡くなった火野正平の後任として「鬼平犯科帳」の「密偵、相模の彦十」役を務める。10日公開の映画「鬼平犯科帳 本所の銕/密告」(山下智彦監督)から登場する。

「いやいや、やらない、やらない」

実は10年ぶりのカムバック。尾美は、中村吉右衛門が鬼平を演じた前シリーズで平成28年まで28年の長きにわたり、火付盗賊改方の「同心、木村忠吾」役を演じた。

「鬼平犯科帳 本所の銕/密告」Ⓒ日本映画放送

「いやいや、やらない、やらない」。彦十役を最初は断った。

「『鬼平犯科帳』は、僕の中では終わった作品だからです」

吉右衛門から学び、松竹京都撮影所に育てられた。自分を作ってくれた愛着の深い作品。忠吾としてやりきり、もう触れないでおこうと決めていた。

歴代の彦十と比較されることも重荷だった。火野、長門裕之、三代目江戸家猫八…。中でも忠吾時代に共演した猫八の彦十が忘れがたい。

「僕の中で彦十さんっていうのは、江戸家猫八さん。猫八師匠を超えるのは難しいだろう」

だが、山下監督がわざわざ京都から面談にくるという。「そこまでしてもらって申し訳ない」と出演を決断した。

関係者には「〝猫八彦十〟に寄っちゃいますよ」と宣言してから撮影に臨んだ。

「べらぼう」にも生かされた「鬼平」

鬼平の若き日を描く「本所の銕」と、その後の悲劇の顚末(てんまつ)「密告」。鬼平は十代目松本幸四郎、青年時代は息子の市川染五郎が演じる。

「鬼平犯科帳 本所の銕/密告」Ⓒ日本映画放送

幸四郎の鬼平は令和6年放送の「本所・桜屋敷」を皮切りに、時代劇専門チャンネルと劇場用にこれまで7作が作られている。

「撮影初日が『密告』のラストシーン。もっと軽い場面でいいのにと思った」。10年ぶりだが、緊張して「楽しくなかった」と苦笑い。撮影は吉右衛門に倣い、ふんどしで臨んだ。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」も同様だった。

「大河では自由にやらせてもらったけど、あれも鬼平の経験が大きかったから」と振り返る。

気負いなく

6歳から児童劇団に入り12歳で俳優デビュー。「転校生」など大林宣彦監督作品で頭角を現した。

「鬼平犯科帳」は「尾美としのりを作ってくれた」と語る=東京都千代田区(石井健撮影)

鬼平の世界へのカムバック。気負いはない。

「60歳。相模の彦十を頑張ってやろうかなぐらいの気持ちですね。足跡を残そうとは思わない。うまく作品の中に入っていけたらいいな」

(石井健)

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