ドコモなど4社が設立した新会社が国立競技場の運営をスタート 今後の展望は?

 NTTドコモ、前田建設工業、SMFL みらいパートナーズ、日本プロサッカーリーグが設立したジャパンナショナルスタジアム・エンターテイメント(JNSE)は1日、国立競技場の運営事業を開始した。 【画像】JNSEビジネスデザイン部部長 田中洋市氏  JNSEは、国立競技場が持つ優位性を活かしつつ、新たな価値を掛け合わせることで、世界トップレベルのナショナルスタジアムを目指す。  本稿では、新たにJNSE代表取締役社長に就任した竹内晃治氏、代表取締役副社長の毛受宏之氏、取締役の櫻井稚子氏による囲み取材、およびJNSEビジネスデザイン部部長の田中洋市氏への個別取材の様子をお届けする。 ■ 囲み取材 ――国立競技場が本日から民間運営となった。改めて、現在の心境を教えてほしい。 竹内氏  私は昨日まで横浜アリーナの取締役を務めており、まだキャッチアップできていない部分もありますが、初の民営化となることは以前から承知しておりました。JNSEが9月に設立され、いよいよ本日から運営を開始しました。  これまでの準備に尽力してきた前代表の櫻井氏をはじめ、多くの関係者の努力により、この日を迎えられたことを嬉しく思います。加えて、本日NTTドコモグループの入社式がここで開催されることも、非常にタイムリーだと思います。  国立競技場はアスリートやスポーツファン、さらにはアーティストにとっても特別な場所です。そういう場所をこれから管理・運営できるということに本当に緊張感とワクワク感を持って本日を迎えたというところです。 ――今後どういったところに、ドコモとのシナジーが現れてくるのか。 竹内氏  国立競技場を預かる身としては、ドコモが主要なリーダーとして、データマーケティングやお客様の動向分析など、リアルなスタジアムを通じた新たなスマートスタジアムの形を実現していきたいと考えております。  ドコモという新たな業種の方たちが入ることによって素晴らしい化学反応を起こすのではないかと期待しています。ドコモの技術や顧客創造力を活用することで、国立競技場のファンを増やしていけると思っています。 ――新たな魅力や、新しいショップなど現時点で話せることはあるか。 竹内氏  具体的な情報は、今後リリースを通じて発表いたします。  ただ、我々が初の民間での運営をやるということで、今まで日本スポーツ振興センター(JSC)が、国立競技場でしっかりと培ってきた伝統と文化を受け継いで、なおかつ、民間ということで使命としては収益を拡大しなければならないし、運営の効率化を図ることによって、利益を出していくことがひいては、利用者の方やファン・来場者の方、周辺の人達が長く国立競技場を愛していただけることになると思っています。  そういう意味では、積極的に興行を誘致してまいります。スポーツイベントやアーティストのライブはもちろんのこと、企業のイベントなど、多様な用途での利用を促進したいと考えています。  また、VIPルーム・スイートルームを拡充し、より快適な観戦・利用環境を提供することで新たな収益源を確保します。さらに、スポンサーとの連携を強化し、共に新たな価値を創造していきたいと考えております。ホスピタリティ部門も強化し、飲食や空間演出など、来場者の皆様にご満足いただけるサービスを提供することで、新たな収入に繋げてまいります。 ――国立競技場の名称について、サッカーファンの間で不安の声がある。 竹内氏  ネーミングライツについては、世界的には広く行われていることと認識しており、そういった声があることも承知しております。我々としても、ネーミングライツを導入することで、スポンサーにとって国立競技場をアピールする大きなチャンスとなり、結果的に国立競技場の価値向上にも繋がるのではないかと考えています。 ――IOWNや新しいLEDビジョンの導入について、今年度は工事を進める予定か。 毛受氏  はい、今年度は工事を進め、2026年度頃にはすべてスタートしたいと思っています。 櫻井氏  IOWNは、国立競技場と、IGアリーナ、ジーライオンアリーナ神戸、有明アリーナと連携させ、新たな活性化を図っていきたいと考えています。 ■ 個別取材 ――ドコモのご出身とのことですが、改めてドコモがアリーナや競技場の運営に携わる意義や、ドコモだからこそできることについてお聞かせいただけますでしょうか。 田中氏  はい、私自身は入社以来NTTドコモに勤めてきました。本日、ドコモが代表企業となるJNSEが国立競技場の運営を開始し、この場所で入社式が行われることに、非常に気持ちが高まる思いです。  ドコモがスタジアムやアリーナの運営に関わり始めたのは、愛知国際アリーナ(IGアリーナ)の公募が始まる少し前の2018年頃からです。当時、通信事業に加え、スポーツやエンターテイメントの領域に注力していくという戦略があり、単に通信回線を提供するだけでなく、自社でコンテンツを制作していく必要性を感じていました。その一環として、吉本興業と共同で設立したドコモ スタジオ&ライブを通じて、アーティストやタレントの育成、そしてJリーグワールドチャレンジのようなイベントの主催などを行ってきました。  コンテンツを提供する上で、その「場」であるアリーナやスタジアムの運営にも自ら手を広げることで、コンテンツの育成と提供の場を一体的に用意し、シナジーを生み出すという戦略を掲げてきました。その結果、有明アリーナを皮切りに、IGアリーナ、ジーライオンアリーナ神戸と続き、この国立競技場に至ります。 ――国立競技場の運営において、どのような点を強みとして打ち出し、強化していきたいとお考えですか。 田中氏  まず、国立競技場が元来持つ立地の良さ、収容人数の多さ、アクセスの良さは大きな強みだと考えています。都内の主要駅から30分もかからずにアクセスできるナショナルスタジアムは、世界的にも稀有な場所です。これにより、さまざまなイベントで5万人、6万人といったお客様が集まってくださるポテンシャルを持っています。  そこに加え、Jリーグワールドチャレンジや、ラグビーのプレーオフ決勝など、世界レベルのスポーツコンテンツを誘致していきたいと考えています。また、サッカーやラグビーだけでなく、世界陸上のような陸上競技の発展にも貢献できるよう、さまざまな競技の世界レベル、日本一を決めるようなイベントを開催したいです。  2日には、デフサッカー日本代表対クリアソン新宿の試合が国立競技場で初めて開催されます。ビッグコンテンツだけでなく、さまざまな競技を発信することで、多くの方に国立競技場を知っていただきたいです。  コンテンツ面では、スポーツ利用が最重要ではありますが、利用頻度の少ない時期には、音楽イベントやほかの文化イベントの誘致を行いたいと考えております。これまで年2日程度だった音楽イベントの開催を、スポーツの利用がない期間を活用し、年間20日程度にまで大きく伸ばしていきたいと思っています。 ――ドコモとしては、通信面やハードウェアの面で、国立競技場にどのような仕掛けをしていくでしょうか。 田中氏  NTTグループの強みを生かすという点で、通信品質、通信技術、その他のテクノロジーの活用は不可欠だと考えています。  無線とIOWNにはそれぞれの良さがありますが、無線においては特にアップロードの領域で大きなニーズがあると感じています。例えば、スポーツの現場でカメラマンが撮影した大容量の写真を即座にアップロードするには、5Gをはじめとする無線通信技術の拡張が求められます。  一方、IOWNについては、さらなる高品質、大容量、かつ低遅延という特性があります。我々の構想としては、ドコモが運営する4つのスタジアム・アリーナを中心にIOWNで繋ぎ、低遅延で、まるで同じ空間にいるかのような体験を提供したいと考えています。遅延のないリアルタイムなコミュニケーションや、立体的な映像伝送には大容量の通信が必要となるため、IOWNの技術を活用することで、10万人、20万人規模のリアルとデジタルを一体化したようなライブが実現できる時代が来ると期待しています。国立競技場を中心に、NTTグループの技術を活用してこの取り組みを発展させていきたいです。 ――収益化の観点や、ドコモユーザー向けのコンテンツ提供について、どのような計画がありますか。 田中氏  ドコモの視点からお話しすると、先ほども触れたとおり、ドコモ スタジオ&ライブが持つライブ制作のノウハウや、所属アーティストの存在は大きな強みです。本日の入社式でも所属アーティストによるライブ公演が予定されていますが、こうしたアーティストの活動や「STARLIGHT TOKYO」のような主催イベントを国立競技場で開催することで、ライブ事業の収益化を図ります。  また、国立競技場内では、ネーミングライツといったパートナーのセールスや、VIPルームの拡充を進めています。現在メインスタンド側に15室あるVIPルームに加え、地下2階に最高品質のグランドスイートを5室、3階のバックスタンド側にVIPルームを拡張し、全体で70室に増やす予定です。この拡張したVIPルームのサービスは、国立競技場として提供します。  将来的には、これらのVIPルームでの観戦体験を、例えばドコモの長期利用者の会員特典とするなど、国立競技場のサービスとドコモの会員特典を連携させることで、シナジーを生み出せるのではないかと考えています。 ――櫻坂46のライブでLemino会員向けの特別座席を用意するなどの取り組みと、同様のイメージでしょうか。 田中氏  はい。Lemino、国立競技場、そしてアーティストが一体となり、たとえば「ドコモの会員になるとチケットが取りやすくなる」「チケットが取れなかった方も配信で楽しめる」といったサービスを提供することで、より多くの方にライブ体験を届けられると考えています。その意味で、Leminoの役割は非常に重要になってくると思っています。 ――ドコモが運営権を持つ他のアリーナとの連携については、どのようなイメージをお持ちでしょうか。 田中氏  例えば、Snow Manのように非常に人気の高いアーティストのライブでは、ファンクラブに入っても国立競技場や日産スタジアムのチケットがなかなか取れないという状況があります。そのような中で、少しでも多くの方に楽しんでいただくためにライブ配信も行われていますが、遠隔地からのライブビューイングでは、ライブ感を十分に伝えきれないという課題があります。  そこで、場所は離れていても、アーティストとのコール&レスポンスにリアルタイムで反応できる、リモート会場の声が現地のライブ会場のアーティストに届くなど、遅延のない双方向コミュニケーションを実現したいと考えています。さらに、VRなどの技術を活用し、まるで目の前で音楽ライブを体験しているかのような臨場感を提供するためには、高画質かつ立体的な映像技術も必要です。IOWNのような低遅延で大容量の通信インフラが実現すれば、単なるライブビューイングを超えた、一体型のライブ体験を提供できると思っています。 ――「STARLIGHT TOKYO」では、ライブとXR技術、Leminoとの連携といった演出も行われたそうですが、ドコモの技術を中心にした新たな演出などの構想はありますか。 田中氏  施設として共通的に用意する設備としては、音響、映像装置、そして通信技術が重要だと考えており、XRのような技術に対するニーズが高まれば、共通設備としての導入も検討していきます。ドコモ スタジオ&ライブとの共同開催ライブや、Jリーグワールドチャレンジのようなイベントを通じて、新しい試みにトライし、そこで得られた体験価値を他のイベントにも広げていきたいと考えています。 ――音楽イベントを年間20公演程度まで増やしたいというお話がありましたが、これまで難しかった要因や、どのように実現していくのでしょうか。 田中氏  はい、これまで国立競技場での音楽イベント開催には、騒音の問題がありました。競技場の周辺には住宅地があるため、音漏れ対策は非常に重要です。この点については、大きく2つの対策を講じ、20公演という目標を音楽興行会社とも連携しながら目指したいと考えています。  ハード面の対策として、音を外に逃さないような技術の導入です。遮音技術や、音漏れの原因となっている屋根の構造に対する対策などを検討しています。  そして、ハード面と同じくらい、あるいはそれ以上に重要だと考えているのが、地域の方々との対話です。運営権をいただいてから、地域の町内会や商店街の方々と積極的に意見交換を行い、スポーツや音楽のライブ開催に対するご理解をいただけるよう努めています。騒音に対する不満に繋がる要素を直接伺い、事前に音出しの時間やスケジュールをお伝えすることで、計画を見通せるように配慮を行っています。  騒音が単なる迷惑な音ではなく、「賑わい」「活気」として捉えていただけるよう、地域のお祭りなど、地域の活動と国立競技場が一体となって盛り上げる取り組みも検討しています。4月19日、20日に行われるSnow Manのライブでは、ライブ前後に商店街への来訪を促すような地域連携も計画しており、プロモーターの方々と一緒に地域活性化に向けた活動を始めています。 ――民間委託というかたちで運営していく上で、興行への関わり方はこれまでと変わってくるのでしょうか。主催イベントの実施なども視野に入れていますか。 田中氏  はい、本日もドコモ スタジオ&ライブのメンバーが、音楽ライブを中心に入社式の運営に携わっています。ドコモ スタジオ&ライブはライブ制作の機能を持っているので、単なる箱貸しではなく、共同主催のようなかたちで、ドコモグループ会社やJNSEも主催者側に入る取り組みを増やしていきたいと考えています。  また、自主事業としては、興行日によらないスタジアムツアーを実施しており、これまで施設の案内が中心でしたが、今後はラウンジで音楽を楽しめる企画や、小規模な鑑賞会などをスタジアムツアーと組み合わせて実施するなど、音楽と連携した新たな展開も検討しています。 ――外苑エリアには神宮球場や秩父宮ラグビー場などがありますが、これらの施設との連携については何か構想されていますか。 田中氏  はい、まさにこの外苑エリアは、神宮球場、秩父宮ラグビー場があり、この3つの施設がこのエリアで繋がるだけでも、これまでにはない大規模なイベントが可能になると思っています。都内で10万人以上が一気に集まるような場所は他にないと考えています。距離的には近いものの、映像配信のラグといった課題もあるため、やはりここでも通信技術が重要になってきます。  国立競技場、神宮球場、秩父宮ラグビー場を繋げた外苑での大規模イベントは、我々も構想しています。ラグビー場については運営者が異なるため、運営される皆様との対話・連携が重要になりますし、大規模イベントの実現には、より一層地域の方々のご理解が必要になると考えています。  民間運営として国立競技場の運営を先行して始める中で得られた関係性を、新秩父宮ラグビー場にも活かし、町全体で盛り上げられるようにしたいという構想を持っています。

ケータイ Watch,岩井 祐一郎

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