激動の中でのIP・アニメビジネス[Sponsored]
「メディアを持つコンテンツカンパニー」を目指して改革を進めるフジ・メディア・ホールディングス(FMH)。5月に策定した中期経営計画「グループビジョン」では、国内外にファンの多いアニメ、キャラクターをはじめとしたIP(知的財産)事業を成長投資の重点領域の一つに据えた。メディアの発信力を背景に、ファンを全国に拡大する戦略を「IPの独自育成エコシステム」と名付け、事業の成長を目指す。カギを握るのはコンテンツの質と、それを生み出す環境だ。
「絶対無二のコンテンツ」を追求 粘り強い現場体制へプロデューサーを育成
FMH取締役 菅野嘉則氏×フジテレビ執行役員 松崎容子氏
FMHが成長領域の対象の一つに掲げる「IP・アニメ事業」。ヒット作を生み出す構造を言語化して共有する「組織知」の蓄積、表現の幅を広げる生成AIの活用、ファンの熱量を最大化するための多角的なコンテンツ展開力―。激化する市場で強みをどう生かしていくのか。FMH取締役で、元スタジオジブリCG室長の菅野嘉則氏と、フジテレビ執行役員の松崎容子氏に展望を聞いた。
すがの・よしのり 1990年日本テレビ放送網入社。スタジオジブリでCG室長を務めた後、2005年に幻生社を設立し代表取締役に就任(現任)。14年白鷗大学総合研究所メディアセンター長(現任)。26年6月、FMH取締役に就任。――アニメ有力原作の獲得競争が激化するなか、オリジナルIPの重要性が高まっている。クリエイターの発想や情熱を起点とするIP創出において、FMHはどう関わっていくのか
菅野 社内には、長年のアニメづくりを通じて培ってきた経験や、「何を面白いと考え、なぜその企画に賭けたのか」という一人一人の知見が蓄積されている。それを言葉にして共有し、次の世代にも受け継げる「組織知」にしていくことが重要だ。その上で、クリエイターの熱量を作品へ昇華させ、企画選考から制作、市場の反応までを次の企画につなげる仕組みを構築する。失敗も含めた多数の試行錯誤の知見を共有し続けることで、FMHならではのものづくりの強みや「組織文化」を育てられると考えている。
まつざき・ようこ 1993年フジテレビジョン入社。2005年に深夜のアニメ枠「ノイタミナ」の立ち上げに関わる。アニメ事業局長などを経て、25年から執行役員(IP・アニメ事業担当)。松崎 個々のクリエイターの熱量を、どのように継続的にIP化していけるか。いまフジテレビが取り組むべきことは、クリエイターが生みだす熱量をテレビ・映画・配信・イベントなどへ多角展開させられるプロデューサーの育成だ。ノウハウを蓄積し、クリエイターや制作会社、原作者から「フジのこの人と一緒に仕事がしたい」と指名される人材を育てることが、魅力的な作品が集まり続ける好循環を生み出す。それには長期にわたって挑戦を支える「上が我慢できる体制」の整備が不可欠だ。
――『ちいかわ』も多角展開に成功している
松崎 『ちいかわ』は、原作者のナガノ先生の妥協のないこだわりと作品の力が起点にある。それを(アニメ制作会社の)動画工房さんが技術力で丁寧に映像化している。われわれの役割は、ナガノ先生が描く世界観を大切にしながらファンに届けることだと思う。テレビには、決まった時間にコンテンツを届け、視聴者の生活のリズムの中で作品と出会ってもらえる「時報」のような力がある。クリエイターが生み出した作品の魅力を損なわず、より多くの人に届ける。その役割を果たしていきたい。
――AIによって誰もが手軽にコンテンツを作り、発信できるようになった。そのなかで差別化できることは
菅野 AIで作品は増えても、視聴者の時間には限りがある。膨大な作品から見るものを選ぶ「フィルタリング」の負担が増し、価値観を揺るがすような独創的な作品さえ埋もれかねない。だからこそプロには、魅力を見抜き、作り手と磨き、高いクオリティーの作品を継続的に生み出す力が求められる。放送でも配信でも、「フジが届ける作品なら面白いものに出会える」。その信頼こそが、コンテンツがあふれるAI時代における競争力になる。
松崎 テレビ局だからこそできるスケール感や企画力を持った「絶対無二のコンテンツ」を作り続けることが大事だと思う。
――プロはAIをどのように使うのか
菅野 プロに必要とされる技術は今までと同じではない。これまでは、イメージを絵や音にする技術自体に希少性があった。しかし、AIが表現技術を代替する時代では、プロは「何を表現し、見る人の心をどう動かしたいか」を、より厳しく問われる。その意図を言語化し、AIや制作スタッフに伝えられる人材が求められている。
――アニメ事業の成長を左右する制作体制の強化と人材育成。テクノロジーの活用も踏まえ、どのように取り組むべきか
菅野 「面白い」とは予測を超える発想であり、一人の独自の視点から生まれることが多い。AIによって、その発想を形にして試せる人の裾野が広がっていけば、誰が芸術家になってもおかしくない。そんな作り手たちが集い、互いに刺激し合う「場」をつくることも、重要な人材育成の一環となるだろう。
松崎 (フジテレビ傘下のアニメ制作会社である)デイヴィッドプロダクションの機能を強化して、アジアトップのスタジオへと引き上げたい。また、M&Aを含めた投資によって、商品化や流通、配信といった事業領域を広げることで、世界へIPを展開できるバリューチェーンを強化できる。一方で、現在は数多くのスタジオが存在し、アニメ供給が過多の状況にある。生き抜くには、質の高い作品を生み出し続けるほかない。
『ちいかわ』のように、クリエイターの緻密なこだわりや熱量を逃さないこと。そのためには、制作会社とクリエイターの間でひたむきに調整・交渉を重ねられる、粘り強い現場体制の整備が不可欠だ。
全国に同時に届く放送の発信力を活用して、効果的に作品の認知を広げ、爆発的なヒットにつなげるとともに、グループの幅広い事業領域を生かして、映画、イベント、グッズなど多角的にIPを展開することで、ファンとクリエイター、事業パートナーらが一体となって作品を育成し、価値を拡張する戦略を指す。『めざましテレビ』で放送中の『ちいかわ』『パペットスンスン』や『ガチャピン・ムック』などが代表例。
フォロワー130万人超を誇るSNS発人気キャラクター『あおぱんだ』。FMHグループの総合広告会社クオラスは昨年10月、商品化などの権利を国内外で独占するマスターライセンスを取得した。IPビジネスを広告代理業と並ぶ経営の柱に据え、単発の広告案件(フロー)から、継続的な権利収入(ストック)を得るビジネスへと転換を図る狙いだ。
『あおぱんだ』は、大小ぱんだの『あーちゃん』『おーちゃん』たちの日常を描くショートアニメ中心のコンテンツ。アニメーターのAoUmino(あおうみの)氏が個人制作し、TikTokの動画投稿などで人気を博してきた。
ⒸAoUmino昨年4月にIPビジネス本部を発足させ、ライセンス事業に乗り出したクオラスが着目したのが、強固なファンコミュニティーを持つ『あおぱんだ』。コンテンツの魅力をブーストする広告会社のノウハウで、さらにポテンシャル(潜在能力)を拡大できると考えた。『あおぱんだ』で得た知見を活かし、今後新規IPの開発・獲得も狙うという。
担当の西原美幸・同本部IPソリューション局長によると、3月発売のカプセルトイはほぼ完売。7月に東京・池袋で初開催した期間限定ショップも好評で、「確かな手応えを得た」という。今後はカプセルトイ第2弾や、リアルイベントなどを予定。「FMHはさまざまなメディアを持つグループ。その強みを生かし、アニメ化・書籍化・ゲーム化といった多角展開やアジア圏への進出も模索したい」と意気込んだ。
『ガチャムク』から新キャラ『ギャルうさぎ』まで広がる FMHのIPビジネス
FMHのメディア力を活かし、IPの熱量を高める「エコシステム」の代表例となるのが、1973年放送開始の子供番組『ひらけ!ポンキッキ』(フジテレビ)発のキャラクター、『ガチャピン』と『ムック』だ。『ガチャピン』は、チャレンジやスポーツが大好きな恐竜の子で、『ムック』は食べることが大好きで心優しい雪男の子。ともに5歳という設定で、半世紀以上にわたり親しまれている。
©ガチャムク放送開始以降、書籍やDVDなどの商品化に加え、グループ外のさまざまな企業とのコラボレーションやテレビ・CM出演など、活躍は多岐に渡る。2018年にはユーチューブに『ガチャピンちゃんねる【公式】』を開設し、チャレンジ企画や大食い、歌唱動画などを発信。22年には『ガチャピン』が南極初上陸を果たすなど、新たな挑戦を続けている。
現在はグループIP収益最大化を図る目的で24年に設立したライセンスビジネス専門会社のフジ・コンシューマ・プロダクツが、『ガチャピン・ムック』をはじめとするオリジナルIP価値の拡張を狙う。
©ギャルうさぎ新たな〝愛されキャラ〟の発掘にも力を入れる。FMHグループの制作会社のフジクリエイティブコーポレーションは若手社員を中心としたキャラクター開発プロジェクトを始動。アミューズメントメディア総合学院(東京都渋谷区)と連携し、新キャラ『ギャルうさぎ』を誕生させた。『ギャルうさぎ』は、地球のギャルマインドを学び、前向きに奮闘する宇宙人を描いたコンテンツ。SNSでのショートアニメ配信のほか、ステッカーやぬいぐるみなどのグッズ展開も進行中だ。