《高市首相とどこが違うのか》林芳正・元総務相に田原総一朗氏が直撃「自分はすぐ人に投げるタイプ。首相ももっと人に振って仕事を回せば考える時間もできる」

高市早苗・総理(右)から相談を受けることもあったという林芳正・元総務相

「一強」と言われる高市早苗・首相。内閣改造早々に簗和生・前農水相が辞任に追い込まれるなど閣僚らの不祥事が相次いでいるが、支持率が落ち込んではいない。野党はもちろん自民党内にさえ「総理に取って代わろう」という気概を見せる政治家がいないのが理由の一つとされる。そうしたなか、存在感を増しつつあるのが政策手腕に定評があり、総裁候補で唯一、改造で閣外に去った林芳正・元総務相だ。ジャーナリスト・田原総一朗氏が林氏に「高市に挑むのか」を問うた。【全3回の第3回】

田原:国内にも問題は山積。あなたが一番重視しているのはなにか。内政分野にも、外交の環太平洋構想のような林ビジョンがあるのか。

林:日本の将来を考えたとき、正視しなければならないのは人口減少です。総務大臣として全国を回ったが、特に地方に行くと、もう吹っ切れているというか、人口が減ることはわかっているから、それを前提に自治体のあり方を考えている。高知の知事はスマートシュリンクという言葉を使っていましたが、地域社会を縮小させながら充実させていくという意味で私は「縮充」という言葉を使っている。これがこれからの日本社会のキーワードだと考えています。

 江戸時代を考えてください。日本列島の人口は3000万人くらいだったが、人口が少なくて不幸だったかというと、決してそうではなかった。身分制度はあったし、時には飢饉なども起きたけれども、世界的に見ても文化が発展していたし、識字率は高く、その後の明治の工業発展を生むだけの蓄積があった。人口が減ることが社会の衰退を招くと悲観するのは一面的な見方であって、問題視し過ぎてはいけない。

 特に田舎は東京にない自然環境やコミュニティの温かさが残っていて、AIを使いこなすことで地方を「縮充」の方向で変えていく。こうして地域社会を再生、創生していくことをこれからの政治の重要な方向性として取り組んでいきたいと考えています。

田原:縮小に充実? わかりにくいな。

林:たとえば、高知では猪の被害が大きく、捕獲用の罠をあちこちに仕掛けている。猪が罠にかかっているかどうかを見回らなければならないが、範囲が広いからたいへんなんです。マンパワーも足りない。それでゲーム方式にした。罠の場所を全部回ってチェックし、一番早くゴールした人が優勝。そうしたら、都会の人は野生の猪を見たことがないから、入場料を支払って参加する。猪の捕獲が収入になった。何でも面白がろうという「オモシロガリスト」というプロジェクトだそうです。参加者が1人でも移住してきてくれたらいいと。これはAIを利用していないが、やりようはあるわけです。

田原:日本中が人口減少を心配しているなかでの、逆転の発想ということか。

林:日本社会は長い間、右肩上がりの経済成長を目指してきて、追い立てられてきた。我々はそういう世代でした。しかし、人口減少の中で育ってきた若い世代は特にそうした価値観を押し付けるだけでいいのか。小さくて人口も少ないけれども、楽しい我が町のようなそういう地域のあり方もあるのではないか。そういうイメージです。これからも地方を回っていこうと考えています。

田原:石破さんも高市さんも、総裁選に敗れた後、地方行脚して支持者を増やしていった。

林:閣僚の時は、地方視察や会合に出席しても政府見解を述べなければならない。だから身軽になって、なるべくざっくばらんに自分の考えを述べていこうと考えています。実は、大臣を退任した後、ある会合に出た時に参加者から「林さん、笑うんですね」と言われて「いや、もちろん笑いますよ」と答えたんです。すると「官房長官の会見の時は笑った顔を見たことがなかった」と言われまして、そういうところも大事なことだと思いました。まあ、知名か悪名かは別にして、知名度はあればあるほどいいけれども、今まで支援してくださった皆様の目もあるので、中身が伴っていないと、ただ名前を売るだけではいけないと自戒しています。

田原:地方行脚すると総裁選の票集めと見られる。

林:党員票目当てに行っているわけではないが、そう言われるのは仕方がないかもしれません。麻生(太郎)先生も岸田先生も地方を回った。ドラマのセリフではないが、「事件は現場で起きている」というか、地方の現場に行けば、その土地土地でみなさん頑張っている。その声を聞くのが政治の原点だと思いますね。

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