強烈ヘッドの浦和DF石原広教、見事に止めたC大阪GK福井光輝…湘南アカデミーの“年の差GKコンビ”が運命的再会「お互いの親も喜んでいると思う」

福井光輝(C大阪)と石原広教(浦和)

[5.28 J1第22節 浦和 0-0 C大阪 埼玉]

 2人が出会った15年ほど前には想像もできなかったような光景が広がっていた。0-0で迎えた後半7分、浦和レッズの右SB石原広教は流れの中からゴール前に潜り込み、右サイドからのクロスにヘディングで合わせた。軌道はゴール左隅を捉え、この日一番の得点チャンス。だが、それまでも再三の好守を見せていたセレッソ大阪GK福井光輝のスーパーセーブに阻まれた。

 絶好機を防がれ、悔しさをあらわにした石原。「とにかく枠(の中に)というところを意識したんですけど、光輝くんに止められちゃったので悔しいです。(ヘディングシュートは)経験のところもあるかもしれないけど、自分の中で最大値は出したとは思っていて……。ただあのシーンは決めないといけなかったと思いますし、そこはちょっと悔いが残るかなと思います」。試合後の取材エリアでも悔しさをにじませていた。

 あふれる悔しさにはもう一つ理由があった。石原と福井の2人はいずれも湘南ベルマーレのアカデミー出身。小学生時代から在籍した石原が1999年早生まれ、中学時代のみ在籍の福井が1995年生まれと年齢は離れているものの、石原の「光輝くん」という呼び方が示しているように、想像以上に深い関係があったようだ。

 出会いは約15年前。当時、湘南ベルマーレジュニアでGKをしていた石原は、“先輩GK”にあたる福井と親交を深めていた。「ベルマーレの育成で、僕がジュニアでキーパーをやっている時に一緒にキーパー練習をやっていました。本当に地元も一緒で、うちの車に乗って一緒に帰ってとか、そういうお兄ちゃんみたいな感じの仲で」(石原)  当時中学生だった福井にとっても、石原は思い出深い後輩だった。「当時から一緒にキーパーの練習をしていて、僕はジュニアユースでめちゃくちゃ下手で、ジュニアの広教はめちゃくちゃ上手くて、身体能力もすごいキーパーでした。この子が将来ベルマーレでプロになるんだろうなと思ったら、まさかフィールドに転向して……(笑)」(福井)  福井は中学卒業後、湘南U-18には進まず、湘南工科大付高、日本体育大を経てFC町田ゼルビアでプロ入り。石原は中学時代からフィールドに転向し、世代別代表の常連にまで上り詰めて高卒でトップチーム昇格を果たした。それぞれ大きく異なるキャリアを過ごしてきた2人だが、昨季からは共にJ1の舞台で戦っている。  そんな2人にとって、この試合がプロでの初対戦だった。これまで2019年のJ2リーグ、昨季のJ1リーグなど互いの所属クラブが対戦し、ともにメンバー入りする機会はあったが、福井が控えGKだったため対戦はなし。それでも今季、福井がC大阪加入1年目でGKキム・ジンヒョンから主力の座を奪ったことで、出会った頃には「こんなことがあるとは思っていなかった」(福井)というピッチでの再会が実現した。  それも石原がシュートを放ち、福井が止めるという運命的なシーンまで巡ってきた。「こうしていまJ1の舞台で一緒にやれるというのはお互いの親も喜んでいると思いますし、対戦できたことを嬉しく思ってます」(石原)。「あれから時間が空きましたけど、こうして日本のトップリーグでお互いに夢を叶えて、最高のスタジアムのピッチに立てたのが本当によかったです。まあ、決められなくてよかったですね(笑)」(福井)。かつて同じポジションで夢を追いかけた2人の、感慨の再会戦だった。 (取材・文 竹内達也)●2025シーズンJリーグ特集▶お笑いコンビ・ヤーレンズのサッカー番組がポッドキャストで配信中

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