日本製鉄、来夏ごろに2-3州に絞り込み-米国の新製鉄所候補地

日本製鉄は米国で計画する新たな製鉄所について、誘致を目指す各州との協議も踏まえた上で、2026年の夏以降に候補地を2ー3州に絞り込む方針を示した。

  同社の森高弘副会長は11月28日のインタビューで、新製鉄所は電気で鉄スクラップなどを溶かす電炉方式を採用し、年300万トンの生産能力を想定していると述べた。広報担当者によると、同製鉄所には約40億ドル(約6200億円)を投じる見通しだ。

  建設地の選定では、州政府による税制優遇措置などのインセンティブのほか、供給される電力の価格競争力や安定性、原料・製品輸送に必要な道路や鉄道の整備状況などを勘案するという。最終投資決定(FID)は27年の年明けあたりの見通しだ。

  1年半の交渉の末買収したUSスチールは、設備の老朽化などでこれまで業績が低迷していた。大型投資を経て米国の鉄鋼市場の成長を取り込むことができれば、日本製鉄が掲げてきた実力ベースの事業利益1兆円と年間粗鋼生産能力1億トンという目標の実現に近づく。

  ただし、141億ドルという多額の買収資金に加え、USスチールへの追加投資が総額140億ドルにも上ると報じられており、財務への負担は小さくない。

労組と関係改善

  USスチール買収を巡り対立していた全米鉄鋼労働組合(USW)との関係にも変化が現れている。日本製鉄は買収計画を妨害したなどとしてUSWのデービッド・マッコール会長などを訴えていたが、9月に取り下げた。USWもUSスチールに対する不当労働行為の告発を撤回し双方が歩み寄った。

  さらに、買収に一貫して反対してきたマッコール氏が来年退任し、同氏に代わり、ロクサーヌ・ブラウン副会長が26年3月1日に会長に就任する予定で、関係改善を目指す日本製鉄には追い風になる。

  USスチールとUSWの間で結ばれている労働協約は26年9月には失効する。新たな協約に向けた交渉が想定されるが、森副会長は協議はまだ始まっておらず詳細について踏み込んで話す段階ではないとしつつ、労使双方が安定的な関係構築を望んでいるとして期待感を示した。

次期中期計画

  26年度からは日本製鉄の次期中期経営計画が始まる。森副会長は策定が「最終段階に入っている」と述べ、予定通り年内に公表する方針を示した。

  国内事業については、中国の過剰生産・輸出の影響を受けやすいため、コスト削減や業務の効率化などを通じて「徹底的な競争力強化」を図ることを掲げるという。一方、海外事業については、中国の影響が小さいインドや米国に注力するほか、タイ事業の立て直しが中心になる。タイ事業について森副会長は、「海外事業の一翼を担うべく育てていきたい」と語った。

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