サム・アルトマンが「緊急事態」を宣言。ChatGPTの現状とGeminiの猛追をまとめてみた

あのOpenAIが、なりふり構わず動き出した

そんな空気が伝わってくるニュースが飛び込んできました。Wall Street Journalの報道によると、OpenAIのサム・アルトマンCEOが社内向けに「コード・レッド(緊急事態)」を宣言したとのこと。

これまでAI業界でアンタッチャブルなリーダーとして君臨してきたOpenAIですが、GoogleやAnthropicといった競合他社の猛追により、その余裕が急速に失われつつあるようです。

今回の「コード・レッド」は、単なるスローガンではありません。ChatGPTを根本から叩き直すための、かなり強引とも言える改革の合図なのです。

ユーザー体験を磨け!毎日の定例会議で求められる進化

アルトマン氏が社員に伝えたメッセージは明確。

日々のチャットボット体験における課題を解決せよ

具体的には、もっと速く、もっと信頼性を高く、そしてより幅広い質問に答えられるようにすること。

さらに、ユーザー一人ひとりに、よりパーソナライズされた体験を提供することも計画されています。

この緊急対応のため、チャットボットのアップデート担当者は、なんと毎日の定例会議への出席が義務付けられたそうです。

現場のピリピリとした緊張感が想像できますね……。

「選択と集中」の裏側で中止した重要プロジェクト

「コード・レッド」の影響は、ChatGPT以外のプロジェクトにも波及しています。

リソースを集中させるために、アルトマン氏はほかのいくつかの分野での進捗を一時停止させる決断を下しました。

一時停止となった主なプロジェクト

  • 広告関連事業
  • パーソナルアシスタント機能「Pulse
  • ヘルスケアやショッピング向けのAIエージェント

11月24日、年末商戦に合わせてショッピングリサーチツールをリリースしたばかりだったことを考えると、この急ブレーキがいかに異例の判断であるかが分かります。

まだシェアNo.1、それでも無視できない「足音」

もちろん、現状だけを見ればOpenAIは依然としてトップランナーです。

ChatGPTの責任者であるニック・ターリー氏は、12月1日にXでこんな投稿しています。

今日、ChatGPTは世界No.1のAIアシスタントであり、アシスタント利用の約70%を占めています。毎週のように新製品が登場していますが、それはすばらしいこと。

私たちがより速く動き、基準を引き上げる原動力になります

余裕を見せているようにも見えますが、その背後には確実にライバルたちの足音が迫っているんです。

Google「Gemini」の猛追、ベンチマークで逆転も

そのライバルの筆頭が、11月18日に最新版であるGemini 3をリリースしたGoogleです。

この新しいGeminiモデルは、高度な知識、論理的思考、数学の問題、画像認識を含むベンチマークテストにおいて、ChatGPTやAnthropicの最新版を上回るスコアを叩き出しました。

数字を見ても、Googleの勢いは明らか。

  • 月間アクティブユーザー数: 7月から10月にかけて4億5000万人から6億5000万人に急増。
  • 株価への影響: Gemini 3のリリース後、Googleの株価は3%上昇。

さらに頭が痛いのは「お金」の問題です。スタートアップであるOpenAIに対し、Googleには圧倒的な資金力というアドバンテージがあります。

OpenAIは今年130億ドルの収益を見込んでいますが、出ていくお金の桁が違います。Wall Street Journalによると、以下のような巨額の支出が約束されているとのこと。

  • Oracleへの計算リソース費用: 年間約600億ドル
  • データセンタープロジェクト: 180億ドル
  • カスタムAIチップ開発: 100億ドル

2030年までに黒字化するには、なんと2,000億ドル規模の成長が必要です。

消費者が今後10年でAIへの支出を劇的に増やすという「賭け」に勝たなければなりません。

実は10月の時点で、前述のターリー氏は「コード・オレンジ」を宣言し「過去最大の競争圧力に直面している」と警鐘を鳴らしていました。

それからわずか数カ月で「コード・レッド」への引き上げ。

今回のアルトマン氏の号令は、トップを走り続けるためには一瞬の足踏みも許されないという、AI業界の過酷な現状を浮き彫りにしています。

私たちユーザーにとってはサービスの進化はうれしいことですが、開発者たちのプレッシャーを思うと、少し胃が痛くなるような話でもありますね。

著者紹介:Ava Levinson

エイヴァ・レビンソンは、ノースウェスタン大学メディルジャーナリズムスクールを最近卒業し、現在はInc.でニュースライターとして活躍しています。文章と動画の両方を通して、人間中心のストーリーテリングに情熱を注ぎ、新しい人々と語り合い、彼らが何に魅了されているのかを学ぶことを楽しんでいます。エイヴァは、人間関係と成長、特に音楽、ファッション、文化、ビジネスへの好奇心に突き動かされています。

Source: OpenAI(1, 2), X, Gemini, The Wall Street Journal(1, 2), The NewYork Times

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