中国株上昇に弾み、個人投資家参入を期待-家計預金3300兆円に熱視線

中国株式相場が上昇する中、個人投資家の参入が今後の株高に弾みをつけるとの期待が高まっている。莫大(ばくだい)な家計の貯蓄が次なる上昇局面を支えるとの見方だ。

  代表的な株価指数であるCSI300指数は8月に入って10%上昇し、世界でも有数のパフォーマンスを記録している。流動性の高まりが背景にあるが、ヘッジファンドが市場で積極的に動く一方、個人投資家による株式や株式ファンドへの資金シフトはまだ始まったばかりだと、アナリストらは分析している。

  中国の家計預金は7月に160兆9000億元(約3300兆円)と6月の過去最高から0.7%減少し、投資家が資金を動かし始めたことを示唆した。JPモルガン・チェースは、2025年7月から来年末までに約3500億ドル(約51兆4600億円)の貯蓄が新たに株式市場に流入し、株価を20%余り押し上げる可能性があると予測している。

  潤沢な貯蓄は、米ウォール街の銀行が中国株の目標価格を引き上げる要因の一つにもなっている。業績不振や経済の先行き不透明感といった懸念をものともせず続くこの上昇が、なお上値余地を残しているとの期待感が高まっている。

  ゴールドマン・サックスのストラテジストは、家計の過剰貯蓄を理由にCSI300の目標を引き上げ、今後12カ月で約10%の上昇を予想。HSBCホールディングスも、貯蓄の規模を「非常にポジティブなカタリスト」になり得るとし、同国の主要2指数の目標値を引き上げた。

  貯蓄から株式への資金移動は、現時点ではまだ「さざ波」に過ぎない。株式、ファンド、信託口座の流動性を示す非金融預金は7月に約2兆1000億元増加し、2月以来の高水準となったが、過去10年間の季節的な平均をそれほど上回っていない。

  それでも株式市場には「TINA(there is no alternative=ほかに選択肢はない)」という環境が追い風となる可能性がある。債券利回りは過去最低水準にあり、かつて中国人の富の源泉だった不動産市場は長期低迷から回復していない。

  「中国には投資対象が不足している」と語るのは、BofAセキュリティーズの中国株担当チーフストラテジスト、ウィニー・ウー氏だ。「株式市場に明確な利益をもたらす効果があれば、人々はより多くの資金を投資するだろう」と話している。

原題:A $23 Trillion Cash Pile Holds Key for Chinese Stocks’ Bull Run(抜粋)

関連記事: