トランプ氏へのカタール「590億円ジェット機」贈呈、米で違憲の指摘も

  • 記事を印刷する
  • メールで送る
  • リンクをコピーする
  • note
  • X(旧Twitter)
  • Facebook
  • はてなブックマーク
  • LinkedIn
  • Bluesky

【ワシントン=赤木俊介】カタール王室がトランプ米政権へ4億ドル(約590億円)相当のジャンボジェット機の贈呈を検討していることが明らかになった。大統領が議会からの承認を得ずに、外国政府から多額の贈与を受け取ることを禁じる米憲法に抵触する可能性が指摘され、野党・民主などから批判の声が出ている。

カタールのジェット機寄贈は複数の米メディアが報じた。ジェット機は新たに大統領専用機「エアフォースワン」として運用する計画。カタール王室による特注機体で、ブルームバーグ通信によると2007〜13年に同国首相を務めたハマド・ビン・ジャシム氏が使用した。

トランプ米大統領の任期終了後は同氏の大統領図書館に寄贈されるという。米ABCテレビによると、ジェット機はトランプ氏本人ではなく米国防総省へ提供されるため、米司法省は贈呈が合法であると結論付けた。トランプ氏は12日、任期が終われば専用機は「図書館へ直接行く。(任期後は)利用しない」と記者団に述べた。

米国では第31代のフーバー大統領以降、米大統領の在任中の資料や記録を保管する大統領図書館がそれぞれのゆかりの地や生誕地に設置されてきた。米国立公文記録管理局(NARA)が管理する。西部カリフォルニア州にあるロナルド・レーガン大統領図書館には大統領が使用した大統領専用機などが展示されている。

米大統領を含め、連邦政府職員は法律上、米一般調達庁(GSA)が設定する金額を上回る額の寄贈品を外国政府や国際組織から受け取ることができない。25年3月時点の上限は480ドルだ。歴代大統領は諸外国から受け取った品々をNARAへ譲渡してきた。

米国務省が発表した資料によると、バイデン前大統領は23年だけで絵画や銅像など40点以上もの贈呈品を外国首脳などから受け取り、いずれもNARAへ受け渡している。トランプ氏が初当選を果たした16年の大統領選後に安倍晋三元首相が送った黄金のゴルフクラブもNARAが管理する。

トランプ氏はジェット機の贈呈が「我々が(カタールを)継続的に助けてきたことに対する意思表示だ。我々はこれからもサウジアラビア、アラブ首長国連邦、そしてカタールを支援する」と表明した。

しかし、野党・民主党などから批判の声が上がっている。民主のリッチー・トーレス下院議員は11日、米政府監査院(GAO)や国防総省の監察官室に宛てた書簡で、ジェット機の贈呈を巡る倫理問題を捜査するよう求めた。カタールは「中立的な国家ではない」と主張し、カタール政府とイスラム組織ハマスとのつながりも問題視した。

民主党のコーリー・ブッカー氏など上院議員4人は12日、別の共同声明で「憲法にはっきりと書かれている。大統領をはじめとした公職者は連邦議会からの承認なしに外国政府から多額の贈与を受け取ることはできない」と記した。

議員らは贈与の容認が外国勢力による干渉を招きかねないと訴え、安全保障上のリスクが伴うとも主張した。外国政府から受け取った航空機を大統領専用機として運用するには安全保障上の懸念が生じるとした。米軍と情報機関による機体の安全性の確認や、盗聴器など監視機器が設置されていないかを検査する必要がある。

エアフォースワン専用の機材や設備の設置にも追加で費用がかかる。ジェット機の贈呈についてブリーフィングを受けた関係者は米AP通信に対し、カタール王室のジェット機を改修することは可能であるとしつつ、対空ミサイルへの防御手段など一部機能が従来の大統領専用機に劣る可能性を指摘した。

もともと、次期の大統領専用機を巡っては米航空機大手ボーイングが納入する予定だったが、納入時期を延期している。

ボーイングは80年代に製造された現行の大統領専用機の後継として、改良した「747-8」型の専用機を製造する契約を18年に受注した。24年までに納入する予定だったが、新型コロナウイルス禍による供給網の逼迫、特注部品の調達、そしてセキュリティー・クリアランス(適格性評価)に関連した問題で延期された。

  • 記事を印刷する
  • メールで送る
  • リンクをコピーする
  • note
  • X(旧Twitter)
  • Facebook
  • はてなブックマーク
  • LinkedIn
  • Bluesky

こちらもおすすめ(自動検索)

フォローする

有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。

春割で無料体験するログイン
記事を保存する

有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む

記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。

春割で無料体験するログイン
図表を保存する

有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

春割で無料体験するログイン
エラー

操作を実行できませんでした。時間を空けて再度お試しください。

権限不足のため、フォローできません

日本経済新聞の編集者が選んだ押さえておきたい「ニュース5本」をお届けします。(週5回配信)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

関連記事: