「1/2と1/3どちらが大きい?」わからない小5が5割以上いる…東大教授が「さすがにまずい」と心配するワケ 分数を習いたての生徒が正しく答えられない理由
【郷さん】ただ、いまの話って大学以上の数学に携わる人の話であって、私のような文系人間や、小学校の算数ではあまり関係ない気がしたんですが……。だって正しく計算できるようになることが算数の目的ですよね?
【西成先生】いや、算数でもイメージや直感って大事なんです。もちろん算数や数学の世界で論理が破綻すると計算ミスに直結しますから、論理的思考が大切なことは変わりません。システム2は絶対に必要だし、鍛えないといけません。ただ、そこにイメージや直感も織り交ぜていくと、算数や数学がより簡単に思えてくるんじゃないかなと思うんですよ。
【郷さん】具体的には?
【西成先生】先ほどいった「分数をみたときにピザが思い浮かぶ」もそうだし、図形問題なんて完全に「イメージできたもの勝ち」の世界なんです。どれだけ論理的思考が得意な子でも、目の前にある三角形を頭の中でクルンと回転させたり、裏返したりできないとなかなか解けません。あるいは計算問題で「2933+4015」という問題があったとします。これ、論理的思考だけ使う子どもは、いきなり一の位から問題を解こうとしますよね。
【郷さん】そうでしょうね。
写真=iStock.com/taka4332
※写真はイメージです
【西成先生】ここでイメージや直感を織り交ぜるとは、いきなり解こうとせずに、「ざっくりどれくらいの数になるかな?」って考えることなんですよ。「2933はほぼ3000。4015はほぼ4000。だから『2933+4015』の答えは7000くらいだろう」ってざっくり計算する。そうするとたとえ計算ミスをして答えが「7948」になったとき、「あれ? 1000もずれるわけがないだろう。もう一度計算してみよう」って思えるはずです。
【郷さん】あ、それわかります。以前、娘に「15+7」みたいな問題をさせたときに、じーっと考えた末に「12」って答えたんですよ。「なんで減ってんねーん!」ってツッコミたくなりましたけど。
【西成先生】いきなり正確な答えを出そうとして焦ったんでしょうね。「15に7を足したら20を超えそうだな」とまずはざっくりイメージをつかむ。細かい計算はそのあとでいいんです。この「まずはイメージをつかむ」解き方は、とくに算数が苦手な子どもたちにぜひ教えたいですね。
3枚のピザを1/3で割ると何枚になる?
【西成先生】イメージや直感から入ったとしても、最終的には論理的思考を使わないと問題は解けません。図工だったら直感オンリーでもいいんですけど、算数や数学ではそうはいきません。すると、当初のイメージや直感とは異なる答えになることもあるんです。
たとえば「3枚の丸いピザを1/3で割ったら何枚か」という問題を見たとき、ひとり1枚ずつ食べているイメージが思い浮かぶ人もいるはずです。大人でも。
【郷さん】違うんですか?
【西成先生】ほらいた(笑)。「3で割る」のではなく、「1/3で割る」なので、論理的に考えてみると答えは「9枚」。「3枚の丸いピザのなかに、1/3の大きさのピザの切れ端は何枚ありますか?」という問いなので、答えは9枚です。
【郷さん】あっ、そっか。
【西成先生】いまみたいに直感と論理を切り替えながら算数や数学に取り組んでいくと、最初にパッと浮かぶイメージや直感が少しずつアップデートされていくんです。
【郷さん】AIでいう、学習データが増えて精度が上がるみたいな。
【西成先生】そう。あるいはビジネスの世界でいう「経験則」のことですね。「うちの社長、感覚的な意思決定しかしないし、ロジカルな話は苦手だけど、社長のいうことに従っていればなぜかうまくいくよね」みたいな世界です。
【郷さん】います、います、そういう人(笑)。