米国の“裏庭”制覇を目論む中国・習近平の野望は実現するのか?ラテンアメリカ諸国が望んでいること(Wedge(ウェッジ))

 フィナンシャル・タイムズ紙南米担当編集者のマイケル・ストットが、5月6日付論説‘China will not be a big winner from Trump’s policies in Latin America’で、ラテンアメリカのトランプ政権に対する不満や反発を利用して、中国がこの地域でさらに経済的なプレゼンスを拡大することは長期的にはありそうもないと論じている。要旨は次の通り。  中国は今世紀ラテンアメリカ全域に進出し、南米では主要貿易相手国として米国に取って代わり、港湾から銅山に至るまで1300億ドル以上を投資してきた。  今や、トランプ政権は関税などのアメリカ・ファースト政策を追求し、近隣諸国に工場を立地するという経済論理も損なっている。当然、中国は、米国が自国の裏庭とみなしていた地域を制覇することになるだろうか。  そうはならないだろう。中国はラテンアメリカとの貿易を急速に拡大できるかもしれないが、この地域が長期的にはこれ以上中国に接近することにはならないいくつかの理由がある。  第一に報復への恐れだ。トランプは、この地域における中国の悪意ある関心に対して積極的に対応してきた。  パナマは既に運河の両端における中国の港湾利権をめぐって圧力を感じている。ペルーは、中国が建設した巨大港湾チャンカイ港をめぐり次は自分の番だと感じているかもしれない。  輸出の80%以上を米国市場に依存しているメキシコは、中国との貿易を強化してトランプ関税に対応するリスクを冒すことはできない。メキシコが中国カードを使えば、米国政府はメキシコを価値あるパートナーとして見なすことをやめるであろう。今のメキシコの戦略は、何としても米国との関係を守り、弾を避けつつもトランプを敵に回さず、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を確実に存続させるというものだ。  南米諸国は、すでに中国への依存度が高すぎること懸念しており、超大国の緊張が高まっている今、その依存度をさらに高めることはもっともやりたくないことだ。  ラテンアメリカにおける中国の貿易と投資の急成長が終わったことを示唆するデータがある。米州開発銀行によると、昨年、中国のこの地域からの輸入は0.1%減少し、また、最近の調査によると、中国の海外直接投資は昨年減少して、2012年以来の最低水準となった。国内経済の低迷のために、世界における中国の経済的関与の構造的な低下傾向は変わらないと専門家も見ている。

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