アマゾンが一部社員に「転居か退職か」通告、静かな人員削減の懸念
米アマゾン・ドット・コムはコーポレート部門の従業員に対し、上司やチームメンバーの近くに転居するよう指示している。
人工知能(AI)の活用に伴う陣容縮小の予想や人員削減を懸念する従業員にとって新たな不安材料となり、社内に動揺が広がっている。
事情に詳しい複数の関係者によると、従業員はワシントン州シアトルやバージニア州アーリントン、ワシントンDCなどの都市部への転居を命じられており、中には米国大陸の横断が必要なケースもあるという。この方針は電子メールでの一斉通知ではなく、大半は個別面談や社員説明会で伝えられていると、関係者は匿名で語った。
関係者の1人は、この方針により複数のチームの数千人が影響を受けると述べた。子供が学齢期にあり、配偶者が安定した職業に就いている中堅社員は、遠方への転居に消極的な姿勢を示しているという。
アマゾンの広報担当者は、「1年余り前から、一部のチームは業務効率の向上を目的にメンバーの集約に取り組んできた。ただ、全社一律の方針ではなく、社の基本方針に変更はない」とコメントした。
ブルームバーグが確認した文書によれば、アマゾン従業員の間ではチャットツール「スラック」を使った各チームのチャットルームで転居命令に関する情報が共有されているという。ある従業員は、自身のチームが上司から転居が必要と伝えられ、30日以内に決断するよう求められた。転居に応じる場合は、決断後60日以内に転居手続きを始め、応じない場合は、退職金なしで60日以内に自主退職するよう告げられたという。
広報担当者は「近くに住むことによる活気が好きだという従業員の声が多く聞かれる。転居する場合は個別の事情に応じた支援を行っている」と述べた。
アマゾンのアンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は今年、従業員に週5日の出社を命じたが、その際は特定のオフィスへの異動は求めなかった。アマゾンはニューヨークやボストン、ロサンゼルス、ダラス、オースティンなどの大都市を含め全米各地にサテライトオフィスを構えており、従業員は居住地をある程度自由に選べていた。また、新型コロナウイルス禍の時期には多くの従業員が完全リモート勤務で採用された。
ジャシー氏は2022年、同社史上最大規模となるコーポレート部門の人員削減を推し進め、最終的に2万7000人が解雇された。その後も特定部門を対象とする小規模な削減が断続的に続いている。
従業員に転居を求める今回の方針は結果として自主退職を促すと考えられ、レイオフや退職金支給を伴う正式な解雇よりも費用を抑えられる可能性がある。
ジャシー氏は17日、AIの進化によって一部の業務が代替されることから、同社の従業員数は今後数年で減少するとの見通しを示した。この発言はある程度予想されていたものの、社内掲示板では不安の声が広がったという。
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原題:Amazon Orders Employees to Relocate to Seattle and Other Hubs(抜粋)