古代の陶器に描かれたデザイン、人類の数学的思考示す最古の証拠か
イラク北部の遺跡から出土したハラフ文化の陶器/Yosef Garfinkel via CNN Newsource
(CNN) 最大で8000年前に作られた陶器に描かれた植物の絵は、人類が数学的な思考を行った最も初期の事例かもしれない。ある研究から明らかになった。
エルサレム・ヘブライ大学の研究者たちは、紀元前6200年から紀元前5500年の間に北メソポタミアで栄えたハラフ文化の下で作られた陶器を調査した。
すると多くの鉢に花の絵が描かれているのを確認した。花びらの数は4枚、8枚、16枚、32枚、または64枚となっていた。これらの数字の使用は「幾何学的順序」を形成しており、シンメトリー(対称性)と反復に根ざした数学的推論の一形態を示唆していると、研究者たちは先月「ジャーナル・オブ・ワールド・プレヒストリー」に掲載された研究論文で述べている。
論文著者であるエルサレム・ヘブライ大学の考古学教授ヨセフ・ガーフィンケル氏と、同大学考古学部の研究助手兼修士課程の学生サラ・クルルウィッチ氏は、ハラフ文化の遺跡29カ所から出土した陶器の破片を調べた。これらの遺跡は1899年から100年間にわたって発掘されている。
研究者たちは、花を描いた375の破片のほぼすべてにおいて、花びらの数がこの倍数化の順序によって決定されていることを突き止めた。この順序に従って円を分割すると、区切られた各単位は左右対称となる。
「これらの数字を厳密に守る描写は数百キロにも及ぶ遺跡の様々な事例で繰り返されており、偶然ではあり得ない。意図的に行われたものだと考えられる」。ガーフィンケル氏はCNNの取材に答え、そう語った。
「これらの花のモチーフが反映する空間を均等に分割する能力は、収穫物の分配や共同畑の割り当てなど、日常生活における実用性をルーツとする可能性が高い」と、ガーフィンケル氏は報道向けの発表で述べている。
研究の中で著者らが指摘するところによれば、様々な数学体系に関する紛れもないデータが記録に現れるようになるのは紀元前3千年紀になってからだ。現在のイラクに居住していたシュメール人は、60を基礎とする数値システムを用いていた。この種のシステムは現在も時刻の計測に使用される。シュメール人以前にも、10を基礎とする記数法が存在していたと考えられている。
しかし研究者らは、ハラフ文化において4、8、16、32という数字が用られていたことは、これらのいずれの体系にも当てはまらず、「紀元前6千年紀と5千年紀の近東で用いられていた、より初期かつ単純なレベルの数学的思考を反映している可能性がある」と述べている。
今回の研究は、民族数学と呼ばれる学問分野の知見に寄与する。民族数学は先史時代や非識字社会における文化的表現に埋め込まれた数学的な知識を特定する学問。
ガーフィンクル氏とクルルウィッチ氏は声明の中で、ハラフ文化の陶器について、人類が対称性の理解を芸術に適用した初期の例としても特異だとの認識を示した。陶器の図像には食用作物が描かれていないことから、描写の目的は美的表現にあり、農業や儀式に関係するものではなかったことが示唆される。
しかしメソポタミア数学を専門とし、今回の研究には関与していないデンマーク・ロスキレ大学の名誉上級准教授、イェンス・ホイロップ氏は、考古学者たちの主張にあまり納得していない。
ホイロップ氏によれば、ハラフ文化の花の描写における対称性は「数学的技法の単発的な事例」であって、より広範な数学的推論の証拠ではないという。
ホイロップ氏はCNNの取材に答え、円を美しく分割する行為に幾何級数的な昇順列を求める思考はなく、単に半分に分けているだけだと示唆。「彼ら(当時の人々)に対称性の感覚があったことは明らかだが、そこから彼らが数学的な体系を持っていたと判断することはできない」「より高度な数学が存在していたわけではなく、ただ円を分割する上でそれが最も簡単な方法だったというだけだ」との見解を示した。