【日本市況】債券下落、国債補完供給の減額措置変更に反応-円じり高

日本銀行の金融政策決定会合の結果に対する日本市場の反応は限定的だった。債券は超長期債を中心に利回りが小幅に上昇(価格は下落)。円相場はじり高となり、株式は続伸した。 

  日銀は金融政策決定会合で、2026年4月以降の国債買い入れの減額幅を現在の計画の毎四半期4000億円程度ずつから2000億円程度ずつに圧縮することを決めた。政策金利は従来通り0.5%程度で据え置き、市場ではおおむね予想通りと受け止められた。  

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  植田和男総裁は午後の会見で国債買い入れについて、今後の減額ペースが早過ぎると市場の安定に不測の影響を及ぼす可能性があると述べた。また、「通商政策が落ち着いても経済への影響は不確実性が極めて高い」と話し、経済・物価の先行きに慎重姿勢を崩さなかった。

  こうしたハト派的な発言を受け、長期国債先物9月物は夜間取引で一時、17日の日中取引終値比16銭高の138円83銭に上昇。為替市場では円がやや売られる場面があった。

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17日の国内債券・為替・株式相場の動き
  • 長期国債先物9月物の終値は前日比26銭安の138円67銭
  • 新発10年債利回りは一時3.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の1.485%
  • 新発30年と40年利回りはそれぞれ一時3bp上昇-午後3時すぎ
  • 円は対ドルでニューヨーク終値比0.2%高の144円51銭-午後4時50分
  • 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比0.4%高の2786.95
  • 日経平均株価は0.6%高の3万8536円74銭

債券

  債券相場は下落。先物夜間取引が買われた流れを引き継ぎ上昇して始まったが、日銀の結果発表後に下落に転じた。

  市場では、日銀の金融市場局が発表した国債補完供給の減額措置の変更を売り材料視する向きもあった。減額措置の対象をこれまでの残存期間7年の最割安銘柄(チーペスト)から「2031年以降に償還期日を迎える10年利付国債」に変更し、残存期間5年から10年の国債も対象にした。各銘柄の実施上限も「市中保有額が1.5兆円程度の水準を回復するまで」に引き上げた。従来は1.2兆円。

  SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、変更は市場にとってややサプライズで、国債の供給増につながるとの見方から債券市場で売り材料視されていると述べた。  

  東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、この変更により市場参加者はチーペストを確保しやすくなるため、これまでより需給が締まりにくくなり、先物を売りやすくなると指摘。「市場は織り込んでいなかったため、売りで反応した」との見方を示した。 

新発国債利回り(午後3時時点)

  2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債   0.760% 1.030% 1.475% 2.390% 2.925% 3.055% 前日比 +0.5bp +2.0bp +2.5bp +1.0bp +2.0bp 横ばい

為替

  東京外国為替市場の円相場は日銀会合がハト的な内容になるとの観測から午前に一時145円台前半まで下落。会合結果の発表後は円を買い戻す動きが優勢となり、144円41銭まで上昇した。

  あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは「午前に日銀声明文などを含めハト派的に決まるとみていた向きのドル買いの反動や円金利の上昇が円の支えになってる」と指摘した。

株式

  東京株式相場は続伸。ディスコなど半導体関連銘柄が上げ、業種別では電機や機械、その他製品などが高い。東証銀行業指数は午後に入りプラスに浮上した。

  日銀の国債買い入れ減額ペース縮小については、市場の想定通りの四半期ごとに2000億円ずつの減額となったことで安心感が出た。

  三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストは「日銀の決定は事前報道通りだったが、買い入れ減額のペースを緩めるということなので、方向としては株式市場には悪くない話だ」と述べた。

  一方、米国の関税政策やイスラエルによるイラン攻撃への警戒感などが上値の抑制要因となっている。

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