「香り」を自動生成できるAIを日本の科学者らが開発
美容品、食品、日用雑貨など、多くの製品では「香り」が重視されています。しかし、新しい香りの創作には時間がかかり、ときには専門の調香師の助けが必要になることもあります。こうした時間と手間がかかるプロセスを肩代わりし、新しい香りを自動的に生成するAI「OGDiffusion」が、東京科学大学の研究で誕生しました。
Generative Diffusion Network for Creating Scents | IEEE Journals & Magazine | IEEE Xplore
https://ieeexplore.ieee.org/document/10943150Generative AI masters the art of scent creation | Science Tokyo https://www.isct.ac.jp/en/news/0vw7079vqnao 東京科学大学の中本高道氏らが開発した「Odor(香り) Generative Diffusion:OGDiffusion」は、ユーザーが希望する香りの特徴を指定すると、その香りを再現するのに必要なエッセンシャルオイルの配合を算出するというAIモデルです。 中本氏らは166種類のエッセンシャルオイルを用い、それぞれの香りに「ハーブ系」「フローラル」「ウッディ」「甘い」といった9種類の「香り記述子」を割り当てました。この香り記述子とエッセンシャルオイルの質量分析データをOGDiffusionに学習させることで、香りの再現に成功するとのことです。
質量分析データにランダムなノイズを加えた上で、質量分析データと香り記述子を与えて元の質量分析データを算出するようOGDiffusionに指示した実験では、高い割合で元の質量分析データを復元することに成功しました。 続いて複数の香り記述子を持つ香りをOGDiffusionに生成させ、実際に香りを再現し、14人の被験者に嗅がせて香りの特徴を分類させたところ、OGDiffusionに与えた指示と同じ香り記述子であると答えた人の割合が有意に高かったことがわかりました。
さらに、特定の香り記述子を再現した香りと、特定の香り記述子を含まない香りを嗅がせ、どちらが特定の香り記述子に一致するかを被験者に選択させた実験でも、被験者は一貫して正しい選択をしたそうです。これらの実験から、OGDiffusionが高い精度で目的の香り記述子を再現できることがわかったと中本氏らは指摘しています。 AIで香りを生成するというモデルはOGDiffusion以外にも存在しますが、それらは独自のデータセットに依存しており、依然として専門家がAIを使用しなければならないとのこと。一方でOGDiffusionは新しい香りを簡単に生成できることが特徴で、さらにエッセンシャルオイルのレシピに基づいて香りを生成するため、香りの再現も簡単だといいます。 中本氏は「OGDiffusionは、香りの生成を自動化することで、効率的な香りの創作方法を実現します。さらに、専門家でなくとも意図した香りを作成することができます。OGDiffusionはこの種の香り生成モデルとしては初めてのタイプのモデルで、AIが香りのデザインを変える未来を予感させます」と述べました。
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